麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 : 今日は久しぶりに部屋を掃除している
麻中 蓬 : 散らかったものを集め、押入れから物を出し
要る物と要らない物に分けて
麻中 蓬 : 途中で見つけた掘り出し物に気を取られたりしつつも
作業は順調に進んでいた
麻中 蓬 : 「……あれ」
麻中 蓬 : そんな時、押入れの隅に見慣れた赤い物を見つけ
思わず手が止まる
麻中 蓬 : 押入れに潜り込み、それを手にしてみれば
  :  
麻中 蓬 : 「……なんでこんなところに?」
麻中 蓬 : 首を傾げつつ、明るいところで見るために押入れを出る
麻中 蓬 : 「いたっ」
頭をぶつけながら
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 : 「やっぱアレだよなぁ…」
手の中でクルクル回してみたり、光に当ててみたり
そうしてわかることは、本物で間違いないということ
麻中 蓬 : 「……アクセスモード・ダイナソルジャー」
麻中 蓬 : シーン…
麻中 蓬 : 一つ違うところがある
ダイナソルジャーが呼び出されないということだ
麻中 蓬 : 「…おもちゃじゃないよな……」
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 : 『────そうなんだ、大変じゃん。明日テストでしょ?』
確認のために夢芽に電話をかけたら、愚痴に付き合わされた
南 夢芽 : 『それ。マジでヤバイんだけど。全然勉強できてないし』
麻中 蓬 : 『まー赤点でも補修受けるだけだし大丈夫じゃない?それよりさ…』
南 夢芽 : 『いや、大丈夫じゃないでしょ。せっかくの時間が減っちゃうし。
 で、どうしたの?』
麻中 蓬 : 『うーん、いや…』
そういえばこれ俺のとこだけだったら夢芽を巻き込むことにならないか?という疑念が頭の片隅に過り
麻中 蓬 : 『……ダイナウイング今持ってる?』
麻中 蓬 : 何だか変な質問になる
南 夢芽 : 『持ってないよ。ナイトさんに渡したじゃん』
麻中 蓬 : 『だよなぁ…』
南 夢芽 : 『え、それがどうしたの?』
麻中 蓬 : 『いや何でもない』
南 夢芽 : 『何でもないわけないでしょ。教えてよ』
麻中 蓬 : 『いやほんとに何でもないって。じゃあまた明日』
麻中 蓬 : そう言って一方的に通話を切る
麻中 蓬 : どうやら俺のところにだけあるみたいだ
麻中 蓬 : はてさて、どうしたものか…
そう考えていると、スマホが着信音を鳴らす
麻中 蓬 : 「やば一方的に切ったから怒ってるかも」
麻中 蓬 : だが、送り主は夢芽ではなく…
麻中 蓬 : 「なんだこれ…?」
  : それは、聖盃戦争への招待状
一度メールを開けば、英霊があなたの元へと訪れる
  : 今日この日、この場所で
現れた英霊は────────
??? : 「────────────」
麻中 蓬 : 「…………」
麻中 蓬 : 「……どうして、ここに…?」
その体を見上げて、思わず声を漏らし
麻中 蓬 : 「また…この世界に何か起こってる、のか…?」
??? : 静かに頷く
麻中 蓬 : 世界の境界線があいまいになるとか
そんなことが前にも起こったが…今度は何が起こったやら
それはわからないけど、厄介ごとが起こったのは確かで…
麻中 蓬 : 何が厄介かって
これが数人が一人になるまで戦って、勝者が願いを叶えるなんていう代物なことで
麻中 蓬 : そんなの…まともな物だとは思えない、けど…
麻中 蓬 : それに縋るであろう人がいることは、わかる
それに今から俺も縋ろうとするからだ
麻中 蓬 : 「……一先ず、このことは皆には内緒にしよう」
麻中 蓬 : これは俺の我儘だから、皆は巻き込まない
そうとだけ決めた
??? : そんなマスターの姿を、静かに見つめていた
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 : 「……なんだこれ」
麻中 蓬 : つい最近に同じようなことを言ったのだが、再び言うこととなった
家の前に、チラシが落ちている
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 : 自分の部屋のベッドに腰掛け、拾ったチラシとサーヴァントが持ってきた情報を見比べる
麻中 蓬 : 「人形…? 能楽…?」
麻中 蓬 : 1つは、とある森で宣伝されていたという謎の人形屋
麻中 蓬 : 「うーん…人形を買えるのか…」
麻中 蓬 : いや…人形を買ってどうするんだ
魔力と魔術って概念もつい最近サーヴァントに教えられたし
麻中 蓬 : なんだか妙な効果が付いている
付いているが、これがどう影響するのか…俺にはわからない
麻中 蓬 : 「でもどんな人形なのかは気になるなぁ…」
麻中 蓬 : そんなことを考えつつ、チラシに目を落とす
麻中 蓬 : 2つ目。能楽ライブ…伝統芸能のアレだろう。たぶん
麻中 蓬 : それだけなら興味ナシとバイトに行くことになるのだが…
麻中 蓬 : 「こっちも魔力、か…」
麻中 蓬 : 多分、これも聖盃戦争の参加者によるものだ
麻中 蓬 : ……ライブを見てどうするんだろう?
麻中 蓬 : 「うーん…」
麻中 蓬 : 静かに鎮座するサーヴァントの隣で、眉根を寄せ首を捻ったまま
唸り声を上げる
麻中 蓬 : この疑問は残念ながら、聖盃戦争の開始まで続くことになり
困惑は留まることがないのだった
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 : ゴルドバーンの背に乗り、街の空を飛んでいた
麻中 蓬 : 先ほどの戦闘中に感じた胸騒ぎ
それは大きくなるばかりで収まるところを知らず
麻中 蓬 : その理由を探して
街を眺めている
麻中 蓬 : 「……………そうか」
麻中 蓬 : 黒羽さんが、いないんだ
麻中 蓬 : 別行動を取るのは、そういえば初めてだったかもしれない
麻中 蓬 : 「……ゴルドバーン!」
ゴルドバーン : 「▇▇▇▇▆▆▆▅▂────!!!!!!」
麻中 蓬 : ゴルドバーンへ声をかけ、慌てて飛び出す
麻中 蓬 : そうしているうちに、じりじりと悪い予感は大きくなり続け
麻中 蓬 : 「間に合え…!」
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 : とあるマンションの空き部屋
聖盃戦争で根城にしていた部屋に帰って来る
麻中 蓬 : ……以前まで時折あった、迎え入れる声はもちろんなく
以前と比べ寂しくなった空間を見回して
麻中 蓬 : 黒羽さんとの会話を、いくつか思い出す
   : 『俺が世界と黒羽さんを繋ぐよ』
『守りたいと思ったものを、守る。それが俺にできることだから』
麻中 蓬 : 俺はあの時、そう約束した
麻中 蓬 : その結果はどうだ
彼女と世界を繋ぐことはおろか、守ることもできていない
麻中 蓬 : 何故か、答えは簡単だ
自分に力がないからだ
   : 『大丈夫だから、何があっても俺が必ず助けに行く』
麻中 蓬 : 本当に、助けに行けるのか
麻中 蓬 : 力のない自分が、何を為せるというのだろう
果たせるかもわからない慰めなど、何の意味があるのか
麻中 蓬 : ………俺は、無力だ
麻中 蓬 : 誰もいない部屋で
自分の弱さを思い知る
麻中 蓬 : 無力さを噛みしめながら、何もできない俺は椅子に腰かけた
本来なら、向かいに黒羽さんが座っているはずだった席に
麻中 蓬 : そして、向かいを見た時に
目に入ったものは
麻中 蓬 : 串カツが、置かれていた
   : 『明日の夜に、串カツ。わかった』
麻中 蓬 : 彼女と交わした、小さな約束
麻中 蓬 : 俺の好物を作ってくれるという、小さな小さな約束だが
彼女は守ってくれていたのだ
麻中 蓬 : 「………なんだよ、俺だけじゃ意味ないじゃん…」
麻中 蓬 : そうポツリと呟いて
冷たくなった串カツを少し齧った
麻中 蓬 : 「……美味しいなぁ」
麻中 蓬 : ……ここでの日々思い出す
彼女は特別な力を持っていたけれど、やっぱり普通の少女だった
ちょっと無口で不愛想だけど。普通の少女のように、泣いて、怒って、笑っていた
麻中 蓬 : 串を握る手に、力が入った
麻中 蓬 : 無力だけど、約束を守れなかったけど
それでも、守りたいという思いは消せなかった
麻中 蓬 : 「もう一度、俺に戦う力を貸してくれ」
「きっと、これも君が現れたのと関係しているんだろ…?」
ゴルドバーン : 「────────」
麻中 蓬 : 「俺は大丈夫。どうなっても──」
麻中 蓬 : 「──いや、必ず生きて帰るから。だから、心配しなくていい」
ゴルドバーン : 逡巡するような長い沈黙のあと
ゴルドバーン : 一つ、頷いて
麻中 蓬 : 「……ありがとう」
「やっぱり君は、俺たちの最高の友達だよ」
麻中 蓬 : 俺は、今度こそ約束を果たす
持てる全ての力と可能性を振り絞って
麻中 蓬 : だから…
麻中 蓬 : 「俺を導いてくれ!ダイナソルジャー!!」
麻中 蓬 : 呼応するように、赤い輝きを取り戻し───────
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 : 少し山の中に入った河に架かる橋の上から、夕暮れの街を見下ろしていた
麻中 蓬 : 橋の下にはゴルドバーンが留まっていて
ゴルドバーン : 「────────」
ゴルドバーン : 首をもたげ、顔をマスターたちへと近づける
別れを惜しむように
ゴルドバーン : 聖盃戦争は終結した
故に、自身が再びこの世界にいられるという奇跡もまた終わろうとしていて
黒羽 紗雪 : 「……お別れ?」
麻中 蓬 : 「…そうみたいだ」
麻中 蓬 : 手を伸ばし、ゴルドバーンの額にそっと触れて
黒羽 紗雪 : 橋の近くで、ゴルドバーンの方を見ながら
少し寂しそうに尋ねて。
黒羽 紗雪 : 同じく、頬にあたる部位を撫でる様に手を伸ばす。
ゴルドバーン : 嬉しそうに目を細める
同時に、鳴き声を漏らし
ゴルドバーン : 少しずつ体から光の粒子が零れだし、巨体が縮んでいく
麻中 蓬 : 「……お別れだね」
麻中 蓬 : 「ありがとう、ゴルドバーン」
「最初から最後まで…ずっと助けてくれて」
黒羽 紗雪 : 「……本当に、ありがとう」
ゴルドバーン : 「────────」
黒羽 紗雪 : どんな危機があっても、こうやって私がここに立てているのは
紛れもなく眼前のあなたのお陰だと言う様に、告げて。
麻中 蓬 : 「………それとこれ。ゴルドバーンが持ってきてくれたんだよね」
「これも一緒に、頼んだ」
麻中 蓬 : 手を開くと、そこにはダイナゼノンのパーツたちが
ゴルドバーン : 頷くと、それらを咥えて
麻中 蓬 : 「それじゃあ…あんまり引き留めるのも悪いし」
「行っておいで。君の一番の友達のところに」
ゴルドバーン : その言葉を聞くと、もう一度2人の手に顔を擦りつけた後
大きく翼を広げて飛び立つ
ゴルドバーン : 一瞬遅れて風が吹きすさび、光の粒子が空から舞い散った
黄金の影が頭上を通り過ぎて夜の街へと向かう
ゴルドバーン : 「▇▇▇▇▆▆▆▅▂────!!!!!!」
ゴルドバーン : 月を背後に、飛竜は鳴く
その声は確かに、この世界の皆を祝福する喜びに満ちたものだった
  :  
  :  
  : それからしばらく後のこと
街は塔や2つ目の太陽の騒動を忘れつつあり、平穏な暮らしに戻っていた
  : 平穏に戻ってしまえば、案外変化はないもので
以前と同じように人々は忙しく行きかい街はそれを見守っている
  : とは言え、変化したところも少しばかりあるようで…
飛鳥川 ちせ : 「それで太陽がもう1つ増えてたんスか…滅茶苦茶っスね」
山中 暦 : 「あの時は驚いたよ…夜になっても日が落ちないし」
飛鳥川 ちせ : 「先輩は無職なんだからいつも昼で夜みたいなもんじゃないっスか」
麻中 蓬 : 「まあそんなわけで、カグツチさんって人が見守ってくれてるんだよ」
「太陽を増やしちゃうのは…気合が入りすぎてたからかな」
飛鳥川 ちせ : 「気合って…滅茶苦茶っスね(二度目)」
麻中 蓬 : ガウマさんが住んでいた橋の下で、仲間たちと集まって平和に駄弁っていた
麻中 蓬 : 話題は聖盃戦争について
一度説明してはいたが、流石にそれだけで全容を把握しきれるものではないようで。こうしてよく話題のタネになっているのだ
南 夢芽 : 「……大変だったのはわかったけど、私はまだ許してないから。一人で無茶してたこと」
麻中 蓬 : 「ごめんって。危ないってことはわかってたからさ…」
聖盃戦争終結からこちら、手を合わせて平謝りし続けていた
麻中 蓬 : ここまでは、今までの暮らしと変わらない
だが、一つ変わったこと…それは
飛鳥川 ちせ : 「私はゴルドバーンに会えたからいいっスよ。それに友達も増えましたし」
「ねー、紗雪さん」
黒羽 紗雪 : 「……そうですね。色々ありましたが」
黒羽 紗雪 : ちびちびと水を飲みながら、戦争時とは全く違う印象を与えるかの様に
敬語を交えて話している銀髪の少女がいた
山中 暦 : 「黒羽さんも色々と頑張ってたんだっけ…すごいよなぁマホウツカイ」
黒羽 紗雪 : 「……それほどでもないですよ、今回は基本的に裏方でしたし」
飛鳥川 ちせ : 「裏方でもすごいっスよ~。あ、うちのヨモさんがお世話になりました」
麻中 蓬 : 「本当に色々助けてもらったよ…」
麻中 蓬 : 「紗雪がいなかったらどうなってたことやら」
南 夢芽 : 「………」
南 夢芽 : その言葉にぴくりと眉を動かしつつ
目を細めて紗雪を見つめている
黒羽 紗雪 : 「……何でしょうか?」
黒羽 紗雪 : 同じく目を細め、見つめ返す
南 夢芽 : 「……………………………蓬を助けてくれたのは、ほんとみたいだから」
長い沈黙の後、そう言葉を紡ぎ
南 夢芽 : 「でも、蓬は無茶しやすいだけで他の人相手にも同じようなことしてたよ。うん」
麻中 蓬 : 「夢芽さん…?」
南 夢芽 : 「あなただけが特別じゃないし。それに私だって参加してたら蓬と一緒に戦ってたし」
黒羽 紗雪 : 「そう。だけど、助けられたのは事実 そこに他の人がどうこうってのは存在しないと思う」
黒羽 紗雪 : 取り繕っていた敬語はこの時点で投げ捨てられ、戦争時と全く変わらない口調に戻る
南 夢芽 : 「ふーん……蓬は優しいから、”妹みたいに”小さい女の子がいたら助けちゃうだろうね」
黒羽 紗雪 : 「……ならその分、隣に立って助けるのも"妹"の役目」
南 夢芽 : 「…………助けるのはあなたの自由だけど、蓬と最初に助け合ったのは私だから」
麻中 蓬 : 「あの…二人とも…?」
「二人には助けてもらってるし、俺としても守りたい存在だけど…」
南 夢芽 : 「蓬は今は黙ってて」
麻中 蓬 : 「あ、はい」
黒羽 紗雪 : 「蓬は少しだけ静かにして」
麻中 蓬 : 「わかりました…」
飛鳥川 ちせ : 「バチバチっスねぇ…恐ろしや恐ろしや」
南 夢芽 : 「私はあなたより蓬と長い付き合いだし…一緒に色々してきたんだよね」
山中 暦 : (それって俺たちも同じなんじゃ…いや言わないでおこう)
黒羽 紗雪 : 「順序と長さだけで左右されるものとは思えない」
黒羽 紗雪 : 「無論、それ自体は立派なものだと思うけど。」
南 夢芽 : 「……一緒にプールにいったり、花火したり、学園祭を回ったり、水門から落ちそうになったところを助けてもらったり」
飛鳥川 ちせ : (最後のはゴルドバーンが…いや言わないでおこう)
南 夢芽 : 「半年一緒に怪獣と戦ったり…してきたんだ」
黒羽 紗雪 : 「それは…知っている。その話は……聞いたから」
南 夢芽 : 「………ふーん」
黒羽 紗雪 : 「何?」
南 夢芽 : 「いや別に。」
南 夢芽 : 「…………ま、”妹”ならいいや。私は蓬と付き合ってるけど」
黒羽 紗雪 : 「……」
黒羽 紗雪 : 「……その"妹"の認識は時代錯誤。凝り固まっている」
黒羽 紗雪 : あくまでも後者の部分はどうしようもなく否定出来ないのもあるが。
その認識に関しては、自身に力を貸し与えた存在もあり、明確に違うだろうと言った自信がある。
南 夢芽 : 「妹は妹。付き合ってる相手がいるんだから、それ以上にはならない」
南 夢芽 : 「私は蓬から告白されて付き合ってるし。うん、妹は妹だよ」
黒羽 紗雪 : 「……ふぅん」
黒羽 紗雪 : 「……そっちがそうならば……私は、心の中まで全部見られた」
黒羽 紗雪 : 「……もう少し先にいる」
南 夢芽 : 「………………」
南 夢芽 : 「そうなの?蓬…?」
震えた声で尋ねかける
麻中 蓬 : 「え…!?…確かに色々あって心が繋がったりはしたけど……いや変な意味じゃないよ!?」
南 夢芽 : ぷるぷる震えながら蓬の手を握っている
飛鳥川 ちせ : 「あーあー夢芽さん弱いのに張り合っちゃうから…
 ヨモさんのアレっスよね?インスタンスドミネーションってやつ」
麻中 蓬 : 「そうそれ!変なことしたとかじゃないから!」
黒羽 紗雪 : 「それ」
山中 暦 : (それなんか複数人にやったって聞いたような…いや言わないでおこう)
南 夢芽 : 「……私にもやって。それ」
麻中 蓬 : 「ええ…何も起こらないと思うけど…」
南 夢芽 : 「いいから」
麻中 蓬 : 「…えと……インスタンス…ドミネーション……」
特に何も起こらない
南 夢芽 : 「………」
麻中 蓬 : 「………」
麻中 蓬 : 「………満足しました…?」
南 夢芽 : 「うん、まあ」
南 夢芽 : 「………これで、おあいこ」
蓬の手を握ったまま紗雪のほうへ顔だけ回して振り返って
黒羽 紗雪 : 「……」
無言で、蓬のもう片方の手を握って
黒羽 紗雪 : 「…………"これから"おあいこ」
視線だけを夢芽に向けつつ。

足りない分の想い出はこれから作れるものだろうし。
南 夢芽 : 「……………むう…」
その視線に鋭い視線を返しつつ
黒羽 紗雪 : 「……ふん」
飛鳥川 ちせ : 「罪な男っスね~ヨモさんは」
麻中 蓬 : 「………ええと…取り合えず、みんなで飯でも食べに行く?」
無理やり話題を変えようとする。手を握られたままだが
山中 暦 : 「もうこんな時間か…」
飛鳥川 ちせ : 「さんせ~!お腹空きましたねー」
黒羽 紗雪 : 「…………賛成」
南 夢芽 : 「…………わかった」
麻中 蓬 : そのまま、一同は橋の陰から日差しの中へと歩を進めて
南 夢芽 : 「……決着つけるのは、また今度だね」
黒羽 紗雪 : 「……そうなる」
南 夢芽 : 一先ずは現在の立ち位置を、居場所とすると認めつつ
南 夢芽 : 「でも、負けないから」
黒羽 紗雪 : 「そう」
黒羽 紗雪 : 「……最後に勝つのは、私だ」
南 夢芽 : 「……そう」
紗雪に挑戦的な視線を送ったあと、握っていた手を引っ張り自分のほうへと蓬を連れて先に歩いていく
黒羽 紗雪 : 「……む」
負けじと、自分の方に寄せる様に手を引っ張りながらそのまま早歩きで歩いて行く
麻中 蓬 : 2方向から引っ張られて慌ててついて行く
麻中 蓬 : 「いいのかな…これで……?」
飛鳥川 ちせ : 「ンマーいいんじゃないっスかね、今は」
「なんだか面白いし!」
山中 暦 : 「ちせ……完全に他人事だな…」
「まあ…頑張れ!」
麻中 蓬 : 「はい……」
麻中 蓬 : 新しい仲間を迎えて、新しい日常が始まっていく
麻中 蓬 : この先どうなるかはわからないが、一先ずはこれが今の俺たちということで
この日常を守っていけたらな…と、そう思うのだった
麻中 蓬 : 皆が笑い声をあげ、時には困惑し。……互いに競い合ったり認め合ったりもして
麻中 蓬 : こういった道の先に、約束の未来があるのだから
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :  
麻中 蓬 :