[メイン3] ??? : 今回、遠方の無人島において願望機の存在が確認された

[メイン3] ??? : 同時に、なんらかの手段で告知された
願いは、一つしか叶わないのだと

[メイン3] ??? : 軍、政府、協会
あらゆる者が手を尽くし、その島を目指すが……

[メイン3] ??? : なんらかの基準があるのか、或いは群れを拒むのか

[メイン3] ??? : 上陸した途端に天高くに放り出された
上空から落下しようとしたら、海へと落ちていた

[メイン3] ??? : この珍事態に勢力同士の妨害が含まれているのは察しの通りなのだが……

[メイン3] ??? : やはり、この島が叶える者を選んでいるのだろう

[メイン3] ??? : ────「というわけで」

[メイン3] ??? : 「今回、我が国からはお前が選ばれたわけだ、ベルグシュライン」

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン : 「何故なのでしょうか…?」

[メイン3] ??? : 「わからん、が幸運だった」
「お前に任せておけば、悪い結果にはならんだろうさ」

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン : 「は、身に余る評価を受け、恐縮です」

[メイン3] ??? : 「ハッハッハ、お前はもう少し自信を持っていいと思うのだがな」
「それとも…」

[メイン3] ??? : 「まだ、悩みは晴れないのか?」

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン : 金の髪、精気に溢れる逞しき肉体
細身のベルグシュラインとは鏡写の様な偉丈夫

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン : まさか、この男が千年の時を生きる“神祖”とは、誰も思えまい

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン : そして、揚々とした声で神祖は、己が刀剣に語りかける

[メイン3] ??? : 「……それもそうか」

[メイン3] ??? : 「お前が抱える悩みを忘れてはいないさ、幼き日より見守ってきた以上、お前は私の一部とさえ信じている」

[メイン3] ??? : 「故に、我が事のように、お前の苦悩も理解しているつもりだ」

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン : 深く頭を下げ。敬意を表す

[メイン3] ??? : 「…… 運命がお前の分岐点になる」

[メイン3] ??? : 「愛や、信念、不安定な力……運命の歯車を、時に木っ端微塵に打ち砕くイレギュラー」

[メイン3] ??? : 「……“運命”」

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……主や、配下の者達、これまで切り捨ててきた幾重数多の敵達も、それと巡り会う事ができたのでしょう」

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……しかし、私には──」

[メイン3] ??? : 「……よし、今は指針を立てるといい」

[メイン3] ??? : 「今回の件がお前の運命たり得るかはわからないが、これほどの大騒動だ」

[メイン3] ??? : 「お前を変えてくれる者が、あるやもしれん」

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……はっ」

[メイン3] ??? : 「では、そろそろ船が着く、良い航海をな」

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン : 命を受け、絶対剣は動き出す

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン : 心の面に、微かに燻る想いを胸にして

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン :  

[メイン3] ウィリアム・ベルグシュライン :  

[メイン3] 神木 鳴子 :  

[メイン3] 神木 鳴子 :  

[メイン3] 神木 鳴子 : 「むにゃ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 目が覚めたら知らない空模様…いやお空に違いはそうそうないな

[メイン3] 神木 鳴子 : とはいえ知らない場所なのは確定、どこだここ

[メイン3] 神木 鳴子 : んーむ、確かシフトは無いし時間的に問題はないけど、もしかして変な事に巻き込まれちゃったかな?

[メイン3] 神木 鳴子 : 他のみんなの気配はないし、取り敢えず寝転がってても意味ないよね

[メイン3] 神木 鳴子 : 「漁師は魚のいない所に網を投げるってね…」
今を把握してない顔で呟きつつ

[メイン3] 神木 鳴子 : 立ち上がり、軽くストレッチ

[メイン3] 神木 鳴子 : バリバリと、軽くスパークを走らせて

[メイン3] 神木 鳴子 : 「よし、調子は最高」

[メイン3] 神木 鳴子 : ふぅと息を吐いて、当てもなく歩き始めるのだった

[メイン3] 神木 鳴子 :  

[メイン3] 神木 鳴子 :  

[メイン3] 神木 鳴子 : むーん

[メイン3] 神木 鳴子 : どこもかしこも森ですな

[メイン3] 神木 鳴子 : 人の気配はするので変身は悩むけどお…

[メイン3] 神木 鳴子 : まあ探すまでは仕方ないかなあ、などと思いつつ

[メイン3] 神木 鳴子 : ちらちらと辺りを見回すなどやっていたのです

[メイン3] : ガサッ

[メイン3] : その時、何かが草を掻き分ける音がする。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「おや!」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「へいへーい、そこのお方は誰ですかー」

[メイン3] パワポケ : 「…………」

[メイン3] パワポケ : 目元の皺が目立ち、ひげ面の、ボロボロの衣服に身を纏った男が
どこから拾ってきたのか長い木の棒を杖代わりに、ふらふらと。

[メイン3] パワポケ : 「うぅっ、うっ…………あっ、お迎えが…………?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「お迎えー?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「そう言うのじゃないけどお兄さんボロボロだね…ソーワイルド」

[メイン3] パワポケ : 「ワイ…………ルド…………ハハハハッ ハッ…………」

[メイン3] パワポケ : 「め……飯……」

[メイン3] パワポケ : バタリとその場に倒れる。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「わあ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「仕方ないにゃあ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 踵を返して森の中に突っ込んでいき

[メイン3] 神木 鳴子 : ビリ

[メイン3] 神木 鳴子 : ビリビリ

[メイン3] 神木 鳴子 : バチィンッ!!

[メイン3] 神木 鳴子 : と、電気の音が弾けた後

[メイン3] 神木 鳴子 : 「道具がないけどいいでしょうっと」
藪を掻き分けて

[メイン3] 神木 鳴子 : 片手に大きな猪を持ちつつ

[メイン3] 神木 鳴子 : 「朝はステーキだとおじんも言ってたもんね」
テキパキと猪をバラして、平らな石に並べて

[メイン3] 神木 鳴子 : パキリ、口の端が割れて

[メイン3] 神木 鳴子 : バリバリバリと、放電を起こして加熱

[メイン3] 神木 鳴子 : 「…よっしゃ出来た!」
軽く腕を上げて、それを持ち

[メイン3] 神木 鳴子 : 「ほらご飯だよー」
と、倒れてる彼にちぎった焼き豚を与える

[メイン3] パワポケ : その時、鼻孔をくすぐる───その匂いに

[メイン3] パワポケ : 「…………!!!? うおっ、おおおお~~~~!!?」

[メイン3] パワポケ : まさかこんな所で巡り合うとは思わなかった
脂ののったステーキ…………の切れ端っ!

[メイン3] 神木 鳴子 : 「元気元気、ほれどーぞ」

[メイン3] パワポケ : 礼を言うよりもまず、その焼き豚に食らいついて
ガツガツと頬張ると、肉厚だというのに喉を滑り落ち溶ける食感にもう満足!

[メイン3] パワポケ : 「うん……! うん……! 美味いっ……!」

[メイン3] パワポケ : 涙を流しながら、噛みしめる。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「いい食いっぷり、私もいただきまーす」
ガジガジと焼いた脚を齧りつつ

[メイン3] パワポケ : 腹が満たされていくと、やっとぼやけていたあらゆる輪郭がくっきりとし始め
目の前に、焼いた足を齧る少女の姿があった。

[メイン3] パワポケ : 「あっ……! もしかして君が……!?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「うん、ぶっ倒れてたし適当に狩ってきたよ」
スーパーにでも行ったように軽いニュアンスで

[メイン3] パワポケ : 「…………? ハハハ……」
狩った? ───いやまさか、と思い少し笑って流すと。

[メイン3] パワポケ : 「俺はパワポケ! 飯を恵んでくれてありがとう……!
 君は……?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「私は神木鳴子だよっ、よろしくねー」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「朝起きたらここに居たからフラフラしてたんだ〜」

[メイン3] パワポケ : 「鳴子さんか! よろしく! …………それにしても朝起きたらここに居たって
 その言い方をそのまま受け取ると…………」

[メイン3] パワポケ : 「ここは君も知らない場所なのかい?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「そーだね、よくわかんない!」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「バイトのシフトとかは無いし適当にフラフラして近所じゃ無いなら帰るかなーって考えてた所〜」

[メイン3] パワポケ : 「…………帰れる? 俺もどうやって帰るか見当もつかないけれど
 何か帰れる方法があるなら、ぜひとも付き合うよ!」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「んにゃ、えーっと…」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「まあ船とかあったらかなあ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 最悪飛んで帰るけどなーとか思いつつ

[メイン3] パワポケ : 「……方向がわからない事には船があっても永遠とグルグルし続けるだけだから
 考え物だな…………にしても、この島にまるで導かれるように
 俺も漂流したわけだけど……」

[メイン3] パワポケ : この島に、何かあるのか?

[メイン3] 神木 鳴子 : 「んー」

[メイン3] パワポケ : 妙に変な感覚もする……。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「まあなんとかなるでしょ!」
特に深く考えない、日本は平和なのです

[メイン3] パワポケ : 「な、なんとか……? そ、そうだな! "なんとか"だな!
 ───なるよな?」
トホホ……

[メイン3] 神木 鳴子 : 「なるなる、だいじょーぶだって」

[メイン3] 神木 鳴子 : もし私で困ってもさわりちゃんとかがなんとかするでしょう

[メイン3] パワポケ : 「まぁ腹も満たしてくれたわけだ!
 船はそりゃ造船できないけど、ボートならあるんだ!
 体力がついて食料も積んだら、乗せて漕いであげるよ!」

[メイン3]   : ガサガサッ

[メイン3] パワポケ : 「! おっ、イノシシか?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「おや」

[メイン3]   : またも、草を掻き分ける音がする。

[メイン3]   : ただ少し、今回は音は大きく。

[メイン3] パワポケ : 「二匹目だ! 鳴子ちゃん! 今度は俺も手伝うよ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……ああ?」

[メイン3] パワポケ : ───ん? 何だ……何か妙に

[メイン3] 神木 鳴子 : 「わかったよーっと」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「…?」

[メイン3] パワポケ : 「……!?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「猪じゃないね」

[メイン3] 神木 鳴子 : 特に気にしてないような感じに

[メイン3] 大庭 樹里 : その草むらから現れ出たのは、イノシシでなく。
一人の少女。

[メイン3] 大庭 樹里 : ただ、火炎放射器という似つかわしくない物を持った。

[メイン3] パワポケ : 「い、猪じゃ……ない!」
ガーン!
「ん、いやいやいや! 違うな! 無人島かと思ったけど二人目にもであっ……え?」

[メイン3] パワポケ : 火炎放射器?

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ヒトの事をイノシシ呼ばわりとは、いい度胸してるんだな?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「あははごめん、さっき見つけたからさー」

[メイン3] パワポケ : 「いやいやいや! 違うっ!
 音だ! 音だけで猪じゃないかって思っただけで!」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「所でそれなぁに?水鉄砲?」

[メイン3] 大庭 樹里 : ……なるほどな。
こいつらが、”願い”のために用意された……戦わなければいけない相手、散らすべき血か。

[メイン3] パワポケ : 「鳴子ちゃん! ちょっ、やばい……少し距離を……」
嫌な予感が、ふと脳裏を過ぎる。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「んにゃ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「それはだな────」

[メイン3] 大庭 樹里 : かちり

[メイン3] 神木 鳴子 : 「…おや」
むむ、と顔を凝らす

[メイン3] 大庭 樹里 : レバーを握った瞬間。

[メイン3] 大庭 樹里 : ゴウゴウ、と炎が周りの草木を燃やし尽くさんとする。

[メイン3] 大庭 樹里 : そして、その射程内に二人も入っており。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「うおっ、まさかの火炎放射器」

[メイン3] パワポケ : 「うおぉっ───!?」
鳴子を抱いて、そのままこちらの命をついでに奪わんばかりの
炎の魔手を躱そうと後方へ下がろうと

[メイン3] 大庭 樹里 : 「────ウェルダンにするための、鉄砲さ」

[メイン3] 神木 鳴子 : びっくりして、勿体無い事に猪の足を落とし

[メイン3] 神木 鳴子 : 「あわわっ」
そのままパワポケに抱かれて離れる

[メイン3] パワポケ : 「お、おいおいおい……ウェルダンだって?
 レアでも死んじまうぞ人は……! 危ないだろ!」

[メイン3] パワポケ : 着地。

[メイン3] 大庭 樹里 : 燃やし尽くさんとする勢いの炎の手は、辺り一面の草木を灰へ。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「うぉっと」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「見晴らしがよくなっただろ?……ああ?危ない?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「…ちょっと待ちなよ、もしかしてだけどこれ…」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「何バカなこと言ってんだ、ここは”願望”奪い合うリングだぞ?」

[メイン3] パワポケ : 「───"願望"を奪いあうリングだって?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「命狙われてるっ!?」ガビーン
わかりやすくショックを受けつつ

[メイン3] 神木 鳴子 : 「願望?」

[メイン3] パワポケ : その二文字に、何故か妙な感覚を覚え。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「当たり前だ、樹里サマはてめーらの命を燃やして勝ち上がろうとしてるんだっつーの」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……あん?その口ぶり」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「わーお」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「まさか、”願望器”の事知らねえのか」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「まるでえっと…えーっとなんだっけ」

[メイン3] パワポケ : 「そりゃそうだ! 俺はさっき漂流してきたばっかりだし
 この子も朝起きたらここに居たんだぞ!」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「コダックだっけ…」
なんか似たような単語が喉まででかかった顔をする

[メイン3] パワポケ : コダック……?

[メイン3] 大庭 樹里 : はぁ…?巻き込まれた、なんてことあんのか。
……いや、そうかもな、なにせ命を取り合う戦いだから、生贄程度用意しているか。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ま、お前らが何者でもあっても関係ない」

[メイン3] 大庭 樹里 : そのまま、ぱっと地面を蹴り上げ

[メイン3] パワポケ : と、とにかく……この子……"樹里"サマって言ったな
この子は俺たちを本気で殺そうとしてるのは間違いない……

[メイン3] 神木 鳴子 : 「あー思い出したアレだアレ!」

[メイン3] パワポケ : 「!」

[メイン3] パワポケ : 「───え、何」

[メイン3] 大庭 樹里 : ────一瞬で、パワプロの眼下に。

[メイン3] パワポケ : 鳴子の方を向いてしまい。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「蠱毒ってやつでしょ…ってあらら!?」

[メイン3] 大庭 樹里 : その勢いで、蹴り飛ばす。

[メイン3] 神木 鳴子 : やっと思い出したと思えば目の前から飛び出されてる、何事

[メイン3] パワポケ : 「うおおっ! ぐぅっ!」
蹴り飛ばされるが跳躍しようとしており、威力は幾分か殺される。

[メイン3] パワポケ : こ、こんな女の子が!
これほどの蹴りを!?

[メイン3] 大庭 樹里 : 「蟲毒、そうだな……冥途の土産に教えてやる。最後に生き残った虫には、何でも願いがかなえられるのさ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「成る程ぉ、じゃあえーっと」

[メイン3] 大庭 樹里 : …こいつ、跳躍して攻撃を抑えた……
すっとぼけた顔してやがるが、かなりのやり手だな…?

[メイン3] パワポケ : 「───何だとっ! そんな……何でも願いが……!」
着地には失敗するが、そのまま衣服を更に汚しながら五点着地する。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「もしかしなくても本気でキルユー的ニュアンス?」

[メイン3] 大庭 樹里 : くくっ、燃えるぜ!

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ああ、お前らをそこのイノシシみたいに丸焦げにしてやるんだよ」
かちり、また音が鳴り。

[メイン3] パワポケ : 「…………だからか、君には叶えたい願いがあるから
 俺達を殺してでも、願いを叶えたいんだな! けれど、俺は生きたいからな
 願いは叶わないさ、ごめんな」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「それは困るね、という事で」

[メイン3] 大庭 樹里 : 鳴子の方へと出口を────

[メイン3] 神木 鳴子 : バチィン…バチバチバチバチ

[メイン3] パワポケ : 「!!?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「…ああ、そうさ!お前たちも殺して、願望の足しに────」

[メイン3] 神木 鳴子 : 髪がふわりと浮いて、スパークが走る

[メイン3] パワポケ : この音───この光……!

[メイン3] 大庭 樹里 : 「────何ッ!?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「えーっと…こー言う時はそうだな、アレだ」

[メイン3] 大庭 樹里 : そこから放たれた灼熱の炎が、鳴子へと襲い掛からんとするが。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「"10まんボルト"!なんちって!」

[メイン3] 神木 鳴子 : そう叫んで、稲妻を炎に叩きつける

[メイン3] パワポケ : 10万ボルト───この子、放電系の能力者っ!?

[メイン3] 神木 鳴子 : 伸ばした手先だけで無く

[メイン3] 神木 鳴子 : 辺りで稲妻が霊魂のように浮き上がりさらに放電を増す

[メイン3] 大庭 樹里 : 目の前を通る、光と轟音。
思わずくらんでしまうようなその力。

[メイン3] パワポケ : 「うぉおおっ!!!」
鳴子から思わず距離を取り、樹里の方を見る。

[メイン3] パワポケ : ───! 眩んだ!?

[メイン3] 大庭 樹里 : こいつ、ッ…!さては…『魔法少女』か…!?

[メイン3] 神木 鳴子 : 「あぶないあぶない」

[メイン3] パワポケ : なら、わたわたとしてる場合じゃあない!
この隙に、回り込むっ!

[メイン3] 神木 鳴子 : そのまま炎の中に突き進む

[メイン3] パワポケ : 砂を蹴り、自分は樹里の背後へと回り込もうとするっ!

[メイン3] 神木 鳴子 : 電流を球体のようにして、バリアにしつつ

[メイン3] 大庭 樹里 : 「くッ、はッ……中々、楽しませてくれそうじゃねえか…!」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「よくわかんないけどさー」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「流石に怪我でバイト休むのは困るからさ、火傷は勘弁なんだ、ごめんねー」

[メイン3] 大庭 樹里 : 目の前の全てを燃やさんとせんと。
意識は鳴子の方へと向けて。

[メイン3] 神木 鳴子 : その場で電流を収束させて

[メイン3] パワポケ : 電流を利用して磁界まで形成できるのか!
───肉を恵んでくれたお礼にまでなるかわからんが………
『目の前』に集中してるな。

[メイン3] 神木 鳴子 : 目の前に一つ

[メイン3] 神木 鳴子 : 炎の通る穴を作り

[メイン3] 大庭 樹里 : だが、それはミス。
背後に立つ”誰か”には気づくことが出来ておらず。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「もったいないのでいただきます」

[メイン3] パワポケ : どちらかが押し負ければ。
どちらかが押し勝てば。
どちらも痛手じゃすまない。

[メイン3] パワポケ : 穏便に、かつ華麗に済ませようじゃあないか!

[メイン3] 大庭 樹里 : 「────は?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 炎を吸い込むように口に運ぶ

[メイン3] 神木 鳴子 : というか燃料

[メイン3] 大庭 樹里 : 「な、バッ、ああ!?」

[メイン3] パワポケ : 「とぉぁっ!!!」
思いっきり、放電を喰らうよりはマシであろうドロップキックをかまそうと───!

[メイン3] 大庭 樹里 : 樹里サマの渾身の怒りが、あんな奴にくわれちまってる!?

[メイン3] 神木 鳴子 : 「あつあつ、流石にちょっと熱い」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「てめ」

[メイン3] 神木 鳴子 : はふはふと口をパタパタする

[メイン3] 大庭 樹里 : がつん。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「おや」

[メイン3] 大庭 樹里 : 背後から、そのキックをモロに受けて。

[メイン3] パワポケ : そのキックの威力は───
常人では、いや鍛え上げられた人間でさえも放てない
理由のわからない威力を有していた。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「あわわ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 火炎放射器、その口があらぬ方向へと。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「えっと、大丈夫…?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「が、ッ…んだ、てめぇ…!?」

[メイン3] パワポケ : どさっ、と砂浜の上に背中から落ちて
うぐっ、と声が漏れるほどの衝撃を受ける。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「おおう、背中からは痛いぞお」

[メイン3] 大庭 樹里 : 思わず、食らった後すぐさま受け身を取る。
そして攻撃を与えたであろう者へと目線をやり。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……なに敵の心配してんだよ?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「えっ?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「いやまあだって痛いもんは痛いじゃん」

[メイン3] 神木 鳴子 : 取り敢えずさっきのように大庭に距離を詰めつつ

[メイン3] 大庭 樹里 : …くッそ、モロとはいえ魔法少女だろ?
それが…たかが一般人の蹴りでここまで響く、のかッ…!

[メイン3] パワポケ : 「───ああ、背中は痛い……」
砂浜とはいえ背中から落ちた自分が、その事をよくわかっている。
だが今度はこっちに目線がいった。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「えーっと…まあ多分そうだな」

[メイン3] パワポケ : するとどうなる───今度は鳴子が背後から……!

[メイン3] 神木 鳴子 : 「捕まえないとだよね?多分」

[メイン3] 神木 鳴子 : という事で両手を大庭に向けて、肩を掴もうとする

[メイン3] 大庭 樹里 : 「なッ?!」

[メイン3] 大庭 樹里 : ぐっとその腕に捕まり。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「ちょーっと我慢してね」

[メイン3] 大庭 樹里 : そのまま振りほどかんと、ぶんぶんと腕を振るうが。

[メイン3] パワポケ : 目移りが激しくて助かった……が、何より
こっちが二人で助かった……って

[メイン3] 神木 鳴子 : 両腕がそのまま電気を浴びると

[メイン3] パワポケ : 「何をしようと───」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「てめぇ、放しやがれ────」

[メイン3] 神木 鳴子 : 激しく大庭ごと高速振動する

[メイン3] 神木 鳴子 : 「電気は危ないので…」

[メイン3] 神木 鳴子 : とはいえその振動は地震にも匹敵するようなパワーと電動マッサージ機のような速度になっている

[メイン3] 大庭 樹里 : 「────ッ、ぐ、うううぅッあああッ!!」

[メイン3] パワポケ : 「な、なんだこれ!?」
これはまるで……マッサージチェア……とは比にならないが
これが更なる電気の応用か……!

[メイン3] 神木 鳴子 : 「えーっと、ハンズアップ!武器を捨ててね!」

[メイン3] 大庭 樹里 : その振動に体を揺さぶられ、頭の中もシェイク。
マッサージとはほど遠いような。

[メイン3] 神木 鳴子 : 昔見たドラマを思い出しつつ振動は続ける

[メイン3] 大庭 樹里 : 「が、ああッ、くそッ………」

[メイン3] 大庭 樹里 : ……こうなっちゃ、無理か…
素直に…

[メイン3] 大庭 樹里 : すう、と火炎放射器が消える。
まるで魔法のように。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「おお!?」

[メイン3] パワポケ : 「! 消え───鳴子ちゃん! ストップ!」

[メイン3] 神木 鳴子 : 予想外の挙動

[メイン3] 神木 鳴子 : 「あっ、うん」

[メイン3] 神木 鳴子 : ぴたり

[メイン3] 神木 鳴子 : 掴んだまま止まる

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ッ、こ、れで…いいだろ…?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「うん」

[メイン3] パワポケ : そのまま立ち上がり、体勢を整える。

[メイン3] パワポケ : 「ああ、それでいい……」

[メイン3] 大庭 樹里 : ふらふらとした目で、虚ろに二人を見つつ。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「えっと、これで無力化よね、うん」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「多分」

[メイン3] パワポケ : 「ああ、また助けられたよ鳴子ちゃん」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「なによりですたい、ああそれより」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ったく…樹里サマの負けだ、クソ……煮るなり焼くなり好きにしろ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「えっと…」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「願い叶える為になんかこれしたんだっけ?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 手を下げて、そのままぶらんと。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「そのバーナーでぼあーって」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「あー?そうだよ、これが樹里サマの武器だからな」

[メイン3] パワポケ : 「煮たり焼いたりして食ったりはしないさ
 ───ただ殺し合いはしたくないだけだ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「うんうん、殺すのは良くない」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「…はん、甘っちょろいな?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「生贄とか今更古いって〜」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「だって、えーっと…願望叶えるのに必要なんだっけ?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「お前らは遭難なんなりできたかもしれないが、他の奴はそんな事気にしないぞ?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ああ、樹里サマはそう聞いた」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「ううん、なんだかなー」

[メイン3] パワポケ : 「そもそも、その願望器って───誰か一人になるまで殺し合わないと
 手に入れられない代物なのか? そうでないなら……
 別に争わなくていいんじゃないか?」

[メイン3] 大庭 樹里 : …っても、樹里サマがこんな風にボコボコにされてるんだがな…

[メイン3] 神木 鳴子 : 「もしかしてコレ、結構危ないイベントに誘われたみたいだ…」

[メイン3] パワポケ : 「そのようだ……」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「どうせ、ここに来てる奴は願いのために人生捨ててるようなもんだ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「貴女…えーっと、名前は?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「一人しか願いが叶えられないなら、それは争い合うと同義だろ?」

[メイン3] 大庭 樹里 : む、と少し顔をしかめ。
迷った後。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「…大庭樹里だ、適当に呼べ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「おにわちゃん!そうおにわちゃんは〜…」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「どういう願いなの?」

[メイン3] パワポケ : 「そうか、樹里ちゃんは───ん、願い
 そうだな、願いを叶えるために俺達を殺そうとしたんだからな
 どんな願いだ?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「お、お、ば、だ!……願い、か」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「おーばーちゃん」

[メイン3] 大庭 樹里 : 何とも掴めない奴と…真面目な奴だな……
こう言う奴らだからこそ、負けたのかもな…クソ。

[メイン3] 神木 鳴子 : 取り敢えず肩を掴んだままだが、ニコニコと

[メイン3] 大庭 樹里 : 「樹里サマは……いや、樹里サマの『仲間』は、とある殺し合いをした」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「その償いのために、そこで死んでいった奴らを生き返らせようとしたのさ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「わお」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「…ふむふむ」

[メイン3] パワポケ : 「…………死んでいった子の為に、かい
 けれどその為に……人を殺そうとしたんだね?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「…お前らはないのか?願おうとする、その希望は」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「死んだ人っていうのは確かに難しいや…」
少なくとも私の出来る事じゃないしなあと思いつつ

[メイン3] 神木 鳴子 : 「お願い事…?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「そうだ、樹里サマには『仲間』以外は必要ないからな」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「いい電池とか…?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 鋭い目で、パワポケを睨みつつ。

[メイン3] パワポケ : 「…………」
少し間を置いた後に、自分の願いは何なのか問われて。

[メイン3] パワポケ : 「それは旅の最中で見つけてる途中なんだ」

[メイン3] パワポケ : 「おかげでここまで漂流しちゃったけど」

[メイン3] 大庭 樹里 : …電池?こいつ、人とズレてるな…?

[メイン3] 大庭 樹里 : 「旅だと?随分悠長だな」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「まあアレだね、私は今で割と楽しんでるからあんまりないや」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「おー!旅人ってやつ!」

[メイン3] 大庭 樹里 : 見つけている途中に、楽しんでいる、か……
…幸せそうな奴らでおめでたいぜ。

[メイン3] パワポケ : 「ああ、俺は町から町へと渡り歩く"旅ガラス"だからな
 風来坊とでも呼んでくれ───」

[メイン3] パワポケ : …………しまった、旅ガラスは撤回したい。

[メイン3] パワポケ : 「あっ、その」
撤回しようとする。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「成る程成る程、旅ガラス…」
脳内で変なイメージ図を作りつつ

[メイン3] パワポケ : 手遅れだった。トホホ……なんでかっこつけたんだ俺……
激しく後悔するぞ。これで"二度目"だ……。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「はん、カラスはまだ見つける途中か。さぞ楽しい旅だったんだろうな?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「おーばちゃんは楽しんでないの?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 失われていないものがない、なんて樹里サマにとっては羨ましすぎる話だ。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「さっき元気にばーってしてたのに」

[メイン3] パワポケ : 「ああ、楽しいな
 こうやって旅を探してるのは、自分を見つめ直してるというのもあるが……」

[メイン3] 大庭 樹里 : その質問に、ニヤリと笑いつつ。

[メイン3] パワポケ : 「……そうだな、さっきまで元気だったのに急にしおらしくなって……」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「怒りを燃やすときだけは、樹里サマは楽しめるのさ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「ほへ~…えっと、あれか」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「カラオケみたいな…」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ああ!?んなちゃちなもんじゃねえよ!」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「えっ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「成程…」

[メイン3] パワポケ : 「…………まあ、そんな楽しみ方もあるんだな……
 ってカラオケ? カラオケ…………まぁ歌も感情を込めるというしな……」

[メイン3] 神木 鳴子 : うんうん唸りつつ相槌し

[メイン3] 神木 鳴子 : 「でもそういや」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「怒られるような事したっけ、私達」

[メイン3] パワポケ : 「───…………イノシシ」

[メイン3] 神木 鳴子 : さっき初対面だった気がするという表情を浮かべる

[メイン3] 神木 鳴子 : 「あ~~…」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「そうか、それは失礼だった…」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ああ?別にお前らに怒ってたわけでもないさ」

[メイン3] パワポケ : けれど怒りを爆発させる事が楽しみって事は……
根は意外に冷めてるのかもな…………見ての通りかもしれないが。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「え?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「そうなの?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ま、イノシシは死んだが……弱肉強食って奴だろ、怒るもんでもないさ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「ああうん…」
イノシシ呼ばわりの方をイメージしたけどまぁ良いか

[メイン3] 大庭 樹里 : 「お前たちも……そうなんだろうしな?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「…じゃあさっきのは八つ当たり?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「発散できるのがあれば何でもよかったんだよ、樹里サマはな」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「成程」
カラオケのような物か…

[メイン3] 神木 鳴子 : 「えっと…まあ…でも」

[メイン3] パワポケ : 「…………そうか
 だが、きっとそれだけじゃないように俺は見えるな」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「私達はやっぱお願いとか無いしもういいよね?」
パワポケを見る

[メイン3] 大庭 樹里 : 「お前らこそ、こんな島に来て窮屈だと思わないのか?『殺し合う島』なのに、だ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「窮屈?」

[メイン3] パワポケ : 「───死んでいった仲間が生き返るかもしれない
 そしてたちまち仲間の事が脳裏を過ぎり続けて…………
 やるせなさが怒りへと変わっていったんじゃないのか?」

[メイン3] パワポケ : 「…………窮屈だろうな、けど君は話が分かる子でそうでもない気もしてきたよ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「お前らは戦い合いたくなさそうだ、だが樹里サマのように他の奴らは殺し合うルールがある」
「それは、窮屈だと思うがな」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「そうかなぁ…」

[メイン3] 大庭 樹里 : パワポケの言葉に、目を細めて。

[メイン3] 大庭 樹里 : しかし、すぐにまた戻る。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「なんでもあれ、樹里サマに残ったのは”怒り”だけだ」

[メイン3] パワポケ : 「…………そうか
 君がそう言うなら、それでいいさ」
怒りを怒りだと認識できるなら、それは。

[メイン3] パワポケ : 怒り以外もまだ残ってるんじゃないか。

[メイン3] パワポケ : そう口には何故かできなかった。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「んまぁ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「怒りたい時は怒る方が健康だよ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「我慢すると肩が凝っちゃう」

[メイン3] 大庭 樹里 : ……出会った先の奴に、こんな事を言われるとはな……
口より先に手が出る、なんて言われた樹里サマを「話がわかる子」…だと?
………チッ、なんだか、クソ…もやもやする…

[メイン3] 神木 鳴子 : 「ああそうだ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「それって参加者何人か逃げても大丈夫?」

[メイン3] パワポケ : 少し力が抜けそうになるが───重たい空気が和らいでいく。
鳴子ちゃんからは、ずうっと不思議な感じがしてならない。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「じゃあ解いてくれ、この状態が我慢になってるからな」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「ああ、ごめんね~」

[メイン3] 神木 鳴子 : ぱっと離しつつ

[メイン3] 大庭 樹里 : 「逃げられ…ることは出来るだろうが、出来るのか?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「がんばれば多分」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「こう…」

[メイン3] 大庭 樹里 : そこから思わず離れる。
……おいおい、マジで放すのかよ

[メイン3] パワポケ : 「ここら辺の地図もないしな
 ボートはあるけど…………漕いでもどうにもならないだろうし
 それに俺達はおそらく『願望器』に呼び寄せられたのかもしれないな」

[メイン3] 大庭 樹里 : クソ、舐められてる証拠か…

[メイン3] 神木 鳴子 : 「にほんむかしばなしってかんじに」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ああ……?」
日本昔話…?

[メイン3] パワポケ : 「とにかく───俺は決めた
 君には悪いかもしれないけれど…………願望器が人を狂わせている以上
 この島を出るより先に俺は……それを『破壊』したい」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「えっ、あ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「パワポケくんそうする?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「お前、なんか人と違うな…?」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「んえ」

[メイン3] 大庭 樹里 : そんな態度のズレる金髪に言いつつ。
ちら、とパワポケを見て。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「まぁ毎朝ステーキ食べてるからね…(?)」

[メイン3] パワポケ : 「ああ、あるいは願望器にこう願えばいいさ
 『もう二度とこんな真似はしでかすな』って……」

[メイン3] 大庭 樹里 : 目をぎろり、と覗かせる。

[メイン3] 神木 鳴子 : 「なるほど」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「お前、本当にそう願うつもりなのか?」

[メイン3] パワポケ : 「俺にも───死んでいった仲間がいるよ」

[メイン3] パワポケ : 「けれど、俺は再生は望まない」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「そんな事を願ったら、今も死んでいるかもしれない”生贄”は────」

[メイン3] 大庭 樹里 : その言葉に、口が歪む。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……ッ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「じゃあえっと…」

[メイン3] パワポケ : 「死んだ人間は……"回帰"しない、いやさせたとしても
 それはきっと……その人じゃない、俺が望んだ……俺の中の幻を具現化しただけだ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「…」
大事そうな話なのでお口チャック

[メイン3] 大庭 樹里 : 「だが、そいつらとはまた会えるだろッ!!」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「んえ…えっと」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「おーばちゃんはどうして会いたいの?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「お前にとって、大切な『仲間』じゃないのかッ!!?」
ぎり、と歯を立てながら。

[メイン3] 神木 鳴子 : あわわとしつつ

[メイン3] 大庭 樹里 : 「それが、『仲間』にとっての贖罪だからだ」
鳴子へと声を掛けつつ。

[メイン3] パワポケ : 「…………『仲間』だ
 だからこそ、『ゾンビ』にはしたくない……それに……」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「贖罪…」

[メイン3] パワポケ : 「頼まれてないからな」

[メイン3] パワポケ : 「死んでいった仲間は、俺に───蘇らせてくれ、と頼んでないんだ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「………ぐ、ッ」

[メイン3] 大庭 樹里 : わなわなと拳が上がるが、振り下ろされる先はない。
いわば、”やるせなさ”なのだろう。

[メイン3] パワポケ : 「ただ……死んでいった仲間たちと会いたいがための一心を貫き通そうとする
 君の気持ちもわからなくはないんだ……だから
 願望器を目前にするまで───一緒に探さないか?」

[メイン3] パワポケ : 「だって、もう探し出せば
 タッチの差で勝負するだけだ」

[メイン3] パワポケ : 「殺し合う必要は、無いさ」

[メイン3] パワポケ : 鳴子の方に目を移し。

[メイン3] パワポケ : 「な」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「うん、殺しはねーよくないからね」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「…あーそうだ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「じゃあここで殺し合いできなくなればいいよね?」

[メイン3] パワポケ : 「……それに越したことは無いけれど……」

[メイン3] パワポケ : なんだ?

[メイン3] 神木 鳴子 : 「はーい」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……ああ?」

[メイン3] 神木 鳴子 : バチバチバチバチ、と

[メイン3] パワポケ : 急に嫌な予感が……。

[メイン3] 神木 鳴子 : 帯電率が一気に引き上がり

[メイン3] 大庭 樹里 : ちら、と鳴子の方へと向く。
……何だか、ヘンな事思いついてないか?

[メイン3] 神木 鳴子 : 「二人は探せて、他の人は暴れなければいーから」

[メイン3] 神木 鳴子 : 電気が辺り一面に伸びて

[メイン3] 神木 鳴子 : 不規則なスパーク音は

[メイン3] パワポケ : 「───鳴子ちゃん? ちょっ、ちょっと待って……! うっ!?」

[メイン3] 神木 鳴子 : いつのまにか讃美歌のようにリズムを形成する

[メイン3] パワポケ : 辺り一面に無差別に不規則に飛び交うスパークに、思わず目を逸らす。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「────はッ!?お前、何やろうと… ッ、くうっ」

[メイン3] 神木 鳴子 : 「…そんじゃー行ってくるねー」

[メイン3] 神木 鳴子 : 落雷が鳴子に直撃すると

[メイン3]   : ォオオオオオオオオオオオオオ──ッ
と、唸り声が上がり

[メイン3] 大庭 樹里 : 思わず目を腕で隠すが、それでも届く高熱。
電撃が、辺りを迸って。

[メイン3] 雷の異形 : 巨大な、遥かに巨大な

[メイン3] 雷の異形 : 龍のような"異形"が

[メイン3] 雷の異形 : 長く天に伸びていく

[メイン3] パワポケ : ───『人』ではない
それはわかっていた…………薄々と。
だが、樹里や、俺とは桁違いの"異形"が伸びていた。

[メイン3] 大庭 樹里 : その声に、ぞくりと背筋が震えて。

[メイン3] 雷の異形 : まるで東洋の龍、或いは飛行機雲の如く長く、長く

[メイン3] 大庭 樹里 : そこにあったのは、『異質』。
魔女すら凌駕するような、その歪ななにか。

[メイン3] 雷の異形 : 空の雲の中に突っ込んで

[メイン3] 大庭 樹里 : 「な、ぁ、ッ……こんなの、アリか、よ…」

[メイン3] 雷の異形 : 渦を巻き

[メイン3] パワポケ : 帽子を押さえながら、突っ込んでいく瞬間まで目を凝らしながら。

[メイン3] 雷の異形 : 雲は雷雲に

[メイン3] パワポケ : 「───やばいぞ、これは……!」

[メイン3] 雷の異形 : 渦は巨頭に

[メイン3] 雷の異形 : 稲妻は嵐へ変わる

[メイン3] 大庭 樹里 : 「おいおいおい、今のってあのキンパツが変化した…んだよ、な…!?」
「何するつもりだ…あいつ…!?」

[メイン3] 雷の異形 : そして、瞬く間に

[メイン3] パワポケ : 「うぉおお────!!!?」
嵐に飛ばされないよう、屈み。

[メイン3] 雷の異形 : 島を包む程巨大な嵐が遠くに形成されて

[メイン3] 雷の異形 : ゆっくりと

[メイン3] 雷の異形 : 島を飲み込む為に進み始める

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ッ、くうう……」
その嵐、暴虐とも呼べるようなソレに何とか耐えようと立ち続けて。

[メイン3] パワポケ : 「鳴子───!!! よせ!! 俺はそういった意味でお前に目をやったんじゃない───
 くっ……もう聞こえないか……!!!」

[メイン3] 雷の異形 : 暴風、落雷

[メイン3] パワポケ : 自らの身体で風を遮る壁になろうと、樹里の傍に近寄る。

[メイン3] 雷の異形 : それは、島の面々に牽制する為に

[メイン3] 雷の異形 : ごろごろと唸るようにして雷雲の中を駆け巡る

[メイン3] 大庭 樹里 : 「なッ…お前、吹き飛ばされんぞ…!?」
声はとなりのパワポケへとやりながら。
目を、その雷雲へとやりつつ。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「カラス……ああなったら、どうしようもないんじゃないか…?声も聞こえてないようだし…」

[メイン3] パワポケ : 「これぐらいっ……平気さ……けれど……
 鳴子ちゃんはどうやら能力を、いや……人ならざる者の力を最大限に
 活用してしまったようだな……」

[メイン3] 雷の異形 : ゆったりと、雲の中で泳いでいて

[メイン3] 大庭 樹里 : 「人ならざるもの……」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「だから、あんな風に変貌しちまった……」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……あんなの手に負えないだろ、ほっとくしかないんじゃないか?」

[メイン3] パワポケ : 「殺し合いを止めながら……俺たち二人に願望器を探させる……
 けれど……人ならざる者の感覚だ、このままじゃあ島全体が危ないな……」

[メイン3] パワポケ : 「生贄だとか、呼び集められた者だとか
 もはや関係ない…………俺達も無事じゃあ済まないかも、な」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「…ち、ッ……あんな嵐だもんな…」

[メイン3] 雷の異形 : 雷雲は既に浜辺に接近し

[メイン3] 雷の異形 : 激しい波を揺らめかせて飲み込ませている

[メイン3] 大庭 樹里 : ちらり、その”竜”のような姿を見つつ。

[メイン3] パワポケ : 「止める方法を探りながら……願望器も探る……
 とにかく今はそうするしか手立ては無さそうだな」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……ああもう、仕方ねえ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「わかった、休戦だ…その願望器、そしてアイツを止めるまでのな」
チッ、と舌打ちするが。目はしっかりとパワポケへとやり・

[メイン3] パワポケ : 「…………ありがとう、樹里ちゃん
 やっぱり話のわかる子だ」
片目だけを一度だけ瞬きさせ、にこっと微笑むと

[メイン3] パワポケ : 「走れるか?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「へっ、樹里サマを何だと思ってやがる」
にやりと笑い、足を掲げる。

[メイン3] パワポケ : 「その意気だ! よし……!」
そのまま嵐にはもう目もくれずに、駆け出した。

[メイン3] パワポケ : 何分……嵐の中だ。
お互いを見失うかもしれないけれど───それでも願望器を探すまでは「休戦」だぞ!

[メイン3] パワポケ :  

[メイン3] パワポケ :  

[メイン3] 大庭 樹里 :  

[メイン3] 大庭 樹里 :  

[メイン3] 大庭 樹里 : 雷竜がほとばしる嵐の中。

[メイン3] 大庭 樹里 : 彼女を止めるため、願望器を見つけるため。
走る、走る、走る。

[メイン3] 大庭 樹里 : 何だかんだ、樹里サマもついてく事になっちまったな…
クッソ、いつの間にか甘ったれてたのか…?

[メイン3] 大庭 樹里 : ……いや、違うな。

[メイン3] 大庭 樹里 : 樹里サマと似たような立ち位置だってのに、横にいるひげ面のカラスは、はっきり「NO」と答えやがった。

[メイン3] 大庭 樹里 : ……それが、ムカつくし……

[メイン3] 大庭 樹里 : …何より、羨ましい……

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ッ、く」

[メイン3] パワポケ : 「!」

[メイン3] 大庭 樹里 : 走る足が、止まる。

[メイン3] パワポケ : 「樹里ちゃん───……さっきのダメージか……!」

[メイン3] 大庭 樹里 : ……ぐ、…魔法少女とはいえ、さっきのキック…食らってたもんな…

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ッ、ああ?あんなもん、屁でもねえよ…」

[メイン3] パワポケ : 鳴子ちゃんは、それこそ振動で意気消沈させただけだが
俺は……この子にキックを喰らわせてしまったもんな……

[メイン3] 大庭 樹里 : 脂汗を顔に付けたまま。

[メイン3] パワポケ : 「一刻を争うが、無理はしなくてもいい
 大丈夫だ───……」

[メイン3] パワポケ : 彼女の脂汗を拭い。

[メイン3] パワポケ : 「この汗は、ただの汗じゃないぞ」

[メイン3] パワポケ : 「…………危険信号だ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……ただの汗じゃ、ない?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「何をわかったような、こと……」
口調に反して…ふう、ふうと息を切らしており。ぎゅっと拳を握って。

[メイン3] パワポケ : 「途中まで背負うよ───途中までなら争奪戦に影響は出ないだろうしさ」

[メイン3] パワポケ : 背中を見せて。

[メイン3] パワポケ : 「それならいいだろ?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……なんでそこまで、他人を思いやれるんだ?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「樹里サマは、お前を燃やそうとしたんだぞ?」

[メイン3] パワポケ : 「…………他人を思いやるように作られた、から
 いや、"やっと"……
 他人を思いやれるようになったから、かな」

[メイン3] パワポケ : ふと、脳裏を過ぎる───数年前の記憶。

[メイン3] パワポケ : 「まぁ、いいじゃないか」

[メイン3] 大庭 樹里 : 冷や汗を浮かべながら、しかし。

[メイン3] 大庭 樹里 : 彼の瞳には、その”炎”が見えたような気がした。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……ああ、まあ…今はそんな事じゃないか」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「…わりィな、乗せてくれ」

[メイン3] パワポケ : 「ああ、遠慮なく乗ってくれ───よいしょ、っと」

[メイン3] 大庭 樹里 : そのまま、背中へと。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ああ、重いなんて言うなよ?言ったらウェルダンにしてやるよ、ニヒッ」

[メイン3] パワポケ : 「ちょっとは言うと思ってただろ?
 何、むしろ軽くなったぐらいさ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 少し笑みを見せながら、体重を乗せた。

[メイン3] パワポケ : すると、少女とはいえ一人背負ってるというのに
先ほどより速さが増してるように、軽快な足取りで走る。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「うぉおおお!?!めっちゃ早いな!?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 雨風にあたりながらも、その勢いを真正面から受ける。

[メイン3] パワポケ : 「はははは……"人の思いで強くなる"、なんてな」

[メイン3] パワポケ : あながち嘘でもないんだけど、な。

[メイン3] 大庭 樹里 : …人の思いで強くなる、か。
似たような事……昔の仲間も言ってたな。

[メイン3] パワポケ : 束の間の時間。
俺は一人の少女を背負い、駆け続けた。
───小さな少女の、燃え盛る熱い思いを背負いながら……俺もまた熱くなっていく。

[メイン3] 大庭 樹里 : ……『ゾンビ』にはしたくない……
あながち、あいつらも……そう思ってるのかもな。

[メイン3] パワポケ : 「うおおおおおお───!!!!!! 」

[メイン3] 大庭 樹里 : その熱意は…そこにあるものなのかもしれないな…
こいつの動きを見てると、なんだか……。

[メイン3] 大庭 樹里 : 当人の彼は、気ままにさすらう風来坊でもなく……

[メイン3] 大庭 樹里 : 一つの『熱』に向けて、走る風のカラスだった。

[メイン3] パワポケ :  

[メイン3] パワポケ :  

[メイン3] パワポケ : しかし。

[メイン3] パワポケ : それは束の間の時間だった。

[メイン3] パワポケ : 「!」

[メイン3] パワポケ : 俺は足を止め、悪天候の中で目を凝らす。

[メイン3] パワポケ : 「…………樹里ちゃん」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……ん?どうした」

[メイン3] 大庭 樹里 : おぶってもらっていることにより、前は見えないが。

[メイン3] パワポケ : 「…………ここからは一人で、いけるかい?
 ───何、俺の先を越す形になるんだから、むしろ得だろう?」

[メイン3] パワポケ : 俺はそう言うと、気配を探り
そして───目を凝らした先に何かがいる事を、"理解"する。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……一人で、か……」
大庭樹里は、短絡的ではあるが馬鹿というわけでもない。

[メイン3] 大庭 樹里 : その裏に籠められた気持ちを感じ取り。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ああ、これくらいなら一人でやれるさ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「そっちも、”怪我”とかして遅れて…願望器が樹里サマの手に渡らないといいな?」

[メイン3] 大庭 樹里 : にやり、と笑いつつ。もう既に背中からは降りていて。

[メイン3] パワポケ : 「ああ───仮に君が願望器を手にしてしまう事があったとしても
 俺はむしろ"奨励"するよ」

[メイン3] パワポケ : 君は、きっと……"筋"を通してくれるだろうから。

[メイン3] パワポケ : 義理も、拾ってくれるだろうから。

[メイン3] パワポケ : "信頼"してるよ。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「な、ッ……」

[メイン3] 大庭 樹里 : 一度は顔を驚かせて。

[メイン3] 大庭 樹里 : そして、あきれ顔に。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……ったく、どこまでも”ナイスガイ”だな」
もっとも、笑みは付けつつ。

[メイン3] パワポケ : ───ありがとう。その五文字、俺で言うのも何だったから。

[メイン3] パワポケ : 「ああ───行きな」

[メイン3] パワポケ : 「"ここは俺に任せてくれ"」

[メイン3] 大庭 樹里 : その言葉を聞いて、樹里がいた場所に残ったのは。

[メイン3] 大庭 樹里 : ”ああ”と、返したような、炎だけだった。

[メイン3] パワポケ :  

[メイン3] パワポケ : 「…………さて」

[メイン3] パワポケ : 「相手の顔もよく見えない睨めっこは終わりだ」

[メイン3] パワポケ : 「───何の用かな」

[メイン3] ナハト・ナハト : 「ヒーローショーの観劇……なんて言ったらどうする?」

[メイン3] パワポケ : 「ハハハハ…………『ヒーロー』か」

[メイン3] パワポケ : 「そう見えたかい?」

[メイン3] ナハト・ナハト : 雨粒に拍手の音を混じらせ。
視界不良の雷雨の中から悠然と現れる。

[メイン3] ナハト・ナハト : 「ええ。とってもハンサム」

[メイン3] ナハト・ナハト : 「こんな雷雨の中で濡れガラスみたいになっていなければ……もっと素敵だったのだけれど」

[メイン3] パワポケ : 「どうかな……この雷雨が無くても今頃濡れガラスだ」

[メイン3] パワポケ : 雨粒がまんべんなく伝う肌。その中には───

『恐怖』による冷や汗も混じっていた。

[メイン3] ナハト・ナハト : 「ふふふ……意外と怯えてくれるのね?」

[メイン3] パワポケ : ───これはまずいな。
"囀る"事さえも許してくれなさそうだ。もとより悲鳴をあげるつもりもないが。

[メイン3] ナハト・ナハト : 「……でもね、さっきの貴方の演劇に。たった一つだけ足りないものがあったの……」

[メイン3] ナハト・ナハト : 落胆したような声。

[メイン3] パワポケ : 「それは感想をぜひとも訊きたいな
 俺は劇もやった事があるんだ、それなのにそれを活かせてないなら
 困るからな」

[メイン3] ナハト・ナハト : 「何が抜けてるかなんて決まってる──」

[メイン3] ナハト・ナハト :

[メイン3] ナハト・ナハト :
     ヴィラン
「絶対的な 恐 怖  」

[メイン3] ナハト・ナハト :

[メイン3] ナハト・ナハト : その言葉とともに、手の中に小さな”箱”が現れる。

[メイン3] ナハト・ナハト : 「一曲いかがかしら……ナイスガイ?」

[メイン3] パワポケ : 「…………今は雷雨なんだ
 できれば落ち着いてゆっくりと聴きたい
 いや何なら俺が弾いてあげたい所なんだ───」

[メイン3] パワポケ : 「だから…………
 その曲はゆっくりとは聴いてられないな」

[メイン3] ナハト・ナハト :
                   トイズ
「私もまだまだ遊び足りないもの。新しい玩具を試してしまって、すぐに終わらせましょうか」

[メイン3] ナハト・ナハト : ”箱”が開く。現れるのは、黒衣の男が放った炎。

[メイン3] ナハト・ナハト : 赤ならぬ黒炎。

[メイン3] ナハト・ナハト : 一度放たれれば燃やし尽くすまで消えることはない……

[メイン3] ナハト・ナハト : 『天照』

[メイン3] ナハト・ナハト : 黒炎が雨をも焼き尽くし、濡れガラスの元に。

[メイン3] パワポケ : 目のピントの合った場所からたとえ炎であろうと焼き尽くす高温の黒い炎。
───ゆえに箱に触れたという過程を踏んだことで、性質は変わっているはず
だが…………そうともいかない。

[メイン3] パワポケ : ギリギリ、偶然にもナハトの視界から外れる形で躱すが
雷雨に打たれているにも関わらず、自慢のマントに火がつく。

[メイン3] パワポケ : 「ッ───!」

[メイン3] パワポケ : マントを翻すも鎮火はできない。
すぐに脱ぎ捨て───風に乗せて、火のついたマントを視界を塞ぐ事も兼ねてナハトの方へと……!

[メイン3] ナハト・ナハト : 「っ」
目を見開く。

[メイン3] ナハト・ナハト : 自分がサスケの炎を利用したように……目の前の男も自分の放った炎を利用して見せる。

[メイン3] ナハト・ナハト : どこか数奇なもので……

[メイン3] ナハト・ナハト : ナハト・ナハトはあくまで黒炎の脅威を箱詰めしただけだ。
その制御は一切できない。

[メイン3] パワポケ : 今の黒炎……『視界』に入るのがマズいっぽいが……
さっき避けられたのは偶然……"二度来る"か? いや……この技……
『彼女の物』ではない……! 感覚でわかるっ……

[メイン3] パワポケ : なら、彼女も鎮火はできないっ! はず……!

[メイン3] ナハト・ナハト : 舌打ちをしながらマントに手を伸ばして、自身の”箱”に回収するのを余儀なくされる。

[メイン3] ナハト・ナハト : マントに手で触れ、”箱詰め”。

[メイン3] ナハト・ナハト : 黒炎ごと無害に、手の内に。

[メイン3] パワポケ : 何……!!?
"箱"に詰めた───雷雨の中でも燃え盛る黒炎を、一瞬で……

[メイン3] パワポケ : これが……あの女の能力か……!

[メイン3] パワポケ : だが、箱に詰めた瞬間に
俺は距離を詰めるッ……!

[メイン3] ナハト・ナハト : 「中々味な真似を──!」

[メイン3] パワポケ : 距離を離せば離すほど、彼女の視界に捉えられやすいっ!
もし、あれが二度目来たらさすがにこの距離は厳しいっ!

[メイン3] ナハト・ナハト : 距離を詰められ──

[メイン3] パワポケ : 「うおおお────!!!!」

[メイン3] パワポケ : 直前で跳躍───そして一回転し。

[メイン3] パワポケ : 全体重を乗せ……後ろ蹴りッッッ!!!

[メイン3] ナハト・ナハト : ──不敵に、笑った。

[メイン3] パワポケ : 「なっ…………」

[メイン3] パワポケ : その笑みを、不運にも
いや……見れただけでも幸運なのだろうか。

[メイン3] パワポケ : 心の準備ができてしまった。

[メイン3] パワポケ : 何の? 最悪の事態に対する。

[メイン3] ナハト・ナハト : 来たる”蹴り”に対し。
手をかざすだけ。

[メイン3] ナハト・ナハト : 手の中に生み出された”箱”。

[メイン3] パワポケ : 待て───あの箱、まさか…………
『人体』すらも詰められるんじゃあないだろうな?

[メイン3] パワポケ : その時、俺は脳から信号が送られるよりも前に脊髄的に反射
かろうじて蹴りを直前で止める……!

[メイン3] パワポケ : 箱に触れなければいいんだ───!

[メイン3] パワポケ : 勢いを殺さずに……左ストレートッ……!

[メイン3] ナハト・ナハト : 「…………あら!」

[メイン3] ナハト・ナハト : まさか、あの僅かな攻防で手の打ちを見破られているとは。

[メイン3] ナハト・ナハト : いいでしょう、これは言わば強者たる貴方への勲章として。

[メイン3] ナハト・ナハト : 「…………ッ」
強烈な勢いの乗ったストレートを、僅かばかりの防御だけして受け止め。

[メイン3] ナハト・ナハト : その勢いで大きく後ろに飛ぶ。

[メイン3] パワポケ : 「───!!!」
当たった……! よし…………いや! 違うっ!

[メイン3] パワポケ : あえて受け止めたんじゃあないかっ!?

[メイン3] パワポケ : 距離が……離されたっ!

[メイン3] ナハト・ナハト : 「ああ……痛い。とてもとても痛い」

[メイン3] ナハト・ナハト : ぱんぱんと服を払い。

[メイン3] パワポケ : ───その箱を開けさせるかっ…………!!!

[メイン3] パワポケ : もはや僅かな所作を見ている場合ではない。

[メイン3] パワポケ : 俺は必死に駆けるッ!

[メイン3] ナハト・ナハト : その走力を見て。

[メイン3] ナハト・ナハト :
       ・・
全力で、足元の地面を”箱詰め”。

[メイン3] パワポケ : 「なっ…………!!!!!」

[メイン3] パワポケ : 目の前の事に集中して。

[メイン3] パワポケ : 足元が疎かになっていた。

[メイン3] パワポケ : ───いやこんな事…………ありえるのかよ……!!!

[メイン3] パワポケ : 「うおおおおっっ……!!?」

[メイン3] ナハト・ナハト : 走るパワポケの足元に、巨大な陥穽が生まれる。

[メイン3] ナハト・ナハト : 「足元注意……なんて」

[メイン3] パワポケ : 俺はその陥穽を飛び越えようと、跳躍───見事なまでに

[メイン3] パワポケ : それこそ

[メイン3] パワポケ : 『的』だ。

[メイン3] パワポケ : 自分でも気づいたときには、空高く。

[メイン3] ナハト・ナハト : 手の中は既に新たな”箱”が用意されていて。

[メイン3] ナハト・ナハト : 「今日は良い天気ね──」

[メイン3] ナハト・ナハト : 「だってこんなにも使いやすい”武器”があるのだもの」

[メイン3] ナハト・ナハト : ”箱”の中に閉じ込められていたのは”雨”。

[メイン3] ナハト・ナハト : 圧縮された水が凶器となって、高く飛び上がった的目掛けて飛翔する。

[メイン3] パワポケ : 躱せ。
そう体に命令したところで、俺は虚空の中で足掻く事しかできない。

[メイン3] パワポケ : 圧縮された水。その威力は
石さえも───真っ二つにできるという。

[メイン3] パワポケ : 「っかはぁっ……!!!」
飛翔した雨により、俺はそのまま吹き飛ぶ。
吹き飛んだことが唯一の幸運。ただそれだけだ。

[メイン3] ナハト・ナハト : 「鳩撃ちならぬ烏撃ちね、これじゃあ」

[メイン3]   : 悪天候の中、パワポケは吹き飛んでいき───そして消えていった

[メイン3]   : パサリ、と帽子がその場に落ち。

[メイン3]   : ナハトと、容赦ない雷雨の不協和音だけが残った。

[メイン3] ナハト・ナハト : あの様子……済んでのところで致命傷は避けたか。

[メイン3] ナハト・ナハト : この戦場に敗者は要らな──

[メイン3] ナハト・ナハト : 「…………ッ」

[メイン3] ナハト・ナハト : 追撃に進もうとした足がぐらりとバランスを崩す。

[メイン3] ナハト・ナハト : 先ほど受けた傷……体内にまでダメージが響いたらしい。

[メイン3] ナハト・ナハト : 「ふ……ふふ…………」

[メイン3] ナハト・ナハト : 「……どの道あの傷では、まともに横槍も刺せはしないでしょう」

[メイン3] ナハト・ナハト : その場に落ちた帽子だけを戦利品のように手に取り。

[メイン3] ナハト・ナハト : 「所詮は路傍の石、転がる草。この嵐では千切れて飛ぶだけなら気に留める必要もない」

[メイン3] ナハト・ナハト : 「さあ次の戦いを、次の次の戦いを、次の次の次の……」

[メイン3] ナハト・ナハト : 戦いは束の間の時間だった。

[メイン3] ナハト・ナハト : 見果てぬ戦いを、”恐怖”を求めて。

[メイン3] ナハト・ナハト : 《箱詰め女王》が再び消えるのは。

[メイン3] ナハト・ナハト : 雷竜がほとばしる嵐の中。

[メイン3] ナハト・ナハト :

[メイン3] ナハト・ナハト :

[メイン3] うちはサスケ :  

[メイン3] うちはサスケ :  

[メイン3] うちはサスケ : 島を、駆け抜ける
微風の様に

[メイン3] うちはサスケ : 島を、駆け抜ける
疾風の様に

[メイン3] うちはサスケ :  

[メイン3] うちはサスケ :

[メイン3] パワポケ :  

[メイン3] パワポケ :  

[メイン3] パワポケ : ───かつての旅の思い出。赤く引かれたVのマークが目立つ野球帽を深く被り
テンガロンハットを探す。

[メイン3] パワポケ : さすがに野球のユニフォームは持ち合わせてないし、このままじゃあ
不格好だ…………。

[メイン3] パワポケ : 「箱ごとフッ飛ばされたかぁ~?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「お望みのものはこれか?ったく、大切なモンなら無くすなよな」

[メイン3] 大庭 樹里 : 声と共に、パワポケの頭の上にテンガロンハットをかぶせる。

[メイン3] パワポケ : 「!」
野球帽の上から覆うように被せられ、思わず慌て───はしない
背後から聞こえたその声は、よく知る少女の声だったのだから。

[メイン3] 大庭 樹里 : あの時は、この帽子を見せられて……”まさか”、なんて思っちまって。
ずっと胸に抱えてた不満が、爆発しちまった。

[メイン3] パワポケ : 「───樹里ちゃん! いやぁ…………俺は『今』……
 やっとここに辿り着いたんだけど、どうやら競争は俺の負けだったな
 いや……引き分けって所か?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ああ、いやそうだな…樹里サマも取ってないし、あんたも取れてない」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ま、両方負けちまったってとこだが……樹里サマは久々に、スッキリしたぜ」
にやり、と笑いつつ。

[メイン3] 大庭 樹里 : 今、ねえ。あんなに”助けて”くれたのに、隠すんなら……まあ、黙っておくか。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「何だかんだ、願望器も壊されたみたいだし…あんた的には、満足なのか?」

[メイン3] 大庭 樹里 : ちらり、と彼へと目をやりつつ。

[メイン3] パワポケ : 「ああ───この島に思い残す事は無いさ
 …………それに、君や鳴子ちゃんと出会えて、俺は本当に良かったと思ってるよ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「よ、良かっただぁ!?最後まで”楽しい”って思ってるのかよ、この島でのことを」

[メイン3] パワポケ : 「俺は……何が起こっても前に進むことが大事だと思っていた
 かといって留まる事も、大事だと思っていたけれど……
 ───最近は、ずっと後ろを振り向く事の方が多くなってたんだよ」

[メイン3] パワポケ : 帽子を更に深く被り。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……後ろを振り向く」

[メイン3] パワポケ : 「けど、君を見てね……久々にずっと前を向いてられた気がしたよ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「樹里サマを、見て…?なんだ、そりゃ……?」
ピンと来ていない様子で、尋ねる。

[メイン3] パワポケ : 「人は……怒る人の事を「怒って周りが見えてない」と言う事があるだろ?
 でも俺は、怒る事と、単に怒鳴り散らす事は違うと思ってるんだ」

[メイン3] パワポケ : 「君は、ずうっと……俺と鳴子ちゃんと会った時からそうだ」

[メイン3] パワポケ : 「ずっと前を見て、怒っていただろ?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「………あ、ッ…」

[メイン3] パワポケ : そして───最後の最後、俺の為にも

恐怖を前にして、目を背けずに

[メイン3] パワポケ : 怒ってくれた───。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……それしか、見れなかっただけでは、ある」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……でも、ま……」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……”過去”を見る事も、あんたから教わったけどな」

[メイン3] 大庭 樹里 : にっ、と笑う。

[メイン3] 大庭 樹里 : 事実、樹里が願望器を壊すことに、”意義”は唱えなかった。

[メイン3] 大庭 樹里 : 来る前の樹里であったならば、間違いなく前だけ向いて、自分たちの想いを伝えていたであろう。

[メイン3] 大庭 樹里 : だが、それが変わったのは、まさしく。

[メイン3] 大庭 樹里 :          サクセス 
────この島での、経験があったからだ。

[メイン3] パワポケ : 「───そうか
 そう言われたら、後ろを振り返るのもまあ……悪くないか!
 …………それに、樹里は後ろを振り向く事だけじゃない、留まる事……」

[メイン3] パワポケ : 「『我慢強い心』も覚えたんだ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……え、あ…」

[メイン3] 大庭 樹里 : その言葉に、にやりと妖笑を上げていた顔が。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「…そう、なのか…?」
少女のものへと変わる。

[メイン3] 大庭 樹里 : 樹里は、『我慢強い心』を求めていた。
だからこそ、『魔法少女』という背伸びをして、『無理をする』脚立にも登って、届かせようとした。

[メイン3] パワポケ : 「俺だって、まだまだ我慢強い心は覚えられていないさ

 ───ああ、どさくさに紛れて願望器をその手に握ろうとせず
 君は、俺の為に前を向いて怒った上に、恐怖を掃おうとしたんだ」

[メイン3] パワポケ : 「君は
  ヒーロー
 ”魔法少女”だよ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「────ッ!」

[メイン3] 大庭 樹里 : 『魔法少女』、なんてこと…
殺し合いしかしてない私が、ヒーローだと……?

[メイン3] 大庭 樹里 : くるり、と体の向きを変えて、顔が見えないようにする。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……ま、まー……」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「…その、言葉…ありがたく、受け取っておく、よ、”ヒーロー”」

[メイン3] 大庭 樹里 : 声は、少しだけ震え。

[メイン3] 大庭 樹里 : けれど、『我慢』して。
”ヒーロー”が嬉し涙なんか、恥ずかしくって仕方ねえ、からな。

[メイン3] 大庭 樹里 : ……それに、会えないと思ってたのに、また会えたとか…
そういう再会とかで、感情がぐっちゃぐちゃになってるわけでも、ねーし…!

[メイン3] パワポケ : 声の震えが、樹里の感情を伝えてくる。
俺は深追いはせず、こっちも気づかれないように
こちらも照れるように笑みを浮かべ。帽子を深く被る。

[メイン3] 大庭 樹里 : そんな感情を、誤魔化すように。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「なあ、あんた……”旅ガラス”なんだろ?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「…まだ、旅は…続けるのか?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 気になっていた問いを、後ろ向きに投げかける。

[メイン3] パワポケ : 「…………ああ、旅はまだ続けるつもりだ
 けれど───そうだな…………今は、落ち着く場所が欲しいかもしれないな」

[メイン3] パワポケ : 海に突発的に、突拍子もなくボートで駆り出したのも
きっと、落ち着く場所を求めようと試行錯誤した結果だ。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……!」

[メイン3] 大庭 樹里 : 落ち着く場所、という言葉に折角隠していた顔を、さらに一回転。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ならッ…!樹里サマの住んでる、二木市に来いよ!来てくれるんなら、樹里サマの腕にかけて何でも料理、作ってやるからなッ!」

[メイン3] パワポケ : 「!」
それを聞いた途端、感謝の言葉を放とうとすると
それより先に───

[メイン3] パワポケ : グゥウウウ…………

[メイン3] 大庭 樹里 : 涙目、そして顔には笑った状態でそんな事を言ってしまう。

[メイン3] パワポケ : 壊れた腹時計が鳴る。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「………」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「……ぷっ、はははは!!」

[メイン3] パワポケ : 「…………さっき猪を食べたときは日の上がり方からして昼頃だったはずだが
 おかしいな……って、あっ! 笑ったな! ほら! 笑われたから
 もっとお腹がすいちゃったじゃないか……」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「っくく、はは……いや、悪い悪い…だってよ、料理の話聞いたらすぐに反応するから、おかしくってさ」

[メイン3] 大庭 樹里 : カッコつけてるくせに、どこか抜けてる。

[メイン3] 大庭 樹里 :      ヒーロー
まさに、”ナイスガイ”って奴だな。

[メイン3] パワポケ : 「料理と言えるものなんて、もう一年は食べてないからなぁ……
 これは君が腕によりかけて作った料理がより一層楽しみだよ───」

[メイン3] パワポケ : ヒュオッ

[メイン3] パワポケ : その時、一瞬だけ寒気が辺りを包む。

[メイン3] パワポケ : 「うぉわっ!? なんだなんだ!?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「うぉッ…さぶっ!?」

[メイン3] パワポケ : ふと、海の方を見ると───海の水が、まるで「上書き」されたかのように
一面の氷の世界へと早変わりしていた。

[メイン3] 大庭 樹里 : 体にまとわりついた冷気を、確かめようと辺りを見回して。

[メイン3] パワポケ : 「あっ! あ~~~~!!! 俺のボートがっ!
 さっき積み終わった食料がっ!」

[メイン3] パワポケ : 猪の肉、にはもうありつけなかったけど
斑点のついた美味しそうなキノコとか色々積んだのに!

[メイン3] 大庭 樹里 : 「あー……いや、まあ……」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「危ない食いもんだったかもしれないし、結果オーライってことにしておかないか?」

[メイン3] 大庭 樹里 : 「今腹減ってる分、樹里サマも作ってやるからさ」

[メイン3] 大庭 樹里 : 何積んだかは、なんとなく…
無人島だから食い物も限られてそうだしな。

[メイン3] パワポケ : 「いーや、俺の勘があれは大丈夫だと言ってたんだ!
 ていうか、この一面の氷の世界…………帰ろうにも、どっちに滑っていけば
 いいんだ? うぅ~ん」

[メイン3] パワポケ : そうやって樹里の目の前で腕を組んで考える。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「ハッ、勘か…それなら樹里サマも勘でだな…」

[メイン3] 大庭 樹里 : そうして、指を一つ、太陽の指す方へと向ける。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「こっちだな!」

[メイン3] パワポケ : 「! そうか! でかした樹里っ!
 これはあっという間に帰れるだろうな!」

[メイン3] パワポケ : そう言うと、パワポケが先に氷の上を滑って。

[メイン3] パワポケ : 「樹里」

[メイン3] パワポケ : 「ほら───」

[メイン3] パワポケ : 手を伸ばして、樹里の手を。

[メイン3] 大庭 樹里 : そのまま、”前へと進む”彼を目にして。

[メイン3] 大庭 樹里 : 「────ああ!」

[メイン3] 大庭 樹里 : その手を掴む。

[メイン3] 大庭 樹里 : そして、くるりと一度だけ”後ろを振り返って”。

[メイン3] 大庭 樹里 : また、まっすぐ…”二人一緒に”前を向く。

[メイン3] 大庭 樹里 : 樹里が決めた道は、勘でしかない。

[メイン3] 大庭 樹里 : しかし、”獣”には”家”を求める感性が備わっている。
直感で信じたその道も、きっと間違っていないはずだ。

[メイン3] 大庭 樹里 : そして。

[メイン3] 大庭 樹里 : 彼の”留まる家”が、自らの住む町へとなる事を。

[メイン3] 大庭 樹里 : 些細な願いを、樹里は願う。
なぜならば、それは────

[メイン3] 大庭 樹里 :  

[メイン3] 大庭 樹里 :  

[メイン3] 大庭 樹里 :  

[メイン3] 大庭 樹里 : ────”渡り鳥”にも、”帰巣本能”はあるものだからな。

[メイン3] 大庭 樹里 : そしたら、また会えるだろッ!

[メイン3] 大庭 樹里 :  

[メイン3] 大庭 樹里 :  

[メイン3] 大庭 樹里 :  

[メイン3] 大庭 樹里 : 少女は、ニヒッと笑いながら。

[メイン3] 大庭 樹里 : 二人一緒に、その道を飛ぶように駆けていくのだった────

[メイン3] 大庭 樹里 :  

[メイン3] 大庭 樹里 :  

[メイン3] 大庭 樹里 :  

[メイン3]   : ───共に帰還する二人の間に芽生えたメモリア

「敬意」
「感謝」
そして…………「不退」───

[メイン3]   :