[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン :  

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : チリが山と積もり、窓の外は歪んだ景色のまま
この廃墟が、破滅から何も変わらぬことを示唆している

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : ここは、夢と妄執が滅びた場所
正義と悪と全てを入り混じった怪物が殺し合い。物は壊れ、命が絶えた地獄の跡

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 玉座には、かつてよりずっと小さくなった主が眠る棺。その周りの台座には見かけだけは修復された同胞達が並んでいる

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 「準備、かんりょー」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : そして、ここで稼働するはたった一機の人形のみ。こちらもよく見れば劣化が激しく
白塗りでヒビを誤魔化している

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 事の始まりは……いいや

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 夢の終わりは、パファリア光明結社の奇襲から始まった

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : ミカがマスターと仰ぐ少女、オートスコアラーを制作した。錬金術師のキャロル

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : そして、この廃墟。
チフォーズシャトーこそ、この因縁の種だった

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 強奪したシャトー、世界解体の大義の元節々で発生してしまった結社との衝突

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 果てがコレだ

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 結社は創始者の人外は愚か、幹部、さらには人員まで壊滅し

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 対するシャトーはオートスコアラーは番外の妹含め一機を残し大破
数十年経った今でも回復の目処は立たない

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 「…行ってくるゾ、マスター」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : そして、主人は本性を現した人外との死闘の結果。予備のボディを使い果たし倒れた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 今でも、発生機能を揺らすのは
“もっと早く、仕留めていれば”というあり得ない過程

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : リーダー格を先に落とせば、士気を落とすと踏んだ判断ミスがこうして生き恥の──ただの物が生き恥とも奇妙だが──晒す要因でもあった

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : だが、ここまで稼働を停止しなかった報いがやっと訪れた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 「聖盃…根源…!それさえあれば、なんでも叶う……!」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : その儀式を知った日から、全力で準備は進めてきた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : ならば、後は…

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 転げ落ちる他ない、呪いに満ちた運命の坂を

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 懐の瓶を叩き割り、陣を展開し飛ぶ

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 全ては、主人の勝利の為に

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 機械人形は無感情の上に笑顔を被せ、聖戦へと躍り出た

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン :  

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : ミカは、一度去った廃墟に一時訪れ。
型を取りずっと考えていた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : セーラー、フォーリナー、アヴェンジャー、ギルガメッシュ……そして、ラダマンテュス

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 人間が描く綾模様
それは、数十年の間記憶で反芻した通り、美しい輝きだった

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : なのに、マスターは過去ばかりに目を向けた
…人の文化を慈しむ心を、捨てられなかったというのに

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 親が、“世界”に殺されたのが元凶だろうか?
ならば頷けなくもない

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 些か理不尽な理屈ではあるが、親の仇に友人の弔い。或いは恋人の〜etc

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : これによる復讐を肯定するならば、世界を対象とした時。そこに生きる人々は対象にならざるを得ない

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 関係がない、とは誰しも言い切れない
人間の世界とは、人間が切り開く物なんだから

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 「…それでも、マスター」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : あなたから貰った想い出には、確かに焼き付いて離れない記憶がある

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : けれど……

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 手を伸ばしていた誰かも。微かに、燃え尽きずに数多と存在している

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 「そんな人達も、許せなかったのカ?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 棺に向け、道化の靴が埃を払い進んでいく

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : そして、納めてからずっと。
たったの一度とて触れることをしなかった棺に縋り

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 「そんなに、人間が嫌いになったのカ?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : どうしたら良かったのか、わからない
迷子の様な、今にも泣き出しそうな声色が、夢の名残に響く

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : その答えは──

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン : 誰も、与えることは無いだろう

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン :  

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン :  

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「…また、戻って来ちゃったゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : もう、戻らないと。つい一週間前に決めた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : そうして一周終える頃に、二度も帰ってきた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「…外にいると、頭がゴチャゴチャしちゃう」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 己のマスターの願いに察しは付き、その行く末も予測は付いた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : そして、セーラー。ター坊の覚悟もつい先程理解し……

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 英雄王、および審判者に関しては言うまでもない だが

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : この戦争に無地にて迷い込んだ、フォーリナーを従えるマスター

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 彼だけは、まだ計算を終えていない

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「あの意志力には、必要な前提がある筈、なのにどうして、何も無い状態で戦うんだゾ……?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 心の炎とは、絶えず薪が必要だ
余程の傑物か物狂いでもなければ、何も理由は無しに戦えない

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 守るべき人に石を投げられれば見捨てたくなり、恋人に裏切られれば愛とて絶える

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「なのに、どうしてだ……?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : わからない、わからない、わかる筈がない

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 持たざる者の……いいや、それ以前に人さえ碌に解せていないのに

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 全てを与えられ、生まれたミカにはわかりっこない

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 異形の腕を持ったコンプレックスも
最強の地位を誇ったプライドも

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 至上の主人に作られた光栄も
自身の性格の格さえ、マスターに与えられた想い出に過ぎない

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 何一つ、欠ける事なく生まれた。故に無垢など一切の経験が無い

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : だから、わかる筈がない。そう結論付け
決戦の為だけに、演算能力の全てを振ろうとした瞬間

[異次元の廃墟] 想い出 : コトリ、と小さな音を立て。
ミカが保存していた、玩具箱が落ちて来る

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「……たしか、アレは」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 遠い昔、主人にとってはたかだか。
自分にとっては、海の底の様に遠い想い出が、少しの間を置いて蘇る

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  :  

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「コノブタチャンハオカイモノー、コノブチャチャ……あー!!また失敗だゾ!」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「なーに騒いでるかと思ったら、“歌”ですか」
ミカと同じ、人形がそこにはいた

[異次元の廃墟] 想い出 : かつては、4機いた人形

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 今は、ただ一つだけ

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「想い出を確かめてたら、変なことしてるから真似してたんだゾ!」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「けど、全然難しいんだゾ。 楽しいのカ?」

[異次元の廃墟] 想い出 : 人形は、しばし考え込むように首を傾げ

[異次元の廃墟] 想い出 : 「想い出が由来なら、マスターがその時どう思ったか。で判断すれば良いじゃないですか」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「ミカちゃんの無い頭を捻るよりは、良い案だと思いますよ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : そう言って、水を担う。性根の腐った人形は去っていった

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : そんな事はもうした、けど

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : この想い出の、少女は
あたしの主人は

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : とても、悲しいようだった

[異次元の廃墟] 想い出 : 想い出は彩る、楽しげにマザーグースを歌う親子を

[異次元の廃墟] 想い出 : それを、ただ一人で見る人形の主を

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  :  

[異次元の廃墟] 想い出 : 「…これはまた、派手に荒らしたな」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「癇癪を起こすタチでもない。どうした、ミカ」

[異次元の廃墟] 想い出 : 普段は地味だ、派手だと煩いのに
やけに面倒見がいい、土を任された人形が語りかける

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 辺りにはスペアパーツに廃棄品、あるいはミカの個人的な拾い物が四散している

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「…妹を、作ってみようと思ったんだゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : ほんの少し、後ろにいる人形が羨ましくなり。不要と見られた物を拾っては組み立てていた。が

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「やっぱり、この手じゃ無理なんだナ…」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「────」

[異次元の廃墟] 想い出 : 人形はしばし、なにも言わなかった

[異次元の廃墟] 想い出 : 生理的な反応がない人形は汗をかかない
表皮も咄嗟には歪まない

[異次元の廃墟] 想い出 : 故に、驚く時は 停止する

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「…き、きちんと片付けるゾ?」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「いや、不満があるわけではなくてだな…」

[異次元の廃墟] 想い出 : 人形はしばし悩み、何処かへ去るその前に

[異次元の廃墟] 想い出 : 「……向き不向き、などという地味な言葉を、諦められないお前に言っても仕方がない」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「よって、派手に……」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「待て、しかして希望せよ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「……?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : なにかしらの引用と思われし言葉を残した人形を、唖然として眺めていた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 今思えば

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 任務に関係が無く、計画の将来性も無い
何も、背負っていない。衝動的な行動

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : それに加え、取ろうとした手段

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : それに対して、驚きを浮かべたのだろう

[異次元の廃墟] 想い出 : 主人から受け継いだものに従い
自分の“手”で勝ち取ろうとした事へ

[異次元の廃墟] 想い出 :  

[異次元の廃墟] 想い出 : 「不確定要素……ですね」

[異次元の廃墟] 想い出 : ミカが想い出の不足により動かずにいる間、人形と主人は顔を揃え処遇を決め兼ねていた

[異次元の廃墟] 想い出 : 「確かに、想い出の分割による経験値と意志の継承は私達の最大の武器」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「されど、それが原因でプロトコルに反するのなら……このまま計画の時までは封印すべきでしょう」

[異次元の廃墟] 想い出 : 冷静に、風を纏う人形が告げる

[異次元の廃墟] 想い出 : 「……万象黙示録の件を持ち出されるのは、派手に耳が痛い、が。ミカの想いを汲まぬのは地味に心が痛む」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「…それに、近頃光明結社の動きが臭い。緊急時の対応を考えれば、最大戦力のミカを封印する事は地味に反対だ」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「正しい意味での最大、は私の妹だが、残縁ながらあれは……」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「鈍い、ですよね。確かにカタログスペックはミカちゃん以上ですけど、重すぎですよ」

[異次元の廃墟] 想い出 : 割り込んだ挙句、妹への直接的な表現に口をへに曲げる先達を他所に、性根が腐った人形が告げる

[異次元の廃墟] 想い出 : 「結局、あたしらが何言おうが。正しいのはマスターの判断」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「なら、結論を急いだほうがいいですよ」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「ね、マスター?」

[異次元の廃墟] 想い出 : 戯けるような声で人形が、主命を強請る

[異次元の廃墟] 想い出 : 「…好きにさせておけ」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「……もしも、揺らぎが生じればミカは苦しむでしょう」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「更に、それが原因で計画に支障が出たとすれば……」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「杞憂だ、その程度の事で揺らぐほど、柔なやり方を選んではいない」

[異次元の廃墟] 想い出 : 雲さえ貫く山岳のように言葉は重かった

[異次元の廃墟] 想い出 : 「…プログラムに反する想い出との感応、これが生みだす物が、万象黙示録の実現に役立つかもしれない」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「幸い、呪いの受け皿ならばまだ用意はある。役立たずになろうと大差は無い」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「以上だ、何か異論は」

[異次元の廃墟] 想い出 : ある筈がない、示すように人形達は跪く

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : …けど、結局。結社との決戦で役割を果たせなかった。期待された事も、何一つ成せず

[異次元の廃墟] 想い出 :  

[異次元の廃墟] 想い出 : 「……ふむ、これは」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「クッション……ですね?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「人形だゾ…」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「えっ!?」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「え、いえ。 コ、コホン」

[異次元の廃墟] 想い出 : 咳をする肺など無いのに、人形はおかしな事をして

[異次元の廃墟] 想い出 : 「初めてにしては…」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「不出来」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「よく見ると愛嬌が…」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「ゼロ」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「……あ、味が」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「酷い」

[異次元の廃墟] 想い出 : フォローに浮かぶ言葉を次々と撃墜され、もはや想い出の中の語彙に手を付けるかと悩んだ時

[異次元の廃墟] 想い出 : 少し、擦る様な音を零す。火を託された人形に気付いた

[異次元の廃墟] 想い出 : 「……そう、卑下する物ではありません」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「確かに、この人形は酷い。雑巾で組み上げた様な表面、ヒビが入っているのに接合された目のボタン」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「確かに、0点。いえ、素材の無駄を加味すればマイナス点」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「だけど、それで自分を卑下する事はおやめなさい」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「…してない」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「そう、よかった」

[異次元の廃墟] 想い出 : 肉さえなくも柔らかな。声が、部屋に届く

[異次元の廃墟] 想い出 : 「あなたは、錬金術を極めたマスターが、最強定めた自動人形」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「そして、この子は」

[異次元の廃墟] 想い出 : 人形の腕を掴み、手をミカに差し向けさせ

[異次元の廃墟] 想い出 : 「最強の人形に作られた人形、出来は悪くも。その一歩」

[異次元の廃墟] 想い出 : 「今は、それでいいのです。 悔やむ事がない様に歩むための、挫折なのだから」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 差し出された人形の手を掴もうとして、つい吹き出した

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : “足”だったのだ、差し出された部位は

[異次元の廃墟] 想い出 : そうして、困惑する人形と共に

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 少し、温かな想い出を残した

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  :  

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「……」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 玩具箱から転げ落ちた、もう何処が足かも忘れた人形を拾う

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 随分と腕の扱いも上手くなった

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 今なら、せめてテディベアは作れる……と思う

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「……無垢、カ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : アレから、何年も、何十年も経ち
あの頃に比べ物にならぬ程、多くの事を知った

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 殺意はあの頃に比べ鈍った

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 身体は、すっかりボロボロだ。この戦争がいつまで続くかは知らないが

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「終わった後は……多分ない」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : ギリギリまで、耐えてきた。この戦争で最高のパフォーマンスで戦う為だけに この身体を維持して来た

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : それは、なんの為だったかと言えば
この人形が示していた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「今なら、答えを出せる気がする」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : だから、今は答えを箱にしまって
代わりに、人形を置いていく

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : さあ、次が、きっと趨勢を決める決戦だ

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 誰が相手でアレ、あたしは全てをぶつけよう。今は陽気に、いつもの様に

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「このぶたちゃんはお買い物〜♪このぶたちゃんはお留守番〜♪このぶたちゃんはおやつ食べ〜♪」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 想い出の中のあたしよりずっと、上手になった歌を従え
決戦への行進を始めた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  :  

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「よい、しょっと!」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : せっかくなので、自分の腕で棺を引き出す

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : そこには……マスターのボディの欠陥品
早期に負傷した為、ずっと保存していた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「エルフナイン……出来損ないの11番」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「同じ損ない者同士、お前にも頑張ってもらうゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  :  

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「起きろ、起きるんだゾ。エルフナイン」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「…んっ……ふぁぁ……後、5分…」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「…サクッと起きないと、バーラバラだゾ?」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「ひ、ひぇぇ……!?」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「え……ミ、ミカ? あ、そう!襲撃、光明結社が攻めてきて……!」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「そー、んで。マスターもガリィもファラもレイアも。みーんな死んじゃったんだゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「で、あたしが色々頑張って、お前を治してやった、感謝するんだゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 人形は、どうにも不機嫌だった

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : ”さっさと失せろ“とでも言いたげな様子で

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「キャ、キャロルまで……!?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「んー、そう。マスターもあっさりやられちゃった。 人って脆いナ〜」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 人形は、興味もないように答え

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「ま、お前は良かったんじゃないカ? ずーっと、マスターの計画に反対してたロ?」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「……っ! だ、だからって!キャロルは……ボクの…!!」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「そーいうの鬱陶しいんだゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「良いカ? お前を治してやったのは、元マスターへの最後の義理立て」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「マスターの想い出を持ったお前が生きてれば、それでじゅーぶんだロ?」

[異次元の廃墟] エルフナイン : ミカが、キャロルの事を、こんなに乱暴に扱うなんて……

[異次元の廃墟] エルフナイン : これまでに、一体何が……

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「さ、お前もどっか行くんだゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「……やーっと、重荷が降ろせたゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : そうぼやくと、大量に荷物をエルフナインへと押しつけた

[異次元の廃墟] エルフナイン : 慌てながら、なんとか受け止め……

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「着替え、一応の食べ物、行き先、頼れる人に航路まで。ぜーんぶ揃えてやったから、早く行くんだゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : しっしっ!と、爪を払い 人形は主人の忘れ形見を何処ぞへと捨て去ろうとする

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「で、でもミカはどうするの!? シャトーがこんなに荒れてるって事は、もうスペアパーツだって……」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「ヘーキヘーキ、ミカは、根源のお陰で。マスターより長生きできるんだゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「お前の助けなんかいらないし、シャトーにも縛られない」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「だから、お前も。あたしを助けようなんて思い上がらず、潔くシャトーから消えるんだナ」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「…ミカ」

[異次元の廃墟] エルフナイン : まさしく過去とは似ても似つかない

[異次元の廃墟] エルフナイン : 従順な姿から一転して、ミカは感情を剥き出しにしてボクを……いいや、キャロルを拒絶している

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「……わかったよ、ミカ。ボクは、ここを離れる」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「…最後に、助けてくれてありがとう」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「ふん、もうこんな事、うんざりなんだゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : パチリ、と爪を鳴らせば
エルフナインの背丈ほどあった荷物は、箱一つに収まっていた

[異次元の廃墟] エルフナイン : ……これなら、助けなどいらないと言われれば頷くしかない

[異次元の廃墟] エルフナイン : スペアボディどころか、新人類の肉体とて手に入れられるのだから

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「さ、早く。メソメソしてないで」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「振り返らずに」

[異次元の廃墟] エルフナイン : ……鞄を抱え、そのまま出口へと向かっていく

[異次元の廃墟] エルフナイン : ご丁寧に、扉の形をした力場が、ここを出口だと知らせている

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「はぁ、せーせーしたんだゾ!」

[異次元の廃墟] エルフナイン : ミカの、声が聞こえる

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「マスターのおバカな計画の残りカスも!ざこざこエルフナインともこれでおさらば!」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 嗤っている。自分を縛った計画を

[異次元の廃墟] エルフナイン : 仕方がない、彼女はずっと自分の異形の腕を呪っていた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「後は、お前が好きにするんだゾ!黙示録?だっけ、それも終わらせたし」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 軽薄に、キャロルの数百年を終わらせて

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「さてと、あたしは。旅行にでも行こうかナ〜!新しいマスターと一緒に、緑の丘にピクニックとか……」

[異次元の廃墟] エルフナイン : もう、新しい主人も見つけたらしい。
彼女は最大限キャロルに尽くし、礼儀は欠くが義理も果たした

[異次元の廃墟] エルフナイン : だから……だから、振り返る必要はない

[異次元の廃墟] エルフナイン : なのに、なぜか……ボクは

[異次元の廃墟] エルフナイン :  

[異次元の廃墟] エルフナイン : →どうしても、ミカを放って置けなかった
 ミカを置いて、夢の残骸を後にした

[異次元の廃墟] エルフナイン :  

[異次元の廃墟] エルフナイン : 振り向いた

[異次元の廃墟] エルフナイン : 明るく響く声の先へ

[異次元の廃墟] エルフナイン : そこ、には

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 誰もいなかった

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「……ミカ!?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「あー……もう、振り向くなって、言ったのに……」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : ガシャリ、と大きな音を立てて崩れ落ちる

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 誰もいないように見えたそこには、シルエットだけが残っていた

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : “影”まだ、そこにいて

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : もう何処にもいない事の裏返し

[異次元の廃墟] エルフナイン : 必死の様子で、その影の場所に駆け寄り
手探りで探す

[異次元の廃墟] エルフナイン : だが、何度影から位置を逆算して手を差し伸べても。虚しく通り抜けるだけ

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「いったい、いったいどうして!?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「ん〜……まあ、いいや。」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「ウソつくの、嫌になったから教えてあげるゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 人形の声が何処からか響く

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「根源に到達したのはホント、でも」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「長生きするのはウソ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「……ぜーんぶ、返しちゃった」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「接続を絶ったの…?でも、どうして」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「そーじゃなくて……返したのは」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : そっち、と影がエルフナインの影に触れる

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「え……!?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「あたしは、元はと言えばマスターから分けて作られた、マスターのエゴの一つ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「そして、人間じゃなくて。人理に登録される謂れもない」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「本当に登録されたのは、ミカ・ジャウカーンの名前じゃない」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「“キャロル・マールス・ディーンハイム”。あたしはマスターとして登録された」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「だから、返せば……ッ!」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 影から、足が途切れる

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「キャロル……って、もう、キャロルは何処にも…!」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「……内緒に、してたけど」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「まだ、マスターは生きてる」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「お前の中で」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「……!?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「……ま、封印してるけどナ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「マスターをただ生き返らせても、また同じ計画を実行しようとする」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : だから……

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「エルフナイン、お前の見せる景色が、マスターには必要なんだゾ」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「ボ、ボクが……?そんなわけ…」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「ある、だって……お前は」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「昔のマスターに、一番よく似てる」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 既に全て譲り渡した思い出の名残が、父との記憶を呼び覚ます

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 奇跡の否定を誓う前のキャロルという一人の少女に一番似ていたのが、彼女だった

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「……でも、計画を実行されるのが嫌ならどうしてキャロルに根源を…?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「ん〜……悪戯心」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「────」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「冗談だから、その目はやめるんだゾ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : ふざけている間にも、散々と呪った爪さえ影を失い

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「…マスターにぜーんぶ返す都合上、根源の譲渡が必要だったのと」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「……後は、純粋に」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「マスターに、受け取って欲しかった。あたしが、全力で生きた意味を」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「ま、結果このザマだけどナ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : キャロルとミカが同一なら、二人いる事は明らかな矛盾

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : たかが命、たかが物なら世界も目はつけまい
似た事例など案外珍しくも無く、問題は生じない、が

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : “根源接続者”ともなれば話が別だ

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 被害規模が、影響力の桁が違う

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : なら、当然一つに残され

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「手放した側が消える」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「説明すれば簡単だゾ」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「…消えるとわかってたなら、どうして。キャロルを?」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「……」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「答えてくれないと、動かない。 まだボクにはキャロルを自由にして良い確証が無い」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「納得できなかったら。ボクはここから出られない」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 危険だから、何より
ここまでした人形に、そうでもしなければ、ボクたちは…

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「…あたしは、ちょっと長生きして」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「マスターより、少し長く生きて。思ったんだ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「…あたしは、マスターに繋いでほしい」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「心を、縁を、世界を」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「正しい意味で、パパの……イザークの命題を継いで欲しかった」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「嫌だったんダ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「何も返せずに終わるなんて、マスターが、みんな大嫌いなまま終わるなんて……」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「だから、全部返す事にした」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「────それは」

[異次元の廃墟] エルフナイン : やりすぎだ、と。口に出せない

[異次元の廃墟] エルフナイン : 母の日のプレゼントに、核爆弾を選ぶような暴挙に愚行

[異次元の廃墟] エルフナイン : そんな、そんな拙い事を

[異次元の廃墟] エルフナイン : どうしても、否定できなかった
それは、ボクだって思うだろう事だったから

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「理由は、これでぜーんぶ」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「マスターは今、あたしの想い出とお前に包まれて生きてる」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「だから、お前が見た者が直接マスターに届く」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「……だから」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 答えは、全て渡した

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 世界の真実も、父の意志も

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 自分の願いも、人形達の願いも

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 自分が、繋いだ物も

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「だから、最後に」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「エルフナイン……あなたに、マスターを──」

[異次元の廃墟] エルフナイン : わかった、とは言えない

[異次元の廃墟] エルフナイン : キャロルの怒りも、ミカの願いも
背負い切るにはとても重く……

[異次元の廃墟] エルフナイン : それでも、全力を尽くす事を、切に誓った

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「……ふふ、これでほんとにやる事は終わり」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「少し、寂しくなるけど……」

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 人形は遂に、頭さえ消えて

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : その刹那に、全ての記憶を走り抜け

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 80の無念と、一週間のつながりに、満足して

[異次元の廃墟] ミカ・ジャウカーン  : 「───いい人生だった、なんちゃって」

[異次元の廃墟]   : 茶目っ気を含ませた言葉を残し、この世から去っていった

[異次元の廃墟] エルフナイン : 「……お疲れ様」

[異次元の廃墟] エルフナイン : 残響に言葉を返し、錬金術師の最後の一人は廃墟を去った

[異次元の廃墟] エルフナイン : 遠い、遠い昔に。父と聞いた童歌を想いながら

[異次元の廃墟]   : その果ては記す余地は無い

[異次元の廃墟]   : もう、充分すぎる時を取った

[異次元の廃墟]   :  

[異次元の廃墟]   :  

[異次元の廃墟]   :