:
静まり返るような夜
:
空に一筋
赤い星が瞬くと
:
空を裂くような眩さとなり
一つそれは地に落ちる
:
そしてそこに立つのは
ライズハート :
赤き装束を纏う
一人の男
ライズハート :
「…なんだ?ここは…」
激戦の跡を感じさせる鎧を整えて
ライズハート :
その者は立ち上がり
辺りを見渡す
ライズハート :
「…ふん、敗れたと思ったが」
「悪運に恵まれたか」
ライズハート :
不機嫌そうに立ち上がると
あることに気づく
ライズハート :
その手に宿した銀河の如き激昂
そこに浮かぶ一層赤き紋様
ライズハート :
…彼はまだ知らぬ、マスターとしての証
即ち令呪である
ライズハート :
「…ほう?」
しかし、知らなかろうとさしたる問題ではない
ライズハート :
「この俺に伝えも無く術式を押し込むだと?」
「笑止千万!」
ライズハート :
ぐっと腕を掲げると
ライズハート :
煌めき、そして瞬く
男が成した技術の産物
ライズハート :
即ち、力を取り込む力である
それが欲望に濡れた強欲の産物たる令呪であれば尚更
ライズハート :
与えられた術は
刹那男の物と変わり、そして
ライズハート :
本来
この世の理と歴史をなぞる、召喚術式は
ライズハート :
口開く異世壊の主たるその男を通じ
全く別の世界へ、別の世界へ
ライズハート :
そして…
ライズハート :
『Special:Summon-standby』
ライズハート :
世の理を踏み躙り
特殊な召喚が為される
ライズハート :
:
遥か先
:
異世界の戦士が呼び起こされる側で
:
弾き出されるように、それは芽吹いた
??? :
:
ライズハート :
ライズハート :
赤き装束の男は、摩天楼を歩き
ライズハート :
この世"界"の在り方、文明、住人、地質、それらをその眼で見つめる
ライズハート :
「…発展としては著しい、が」
ライズハート :
「住人の戦闘能力は低そうだな、数値化して200が精々か」
??? :
「数値?」
??? :
その後ろをついて回る者が問いかけた
ライズハート :
「ん…ああ」
「戦闘における評価などとっくに数値化しているからな」
??? :
「へぇ~」
??? :
「じゃあ上様はどんなもんなの?」
ライズハート :
「俺か?」
ライズハート :
「現時点では1500…仕留めるのを考えないのなら2100か」
??? :
「いまいちわかりずらいね」
ライズハート :
「まだ足りんな」
「敗戦は気に入らんがそれ以上にその損失が著しい」
??? :
「上様は他所から来たんだっけ?ボクとおんなじで」
??? :
「まぁでも、雰囲気からして異邦人!って感じだしね」
ライズハート :
「元より一つの土地に拘るわけではない、この地もまた新たな領地になるだけだ」
「ウチだのヨソだの、どうだって構わん」
ライズハート :
「その内再び陣営も立て直す、貴様には働いてもらうぞ」
ライズハート :
「名前は…ああ、そうか」
「真なる名は明かすと不利だそうだな」
ライズハート :
「貴様はこの戦に於いて《クシャトリラ・シアチ》とでも呼ぶか」
??? :
「ダサくない?」
ライズハート :
「判別付けば構わん」
ライズハート :
「…さて、丁度いい立地でも探すとするか」
ライズハート :
「あの塔がよく見える位置の、な」
クシャトリラ・シアチ :
「りょーかい」
ライズハート :
そのまま、二つの人影は消えていった…
ライズハート :
ライズハート :
ライズハート :
塔 :
突き立つ塔の麓
見上げる影が二つ
クシャトリラ・シアチ :
「いやぁ~~…本物だね、間違いない」
ライズハート :
「貴様の話すものと、か」
ライズハート :
「名前は何だったか」
クシャトリラ・シアチ :
「んん?」
クシャトリラ・シアチ :
「あ~…えっと、そういや話してないか」
「あの塔は…」
クシャトリラ・シアチ :
塔を見上げていた剣士は
くるりと振り返り
《シアチ》 :
「監獄塔さ、ボクらの世界ではそう呼ばれていた」
《シアチ》 :
そのまま塔に背を向けて
ライズハート :
「ふん…監獄、か」
ライズハート :
「その塔がお前の話通りの力を持っているかは、眉唾ものだな」
《シアチ》 :
「実際こっちでもそうかはわからない」
《シアチ》 :
「とはいえ、気配は本物だし」
《シアチ》 :
「…声も聞こえる、微かだけどね」
ライズハート :
「だとするなら、予定通り行くぞ」
「貴様の要求もある」
《シアチ》 :
「ボクにとっちゃ死活問題だからね」
《シアチ》 :
「お互い頑張ろうか!上様!」
にこりと笑いつつ
ライズハート :
「精々気張っておけ」
「あとは他の連中の偵察でもしておくとするか」
ライズハート :
男はそのまま立ち去り
《シアチ》 :
剣士は振り返って
《シアチ》 :
「待っててね、"姫"!」
と、決意を込めて呟いて
《シアチ》 :
共に去っていった
《シアチ》 :
《シアチ》 :
「上様~?」
《シアチ》 :
「上様ってばー」
ライズハート :
「なんだ」
《シアチ》 :
「なにこれ」
《シアチ》 :
チラシを見せる
ライズハート :
「なんだそれ」
ライズハート :
怒りを潜めるそのしかめっ面は
一瞬呆気にとられたようになる
ライズハート :
「いや…待て」
ライズハート :
「よく見れば、わかるものにはわかるようこの戦の事柄を含めている」
「何かしらの暗号か?」
ライズハート :
真面目な顔で向き合いつつ
《シアチ》 :
「いやでもこんな顔晒すかな…後これ」
《シアチ》 :
もう一枚、今度は店のチラシのようなモノで
ライズハート :
「…人形、か」
ライズハート :
「妙だな、だが…本気か」
「これほどの効力を持った道具、本物ならば確かに垂涎の品だ」
ライズハート :
「俺とて技術屋の端くれだが、魔術については疎い」
「幾つか回収できれば分析もできるが…」
《シアチ》 :
「夢の無い見方…それより!それよりさ!」
《シアチ》 :
「滅茶苦茶可愛くない?僕の故郷じゃジャンク漁るくらいしか見た事無いもんこんな人形!」
《シアチ》 :
「一個くらいさ、買わない?絶対役に立つって!」
ライズハート :
「ふん、そも支払う資産を用意してからだろうそれは」
ライズハート :
チラシを机に置いて
ライズハート :
「ないなら下がれ、検討だけはしておく」
《シアチ》 :
「前向きにしてよ?じゃ」
《シアチ》 :
手を振りながら部屋を去り
後には男一人
ライズハート :
「…」
ライズハート :
「牽制か或いは…だが」
ライズハート :
「使えるモノは使わねばな」
「…ここまで大々的に、見せてるのだから」
ライズハート :
グッと腕を握り込むと
ライズハート :
火山活動のように赤く鳴動し
魔力が高まって、消える
ライズハート :
「…まだ力が要る」
ライズハート :
ライズハート :
《シアチ》 :
《シアチ》 :
数刻ほど前
《シアチ》 :
塔の麓で決戦をする、前
《シアチ》 :
「ねぇ、上様」
ライズハート :
「なんだ」
《シアチ》 :
「聖盃ってどんぐらい仕事するの?」
ライズハート :
「はぁ?」
ライズハート :
妙な質問に、軽く思考を巡らせ
ライズハート :
「俺が知るはずなかろう」
《シアチ》 :
「そっか…ううん」
《シアチ》 :
「ふうむ…」
《シアチ》 :
「だとしたら聖盃も正直、なんとかしたいなぁ」
ライズハート :
「何故だ」
ライズハート :
ライズハートは軽く姿勢を変えて
シアチにその鋭い視線を向ける
ライズハート :
「それは…貴様からすれば同じに見えるからか、この塔と」
《シアチ》 :
「そりゃあね」
《シアチ》 :
「願いを叶える、器」
《シアチ》 :
「…それがどうやって叶えるかなんて、わかったもんじゃあないだろ」
《シアチ》 :
「世界を塗り替えるかもしれない、時を書き換えるかもしれない」
《シアチ》 :
「歪めて受け止めるかも、或いは叶えすらしないかも」
《シアチ》 :
「…叶った願いが致命的なエラーになるかも」
ライズハート :
「…ほぉう」
ライズハート :
「…」
ライズハート :
「まぁ、そんなことは些事でしかあるまい」
ライズハート :
「叶えるべき願いを委ねる事が問題になるのならば、そうしなければいいだけの話だ」
ライズハート :
「俺のようにな」
ライズハート :
ぐ、と左腕を握りしめる
ライズハート :
その異形を、誇らしそうに
《シアチ》 :
「…」
《シアチ》 :
「なんというか…いや、似てるようで違うか」
《シアチ》 :
「上様は人間じゃないんだもんね」
ライズハート :
「貴様もな、元悪夢とやらよ」
《シアチ》 :
「なら…ただ自信があるだけか」
《シアチ》 :
「…」
《シアチ》 :
「取り敢えず、この塔はどうにかボクらで制しよう」
「きっと周りもそろそろ勘付くさ」
《シアチ》 :
「…この塔の力を」
「欲深い程に…ね」
《シアチ》 :
塔を見渡しながら
その視線は遠い場所に向けられている
《シアチ》 :
その先にあるのは、悪夢か
《シアチ》 :
それとも…
《シアチ》 :
《シアチ》 :
ライズハート :
ライズハート :
月を背後に、男は翼を広げて、閉ざす
ライズハート :
鋼の翼はまだ薄く、力に欠けていた
ライズハート :
「チッ、使い物にならんな」
ライズハート :
悪態付きつつ腕を組む
ライズハート :
ここ数日間の戦闘データは想定以上のものだが
故にそれを得続けるのは容易いことではなかった
ライズハート :
その証拠に
ライズハートの身は未だ非戦闘員から動かない
ライズハート :
「いよいよという時勢に、こうでは笑えんな」
つう :
「元々笑った事ないでしょ」
つう :
横から呟くのは男のサーヴァント
名前を明かして久しい立場だ
ライズハート :
「ほぉう、不甲斐ない従者のために嘆いてやってるというのだがな」
つう :
「無茶言うなって…流石にアレは戦闘の規模違い過ぎるよ!」
ライズハート :
「そうさな」
ライズハート :
「意気揚々と宣戦布告したはいいが、そも勝てる勝負ではあるまい」
人魚姫 :
「断言してる」
「やっぱり厳しいかな」
ライズハート :
「そりゃあな」
「相手するだけ馬鹿馬鹿しい」
ライズハート :
「リソースも戦闘能力も、正しく桁が違うのだ」
「そんなもの追い縋る以前の話であろう?」
つう :
「んじゃあ降参でもするの?」
ライズハート :
「まさかな」
ライズハート :
「もしもの時は塔の願いでも使ってやるか、さすれば多少はマシだろう」
つう :
「上様を斬るのは残念だけどー」
しらけ顔で剣を握る、冗談めかしているが
ライズハート :
「さて」
無視しながら向き直り
ライズハート :
「どうしたものかな」
ライズハート :
男はどこからか用意した椅子に座り
軽く見上げる
ライズハート :
白き月は、燦々と輝いていた
ライズハート :
アライズハート :
アライズハート :
懐かしい
アライズハート :
懐かしいものだ
アライズハート :
あの者は俺に向かってただ闘志を叩きつけた
あの者は俺に向かって意味なく嘆き叫んでいた
あの者は偶然ながらに共に戦うことになった
アライズハート :
「…懐かしい?」
アライズハート :
頭が痛む、割れるように痛む
アライズハート :
それこそまるで"幾つにも分かれそうなほど"
アライズハート :
…当たり前だろう、当たり前らしい
この身は怒りの化身、憤怒の形そのものだ
アライズハート :
故に、余計な感情など直ぐに斬り捨て無用にする
アライズハート :
…だが、しかし
アライズハート :
光り輝く腕を開いて、己の頭を掴む
砕け消えるなど許し難い
アライズハート :
「俺は…俺は貴様とは違う…」
アライズハート :
「俺は貴様の一部ではない…!」
アライズハート :
怒り"以上の物ではない"筈もなかろうが
アライズハート :
この俺は…俺は…
アライズハート :
……記憶が濁流のごとく溢れいく
アライズハート :
過去を見返す事など、あるまい
しかし今はソレを求められるという訳か
アライズハート :
『貴様も俺の糧となれ』
アライズハート :
…下らん記憶だ、ヤツの哀しみなどただの力でしかない
アライズハート :
ラメンツ
俺は"嘆く"事など…
アライズハート :
『その力とて、この俺が…!』
アライズハート :
騒がしいばかりだ、今度は何だ
アライズハート :
スケアクロー
"恐怖"だと?俺が恐れる事は…何も!
アライズハート :
『俺は俺だ!貴様のような存在が、俺をも束ねるなど!』
アライズハート :
そうだ…俺は、君臨するのだ…
アライズハート :
俺が俺であるために、どの様な地であれ…
アライズハート :
『…ありえん、ありえん!こんな、事が…!』
アライズハート :
『だが…しかし、なら!』
アライズハート :
『お前が狂い往く様を見てやろう!ヴィサス=スタフロスト…!』
アライズハート :
『はははは、ハハッハ!あああああ…!!』
アライズハート :
…そうか、そうだろうな
アライズハート :
此処に来た記憶など、あるまい
アライズハート :
そんなものが有るのなら、最初から全てを終えていたはずだ
アライズハート :
ならば…何故だ、何故俺は此処にいる
アライズハート :
「下らん…」
アライズハート :
そんな事はどうでもいいだろう、もう全ては王手だ
アライズハート :
奴らを砕き、さすれば戦は収束する
アライズハート :
後はどうとでもなる、すでに陣は…
アライズハート :
「……………………」
アライズハート :
「……」
アライズハート :
心の中は怒りで埋め尽くすというには余りに、静謐を保っていた
アライズハート :
それもそうであろう、怒りの理由は不思議な程消えている
アライズハート :
俺は…俺であるらしい
アライズハート :
この世界に"奴"がいるわけでもない
アライズハート :
欠けはある、だがどうにも何か満ちている
アライズハート :
「…奇妙な話だな」
アライズハート :
「敗者に居場所を与えるとは」
「運命とはまこと、難儀らしい」
アライズハート :
起き上がり、塔を見上げる
アライズハート :
「もう少しばかり見届けてやるとしよう」
アライズハート :
「此処は…貴様らの"世界"らしいからな」
アライズハート :
アライズハート :
つう :
つう :
つう :
「…いろいろあったけど」
つう :
「ここまで来たら、ボクらで終わらせないとね」
人魚姫 :
「うん、さっきは一緒に戦えなかったもんね」
つう :
「気にしてる?」
人魚姫 :
「ううん」
人魚姫 :
迫るメルヒェンを槍で貫く
『メルヒェン EX』 :
強固な筈の強化個体が一発で砕ける
つう :
「ふふ!」
つう :
剣を振れば、大群を切り拓いて
『メルヒェン EX』 :
最後の看守も斬り倒した先
つう :
「えーっと」
つう :
「成長踏み倒してたのはわかってたけど」
つう :
「…"これ"かぁ」
人魚姫 :
「懐かしいね、おつうちゃん」
塔 :
その塔の中核、コアとなるナイトメアは
実際のところ既に登場していた
塔 :
過剰なエネルギー、過剰な感情爆発
それらを吸い上げていた塔は
『ナイトメア・ジェイル』 :
その内部、蛹が破れるのを待つ幼虫のように
『ナイトメア・ジェイル』 :
蠢いていた
つう :
「まぁ」
人魚姫 :
「うん」
つう :
「もう手は焼かないよ、スナーク」
つう :
剣を掲げ
人魚姫 :
人魚姫もまた、槍を重ねる
つう :
「それじゃあ…これで!」
つう :
「本当に本当の、おしまい…だあああっ!!」
つう :
二人で武器を振り降ろせば…
つう :
つう :
アライズハート :
アライズハート :
アライズハート :
塔の倒壊跡を歩くのは、二人の主だった男
アライズハート :
残骸一つ、押しのけると
つう :
「まさか崩れるとは思ってなかった」
アライズハート :
「そりゃ根幹斬り倒したらそうなるだろう」
人魚姫 :
「…あはは、まぁこれで…こっちは大丈夫でしょう」
つう :
「…ふう」
つう :
「…」
つう :
「塔の無い空って」
つう :
「綺麗だね」
アライズハート :
「ああ、妙なものだ」
アライズハート :
「星の浮かばぬ空などな…」
人魚姫 :
「そういえば、この町…海もあるんだっけ」
「忙しくて行けてなかったんだ」
つう :
「ん…うん?」
つう :
「そういや折角塔が無い世界なのに全然旅行してないや」
アライズハート :
「…」
アライズハート :
「フン、好きにしろ」
アライズハート :
「俺は他の作業がある」
アライズハート :
「それに、契約も終わりだ」
つう :
「…上様」
つう :
「…うん、楽しかったよ、何だかんだ色々」
つう :
「上様も楽しかった?」
アライズハート :
「どうだかな」
アライズハート :
「まぁ」
アライズハート :
男は背を向けて
アライズハート :
「久しく、怒っておらぬ時もあったろう」
アライズハート :
そう言って、真っ赤なゲートを開き消えていく
つう :
「素直じゃないんだから…」
人魚姫 :
「…」
つう :
「さ、ボクらも行こうか…姫」
人魚姫 :
「おつうちゃん」
つう :
「姫?」
人魚姫 :
「上様さん…」
人魚姫 :
「ウィッチクラフト持ってってなかった?」
つう :
「…」
人魚姫 :
「…」
つう :
「んもお!!最後まで自分勝手なんだから!!!」
人魚姫 :
「あはは…追いかけようか」
つう :
そのまま、二人も塔を後にしていった
つう :
その後の騒動はおそらく、多分また…別の話
つう :
つう :
アライズハート :
アライズハート :
アライズハート :
思えば、この戦いに興じた理由は力の補填だった
アライズハート :
ともすれば、今の俺は十分過ぎるほど回復し
アライズハート :
むしろ、まだ見ぬ未知の力さえ掌握していると言える
アライズハート :
故に俺は、あの男に
アライズハート :
ヴィサス=スタフロストに、己という存在を叩きつける為
アライズハート :
多少の時間と、リソースを割いて
アライズハート :
あの学者の作っていたような船に、クシャトリラ・シャングリラを作り替えた
アライズハート :
「よし、火を入れろ」
クシャトリラ・シャングリラ :
白き核…拾っておいたウィッチクラフトがエンジンの中核に収まり
クシャトリラ・シャングリラ :
星型のシャングリラが、彗星のような形状に変形する
アライズハート :
「目標、世壊!」
アライズハート :
そして、主の名の元
船は宙に飛び出す…
アライズハート :
アライズハート :
結論から言えば、世壊は消えていた
アライズハート :
原因、それは外部によるもの
アライズハート :
いや…厳密には属するものだろう、されど
アライズハート :
「時の巡りか…」
アライズハート :
己を含む世壊の支配者たちを仕留めたヴィサス
それを退け世界を廻す存在が居る
アライズハート :
それを知った時
アライズハート :
「クク、クハハハハ!!!」
上様は久しく、腹を抱えて笑う
アライズハート :
「そうか、そうかそうか!」
アライズハート :
「…所詮は同じ穴の狢だな、ヴィサス」
「貴様もまた運命に絡め取られたか、しかし」
アライズハート :
「ならば勝負だ」
「今度は並んで走り出してやろう」
アライズハート :
事実への衝撃など無い、あるのは果てなき激情
アライズハート :
居場所を失った、等気取ることはない
アライズハート :
「何故ならば其処は"パライゾ"では無かっただけだ」
アライズハート :
指を鳴らすと、赤き方舟が巨大に変形し
アライズハート :
「さあ、ここを起点に再びパライゾスを築く」
「捨て去った筈の世壊に敗れ去るならば」
アライズハート :
「この世廻とて支配してくれようぞ!」
アライズハート :
シャングリラは赤く輝き、異形の塔となる
アライズハート :
それは解析してきた情報より作り出す、侵略の証
アライズハート :
赤き核を天蓋に浮かべ、支配の願いを輝かせる
全ては今この時のための集積
アライズハート :
「始めるぞ、我らの戦争をな」
アライズハート :
塔の中核には、銀河を束ねた盃を浮かべ
男は再び天へ飛び立っていく
アライズハート :
戦争に加担したのは、良い余興であった
アライズハート :
ならば今度は、己の土地をそれで満たそう
アライズハート :
そうすれば
ヴィサスであろうとも、世廻を巡らす支配者であろうと
アライズハート :
全てを退けて、己の最優を示すことが出来るのだから
アライズハート :
かくして、男は己の盃を掲げ
再びの"星"盃戦争に興じるのであった
アライズハート :
アライズハート :
:
:
:
アレから色々あった
ほんと色々
:
ボクら、しれっと帰ってないのはどうかと思うけど…でも
:
平和な世界、でしょ?
少しは堪能しないと…って、君も言ったもんだから
つう :
…そんなこんなで気がつくとボクらは学生になっていた!
つう :
長く居着きすぎ?うんそう思う
つう :
でもね、不思議と馴染んだというか
昔やったことがあるような…いやそれは良いとして
つう :
結局ボクらは残ることにした、なんでかって?
人魚姫 :
上様が持ってっちゃったの、心配だもんね
つう :
と、いう事にした
つう :
まあ…ボクらは異世界から呼び起こされたサーヴァントだ、厳密には帰ると言うこともない
人魚姫 :
相変わらず時間も空間もめちゃくちゃだね
つう :
そう思う、でも…
つう :
麻中達を見守れるんだし、これも悪くないさ
つう :
きっと、平和は続くけどね
人魚姫 :
うん、それが良いな
人魚姫 :
…あ、そういえば…
つう :
うん?
人魚姫 :
「おつうちゃん、こっちこっち」
ペンを置いて、隣の彼女を見つめる
人魚姫 :
…どこかに宛てた手紙はひと段落し
もう一つの残りを手にかける、それは
つう :
「姫?」
:
つうの手を人魚姫が握り、刹那の鼓動の高鳴りの後
つう :
ちゅ、と小さな音が響いた後
つうは彼女の口付けに気がつく
つう :
「うおわぁっ!?」
人魚姫 :
「お疲れ、おつうちゃん」
「こっちの世界でもね」
人魚姫 :
くすりと笑って、人魚姫はまたペンを手に持つ
人魚姫 :
己の王子様が、最後は他の子と踊って終わりというのは
人魚姫 :
それは、少女心に納得行かないもの
つう :
「あはは…うん」
つう :
「…お疲れ様、姫」
つう :
そして、王子様とは往々にして
姫の言葉に応えるものなのだ
つう :
それが、童話を宿した二人にとって
いちばんいちばん綺麗な…
つう :
"おしまい"
なのでした、めでたしめでたし
つう :