[メイン2] フィズ :
[メイン2] フィズ : 波間に一筋の水しぶきが線となり、一直線で進行していく。
[メイン2]
フィズ :
その水しぶきを見れば、黒い尾鰭が見える。
そしてその上には小さな人影……いや、それは人というには小さい、50cm程の影だった。
[メイン2] フィズ : 「しかしよぉシャーク、この辺りの海域は船も見えないし退屈だなぁ」
[メイン2] フィズ : 水中の影が震え、波紋が響く。
[メイン2] フィズ : 「ん?前の方にって……お」
[メイン2] フィズ : 目を凝らして水平線の彼方を見やると、そこには小さな粒が見える。あれは……
[メイン2] フィズ : 「島だ!」
[メイン2] フィズ : 「へへっ、良く見つけたぜシャーク!こんな所に島があるなんて聞いた事も無かったなぁ!」
[メイン2] フィズ : 「……ん?あぁ分かったよ分かった!褒美ってわけだな!よし、5分だけ行ってきていいぜ!」
[メイン2] フィズ : そう言った瞬間、この蒼い体躯をした生物が飛び上がり、水面下の影も消えていく。
[メイン2] フィズ : その生き物が水しぶきを上げて水中に入って暫くすると……
[メイン2] フィズ : 濃い赤色の水が辺りを染め尽くしていた。
[メイン2] フィズ :
[メイン2] フィズ :
[メイン2] フィズ : 砂浜をペタリ、ペタリと歩んでいく。
[メイン2] フィズ : 木々や岩石などは自身も見知ったものであり、特に違和感は無いように感じる。しかし……
[メイン2] フィズ : 砂浜には、明らかに自然の結果によるものではない「跡」が残されていた。
[メイン2] フィズ : 「ん~、外周を少し回った時は人が住んでるようには見えなかったんだけどな」
[メイン2] フィズ : その「跡」は、島の奥、木々の向こうへと歩みを進めていた。
[メイン2] フィズ : 「へへ……面白くなってきたな」
[メイン2] フィズ : 「シャーク!お前は待機だ。いつでも出てこられるように準備はしときな!」
[メイン2] フィズ : 彼の背後できゅうううう……と振動が発せられる。
[メイン2] フィズ : 相棒であるトライデントを片手に持ち、「フィズ」は今その島へと足を踏み入れた。
[メイン2] フィズ : そしてその背後では……紅く濡れた牙が太陽の光を受けて妖しく光った。
[メイン2] フィズ :
[メイン2] フィズ :
[メイン2] : 海上。波間が揺れてしぶき、波紋を描
[メイン2] : ぎちり。
[メイン2] : 突如、海水が”固まる”。
[メイン2] : 箱状に圧縮され、密度を増した海水に……
[メイン2] ナハト・ナハト : 一歩刻んで悠々と、その女は海上を歩いていた。
[メイン2] ナハト・ナハト : 足を進めるその度に、踏んだ水が箱に固められて足場になる。
[メイン2] ナハト・ナハト : 目指す先は──
[メイン2] ナハト・ナハト : 「ああ、見えた見えた。そろそろね」
[メイン2]
ナハト・ナハト :
水平線の向こうに小さな粒。
今日の戦場、数多の踊り手が集う舞台。
[メイン2] ナハト・ナハト : 願望器、とやらの噂を耳に挟んで初めに考えたことは「どんな願いを叶えるか」ではなく。
[メイン2] ナハト・ナハト : ……「どれだけの猛者がそれを求めるだろうか?」
[メイン2] ナハト・ナハト : 答えは決まり切っている。
[メイン2] ナハト・ナハト : ああ、だって……ほら、私の目に狂いはなかったようで。
[メイン2]
ナハト・ナハト :
海中に漂う、薄くも確かな赤。
漂う鉄錆びの香り。
[メイン2] ナハト・ナハト : それが一直線に、例の島へと向けて続いている。
[メイン2] ナハト・ナハト : 「ふふふ、面白そうな子が早速いそうじゃない?」
[メイン2] ナハト・ナハト : どうしても弾んでしまう足取りをそのままに。
[メイン2] ナハト・ナハト : 「ああ、どんな凱歌を奏でましょう。きっと晴れ晴れしい恐怖の味に相応しいものにしないといけないから……」
[メイン2] ナハト・ナハト : また一人、舞台に役者を揃える。
[メイン2]
ナハト・ナハト :
[メイン2]
ナハト・ナハト :
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン :
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 草木を分けながら、白衣の男が行進する
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 不思議と足跡は残らず、現世に現れた幽鬼のような軽やかさで、森林を進んでいく
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 気配を研ぎ澄まし、草木が揺れる音さえも捉えつつ、願望器を探し出す為に捜索を続けていると──
[メイン2]
フィズ :
地中から一直線に「それ」が迫る。
そして、その瞬間――
[メイン2] フィズ : 「エサの時間だぜ!」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 気配を感じるや否や、抜刀して敵に備える
[メイン2] フィズ : 鋭い牙を持つ鮫が、地中から口を大きく開けその男を飲み込もうとする。
[メイン2] フィズ : 辺りには水源など無いというのに水しぶきを上げてその魚は男を突き上げる。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「地中かっ!」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 不安定な足場にも構わず、突き上げの勢いを利用して天に舞うと──
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「疾っ!」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 一閃、落下と共に刀を振るい、サメを浅く斬りつける
[メイン2]
フィズ :
鮫は表皮から血飛沫を上げ、苦しそうに口を歪ませる。
そのまま体躯を跳ねさせて地中へと舞い戻り――
[メイン2] フィズ : 次の瞬間、男の横腹を鋭いトライデントが貫こうと迫っていた。
[メイン2] フィズ : 「やるね、あんた!」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「これは…!?」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
まず、相手の異様に目を見張りながら、トライデントへと迎撃の居合を解き放つ
瞬間納刀、瞬時抜刀
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 大きく隙を晒す居合さえ、瞬きの隙さえ許さない。完成度の怪物らしいやり方で、異国の槍を迎え撃つ
[メイン2]
フィズ :
ギチギチと金属の鈍い音が森の中に響く。
一瞬でも力を抜けば自身の身体が真っ二つになるような緊張感だ。
[メイン2] フィズ : 「まさか、いきなりアンタみたいな面白い奴と出会えるとは思わなかったぜ!」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「よもや、その体躯で私の居合を受け流すとは……」
「姿にも驚かされるが、見事な腕前だ」
[メイン2] フィズ : 「へへへ、ありがとよ!俺のシャークを見てから対処したヤツも、そうは見たことないさ!」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「…先程の技といい、槍術の冴えといい、この島独自の物なのか?」
[メイン2] フィズ : 武器はその都度角度を変え、力を込めながら会話は続く。
[メイン2]
フィズ :
「いいや、俺の槍はビルジウォーターで鍛えられたモノさ!
この島には今しがた来たばっかりだぜ!」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……なるほど、原住民か、とも思ったが」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「つまりは、願望器目当ての者か──」
或いは、選ばれたこの島へと連れ去られた生贄か…
[メイン2] フィズ : 「ああ?願望器?何だそりゃ」
[メイン2] フィズ : トライデントを握りしめながら、思わずきょとんとした声を上げてしまう。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……ふむ」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 拮抗を崩されぬよう力を込めながら、小さな魚人を見つめ思案に耽る
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「(…よもや、島にたどり着いただけの部外者か、とぼけ誤魔化しているだけなのか)」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「(事情を探る必要がある)」
[メイン2] フィズ : 「まぁ何だか知らないが……戦闘再開だぜ!」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 声に合わせ、力加減を急速に変化させ鍔迫り合いを崩すと、瞬く間に居合の構えを作り…
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
網のように緻密な剣閃を縦横無尽に解き放つ
間合いこそ剣の範囲にとどまるが、草木を細切れにしながら、確かに敵との間合いを詰めて行く
[メイン2]
フィズ :
視界全体を染めるその斬撃に息を呑む。
今までに見たことのない技だ。ワクワクするぜ――!!
[メイン2] フィズ : 「だけど、これに当たっちまったらまずいもんなぁ!!」
[メイン2] フィズ : その瞬間、トライデントが地面に突き刺さる。
[メイン2] フィズ : 柄を持ち、逆立ちで身を翻す。
[メイン2] フィズ : 確かにその生物はその空間に居る。
[メイン2] フィズ : だが、斬撃が彼を切り裂く事は無く、背後にある太く、逞しい樹木を真っ二つにするに留まった。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
真っ二つ、切り刻むことを止めたのは理由がある
明らかな隙へと油断無く切り込んだ筈が、眼前の魚人へと刃は届かず、虚しくすり抜けた
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : カウンターを警戒し、刀を構えなおそうと一歩下がる
[メイン2] フィズ : 地面に深く突き刺さったトライデントを引き抜き、再び彼と相対する。
[メイン2] フィズ : 「へへへ……流石だぜ」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……驚いたな、今の技の秘訣はなんだろうか?」
[メイン2] フィズ : 「ん~そうだな、華麗な身のこなし……ってとこかな!」
[メイン2] フィズ : ニヤリと笑い。
[メイン2] フィズ : 「さぁ、今度はこっちの番だぜ!!なぁシャーク!!!」
[メイン2] フィズ : 再び、地面が黒く染まる。
[メイン2] フィズ : そして……
[メイン2] フィズ : 地中に牙が見え、真紅の口内が開かれる。
[メイン2] フィズ : 彼が突き上げられ、再び……
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「それは、すでに拝見している」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : “気配”という曖昧な概念にて先を読み、シャークの進路に刀を置くようにして閃刀を放つ
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 勢いを利用して深く切りつけ、そのまま刀を構え直して敵へと向き直る
[メイン2] フィズ : 「ああっ、シャーク!!」
[メイン2] フィズ : その瞬間、戦闘中という事も忘れて彼はその相棒の元へ駆け出す。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「今にも己を刻まんとする敵に背を向けて見せるとはな」
[メイン2] フィズ : 「おい大丈夫か!?……致命傷では無いみたいだけど、このままじゃ戦えないな……」
[メイン2] フィズ : 「くそ~、今回は俺の負けだよ。こいつの治療をしてやりたいんだ。降参させてくれないか?」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「(彼は、このサメの為に己の命を投げ捨て心配している)」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「(ならば、彼にとってはこのサメが運命と呼べる物のかもしれない……下手に、ここで苛烈に動けば、のちの憂いとなるだろう)」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「(今は、刃を収めるとしよう)」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 無言で刀剣を収め、首肯でもって停戦に同意を返す
[メイン2] フィズ :
[メイン2] フィズ :
[メイン2]
フィズ :
……先程の斬撃の跡が残る森林から数刻の場所。
開けた場所にある湖の畔に2匹と1人は居た。
[メイン2] フィズ : 荷物から取り出した軟膏が、その鮫の傷口に塗られていく。
[メイン2] フィズ : 「しっかし、あんた強えんだなぁ~」
[メイン2] フィズ : 先程「シャーク」と呼ばれた鮫は、地中から顔を出しゆっったりと目を瞑っている。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「いや、貴公こそ見事だった、あの不思議な身の軽やかさは、目を疑うばかりだった」
[メイン2] フィズ : 「へへ、ありがとよ」
[メイン2] フィズ : 「シャークが手傷を負うなんて、もう何年も無かったから取り乱しちまったぜ」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……すまないな、いくら戦闘の最中とはいえ、危うく、貴公の友人の命を絶つところだった」
[メイン2] フィズ : 「ははは!」
[メイン2] フィズ : 「いや、おれはあんたを狩るつもりでやってたんだ。気にすることはないさ」
[メイン2] フィズ : 「はぁ~~……戦いの最中に降参なんて俺もなんというか、腑抜けてたなぁ」
[メイン2] フィズ : パチパチと火を吹く焚き火に目をやる。
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「友の命が危機に晒され、不安に慄かぬ方が人手なしと言えるだろう」
「貴公は人として正しい行動をしたのみだ」
[メイン2] フィズ : 「そうはいかないさ。自然ってのは殺るか殺られるかしかないもんだしな」
[メイン2] フィズ : ペシペシ、と顔を叩く。
[メイン2] フィズ : 「よし、気合い入れ直した!今度はどっちが死んでも最後まで相手と楽しむ事だけを考えないとな、シャーク!」
[メイン2] フィズ : きゅううう……とシャークも声を上げる。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……自然の戦士か、なるほど」
[メイン2] フィズ : 「そういやあんたはさっき『願望器』とか言ってたな。それって何なんだ?」
[メイン2] フィズ : シャークの方から、彼の方へ向き直り問いかける。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……貴公は、知らぬ方が良いかもしれない、この島にいるだけでも、危険が迫るだろうからな」
[メイン2] フィズ : 「ははははは!!!」
[メイン2] フィズ : 「何言ってんだ、危険なんて今しがた体験したばっかだろ?」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……これ以上の物が、迫る危険性があるということだ、それでも、貴公……ああ、そういえば」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「私の名は、ウィリアム・ベルグシュライン。失敬、名乗りが遅れたな」
[メイン2] フィズ : 「ああ」
[メイン2] フィズ : 「俺はフィズ!こいつは相棒のシャークさ」
[メイン2] フィズ : エラのある左手で、ヌルヌルと黒光りする肌を叩いて伝える。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「そうか、良い名だ」
[メイン2] フィズ : 「んでだウィリアム、危険が迫るって事は強いヤツも居るってコトだろ?」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「ああ、この島には世界中からさまざまな者が向かってきている」
[メイン2] フィズ : 「その願望器ってやつが目当てか?」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「そうだろうな、生贄さえあれば、願いが叶うと聞けば皆確保する為にここへ来るだろう」
[メイン2] フィズ : 「ふぅん、生贄ねぇ……」
[メイン2] フィズ :
[メイン2] フィズ : 水中に潜り、我が故郷の海を泳いでいる時の事を思い出す。
[メイン2] フィズ : 船影から垂らされる魚の瞳が脳裏に浮かぶ。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……願い、に対して思うところはないのか?」
[メイン2] フィズ : 「願い?ああ……多分、生贄を捧げれば何でも願いが叶うとかだろ?」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「ああ、その為に、関係のない者も巻き込まれているらしい」
[メイン2] フィズ : 「それが生贄か」
[メイン2] フィズ : 「ん~~」
[メイン2] フィズ : シャークの肌を撫でながら、頭上を見上げ言う。
[メイン2] フィズ : 「なんつーかさ、誰かの力で成し遂げるより、自分達の力でやった方が楽しいんだよな」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……達成感がある事は、そうかもしれない」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「支えられ、支え合い、積み重ね……当然の如く続けられるそれは効率的で、素晴らしい物だが……」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「己一人で成す、そういった価値観とは、別の物なのかもしれないな」
[メイン2] フィズ : 「ま!俺の価値観ってやつよ」
[メイン2] フィズ : 「そういや……あんたはその生贄に対して思う所とかあんのか?っていうか何か願いとかあるのか?」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「私からの願いはない、生贄に対しても、感慨は無いと言える」
「……この島で、血が流れる事はほぼ確定しているからな」
[メイン2] フィズ : 「なんだよ、願いが無いのにこの島に来たのかい?」
[メイン2] フィズ : 「ってまぁ俺も同じだけどな!はははは!!」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……そうか、奇遇、と呼ぶのだろうな」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : ほんの少し微笑むと、焚き火に小枝を放る
[メイン2] フィズ : 「ははは!奇縁ってやつか?」
[メイン2] フィズ : 「そうだな……折角焚き火があるのに何も肴が無しってのもアレだからな」
[メイン2] フィズ : そう言うと、彼は湖の方へ向き直り、「よっしゃ!」と言いながら水中に飛び込んで行く。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……ああ、頼む」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「(……己で掴むことを選ぶか)」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「(思えば、私が運命を探し始めた理由も、主命の一つに過ぎなかった)」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「(……それ故かも、しれない)」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「…やり方を、己で探り当ててみるべきなのかもしれないな」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン :
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン :
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン :
[メイン2] 譲崎ネロ : 無我夢中で走り続けた。
[メイン2] 譲崎ネロ : 戦いから逃げるために、この手にある、守りたい命を守るために、全力で。
[メイン2] 譲崎ネロ : そうしている内に、気がついたら僕らは、市街地に飛び出していた。
[メイン2] 譲崎ネロ : 森を抜けることに成功した。
[メイン2] 譲崎ネロ : 僕らは喜んだ。やっと帰ることができるという期待を胸に。
[メイン2] 譲崎ネロ : ……しかし。
[メイン2] 譲崎ネロ : その街には、人ひとりもいなかった。
[メイン2] 譲崎ネロ : どこを歩いても、もぬけの殻。
[メイン2] 譲崎ネロ : 近くにあった公衆電話を使おうとするも、一向に繋がる気配は無く。
[メイン2]
譲崎ネロ :
そこに日常風景が広がっているにも関わらず、非日常的空間となっており
それが一層、不気味さを引き立てていた。
[メイン2] 御坂妹 : 「……」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……っかしいな……どうなってるんだここ……?」
[メイン2] 譲崎ネロ : 頭をガシガシと掻きながら。
[メイン2] 御坂妹 : 「……見たところ、すでに使われていないというか…放棄された一角のように見えますね。…それより」
[メイン2] 御坂妹 : たん、とネロの頭を軽くチョップする。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「あいだっ……!?」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「な、何すんだよミサカ~~~~~!?!?」
[メイン2] 御坂妹 : 「はぁ…馬鹿なんですか。本物の馬鹿なんですか」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「んなっ!?ば、馬鹿だとぉ~~~!?」
[メイン2] 御坂妹 : 「…ミサカの言ったことを聞いていましたか? よした方がいいと」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「…………」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……聞いてたよ、でも……でも……」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……あの『願望器』が無ければ、みんな争わなくて済むっていうのは、間違いじゃない………そうだよね……?」
[メイン2] 御坂妹 : 「……まぁ、はい」
[メイン2] 御坂妹 : なんというか……まっすぐすぎますね。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「だから!……僕は、そうしようと、思って……」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「………軽率な発言だったのは、分かってるよ」
[メイン2] 譲崎ネロ : 人差し指同士をツンツンとさせながら。
[メイン2] 御坂妹 : 「……でも、例えば……そうですね、サスケさん…でしたっけ、彼の方の願いを聞いて我々が解決もとい協力できるなら、手を組む選択肢だってあったわけじゃないですか」
[メイン2] 御坂妹 : ……まぁ、その程度のことで解決できるのはありえない話ですが。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「んぐっ……!?それは……確かに………」
[メイン2] 譲崎ネロ : 段々と、落ち込んでいく表情に。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……ごめんなさい」
[メイン2] 御坂妹 : 「……まぁ、でも」
[メイン2] 御坂妹 : 言葉を切って。
[メイン2] 御坂妹 : 「ミサカは、嬉しかったです。あなたに守ってもらえたこと…とても」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「…………!!……ミサカ……」
[メイン2] 譲崎ネロ : その言葉に、思わず頬が緩んでしまう。
[メイン2]
譲崎ネロ :
「………んへへ」
照れ笑いを見せながら。
[メイン2]
御坂妹 :
「……しかし」
少し崩した表情を戻し。
[メイン2] 御坂妹 : 「今度から突っ走る前に相談してください…と、ミサカは説教を締めくくります」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「ぐっ………!!!」
[メイン2] 御坂妹 : ふぅ、と息を吐く。
[メイン2] 譲崎ネロ : 何も、言い返せない……正論・オブ・正論……!!
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……は~い……」
[メイン2] 御坂妹 : 「いい返事です」
[メイン2]
譲崎ネロ :
「……え、えっと、えっと、じゃあ……相談!」
手を上げ、ミサカの方を見て。
[メイン2] 御坂妹 : 「?」
[メイン2] 譲崎ネロ : そうして、辺りを見渡し。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「この街に、もしかしたら『願望器』があるかも、だから……もっと色々探索、したい!」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「あ、それと、ほら!『願望器』を壊すための機器とかも、集めたい!あとあと……お菓子も!」
[メイン2] 御坂妹 : 「……成程、そうですね。この地が未開であるならば、十分な探索がなされていない可能性も…」
[メイン2]
譲崎ネロ :
「ふふ~ん、そうでしょ~!」
ドヤ顔を見せながら。
[メイン2]
御坂妹 :
「はい、ミサカはその意見に同意します」
ドヤ顔にも無反応にこくりと頷いて。
[メイン2]
譲崎ネロ :
「よ~~し!それじゃあ……レッツラゴ~!!」
拳を掲げ、ズンズンと進んで行く。
[メイン2]
御坂妹 :
「れっつらごー…?」
その後ろに寄り添うようについていく。
[メイン2]
御坂妹 :
[メイン2] 御坂妹 : ……見失いました。
[メイン2] 御坂妹 : ミサカは細心の注意を払ったつもりでしたが……あの有り余る原動力というか、若さというか…そういったものは、少し羨ましくも思いますが。
[メイン2] 御坂妹 : まぁ、いざとなれば向こうの『金属探知機』でこっちの武器に気付いてくれるでしょうし……こっちには、『あれ』で生体探知する方法もありますし。
[メイン2] 御坂妹 : この後どれだけの戦いが待っているかわかりませんし…今は一度息をつき休息を取るのが正解か、とミサカの脳内細胞が囁くので。
[メイン2] 御坂妹 : 適当な砕けた石造りの壁に座り込もうとした━━そのとき。
[メイン2] フィズ : 不意に太陽が雲に隠れた気がした。
[メイン2] 御坂妹 : (…………。…雨、でしょうか)
[メイン2]
フィズ :
石造りの上から飛び込む影。
トライデントを獲物に構えたその生物は、一直線に急降下していく。
[メイン2] 御坂妹 : ピリ。
[メイン2]
御坂妹 :
「……っ!」
自身の周りに自動的に張り巡らされた電磁波がそれをキャッチして、反射的に身を捻る。
[メイン2] フィズ : 「っとぉ……やるね!」
[メイン2] 御坂妹 : 「……」
[メイン2] 御坂妹 : 「……挨拶もなし、でしょうか……と、ミサカは自身の育ちの良さをアピールします」
[メイン2] フィズ : 「おいおい、育ちの良さだって?」
[メイン2] フィズ : 「俺の一撃をそんな躱し方する奴が、良い子ちゃんなわけない……だろっ!」
[メイン2] フィズ : 再び槍を構え、彼女の懐に飛び込む。
[メイン2] フィズ : 目にも留まらぬ速度で、一瞬の内に彼女の足元へ辿り着き……
[メイン2]
御坂妹 :
「……」
素早く臨戦体制を取り。
[メイン2] 御坂妹 : が、と足払いの要領でそれをいなす。
[メイン2] 御坂妹 : 「……敵と看做してよろしいようで」
[メイン2] フィズ : 足払いをバックステップで躱し、少しの距離を取る。
[メイン2] 御坂妹 : がちゃり、とライフルを取り出し。
[メイン2] フィズ : 「ははは……!!!」
[メイン2] フィズ : 「やっぱこの島は面白いぜ!!」
[メイン2] 御坂妹 : (……一人のところを……しかし、この程度なんとかできないならば、この先も…)
[メイン2] 御坂妹 : 「人類には未開の地でも両生類にとってはパラダイスかよ、とミサカは嘆息します……っと」
[メイン2] 御坂妹 : ぱん、ぱん、ぱん。
[メイン2] 御坂妹 : 息をつく暇もなく、銃声をその敵に響かせる。
[メイン2] フィズ : 「へへへ!ピストルって奴だろう?前にフォーチュンの奴が使ってるのを見たぜ!」
[メイン2] フィズ : 小柄な体躯を活かし、すばしっこくその凶弾を躱していく。
[メイン2] 御坂妹 : 「……成程、一筋縄ではいかないと」
[メイン2] 御坂妹 : 「……しかし、分析は完了。攻撃手法がそのトライデントのみならば、接近しなければこちらに分があると判断します」
[メイン2] 御坂妹 : そう言い切ると、素早く背を向け……疾走。
[メイン2] フィズ : その姿を見て、自然と口角が上がる。
[メイン2] フィズ : 「エサの時間だぜ……シャーク」
[メイン2] 御坂妹 : 「……?」
[メイン2] フィズ : そう小声で呟くと、彼女の足元に追尾する黒い影が生まれる。
[メイン2]
フィズ :
彼女がそれに気付いた瞬間、地中から巨大な「シャーク」が顔を出す。そして……
[メイン2] 御坂妹 : あの『敵』、足を止めた……?……となると、考えうるのは……ッ…!
[メイン2] フィズ : ガブリ!!!
[メイン2] 御坂妹 : 「……ぐッ……!!?」
[メイン2] 御坂妹 : 反応が遅れる、あるはずもない……地中からの攻撃に。
[メイン2] フィズ : 「さっきは喰わせてやれなかったもんなぁ!!!」
[メイン2] 御坂妹 : 左足から溢れる飛沫がぴしゃり、と宙を舞う。
[メイン2] 御坂妹 : 「この……ッ!」
[メイン2] 御坂妹 : 患部を庇いながら、座ったまま引きずるように後ずさる。
[メイン2] フィズ : 動きの鈍った彼女を見て、後は止めだと言わんばかりに槍を片手に飛び込む。
[メイン2] フィズ : いくらフィズの跳躍力が高いとはいえ、離れた彼女に飛び込むにはステップを踏む必要がある。
[メイン2] フィズ : 一呼吸置くために足を地面につけた瞬間……
[メイン2]
御坂妹 :
「……ええ、やはり。想像の通りでした…接近しなければ」
ぼそぼそと。
[メイン2] 御坂妹 : 「あなた自身が、接近しなければなりませんから━━と、ミサカは宣言します」
[メイン2] フィズ : 「何だって?―――」
[メイン2] 御坂妹 : 瞬間。
[メイン2] 御坂妹 : 意趣返しと言わんばかりに、地中から━━━━爆音!
[メイン2] フィズ : 「うおっ……!!」
[メイン2] フィズ : 爆風がフィズを押し上げ、暴力の熱が襲う瞬間!
[メイン2] フィズ : トライデントを地雷に突き立てる。
[メイン2] 御坂妹 : けほん、と咳き込み。
[メイン2] フィズ : そして、数瞬の後、爆炎が消え……その中には。
[メイン2]
御坂妹 :
「文字通り、『地雷を踏んだ』……と言ったところでしょう……か?」
徐々に晴れる煙を眺めながら、その光景に唖然とする。
[メイン2] フィズ : 「ったくびっくりさせやがって……」
[メイン2] フィズ : 「ははは!!」
[メイン2] フィズ : 無傷のフィズの姿があった。
[メイン2] 御坂妹 : 「……ムチャクチャですね、象だって一撃で持っていく火力のはずなんですが」
[メイン2] フィズ : 「ま、喰らってたら俺もやばかったよ……タネは秘密だぜ?」
[メイン2]
御坂妹 :
「……」
トライデントによる衝撃吸収か、傷の転移か……しかし、そんなことを考えている余裕はなかった。
[メイン2] フィズ : 「さぁ、止めだ!!!」
[メイン2]
御坂妹 :
「……!」
ライフルを苦し紛れに構えるも。
[メイン2] フィズ : そのまま再び跳躍をして彼女の懐に飛び込む。
[メイン2] フィズ : 「あんたがいる場所で爆発させたら……自分もおしまいだもんな?」
[メイン2] フィズ : トライデントを構え、彼女の腹部に突き刺し―――!
[メイン2] 御坂妹 : 「……ぐッ……!」
[メイン2] 御坂妹 : 直撃……とはいかないまでも、その一撃は彼女の脇腹を貫通するには十分だった。
[メイン2] 御坂妹 : 「がは……ッ!?」
[メイン2] 御坂妹 : 虚ろな目で血を吐き出す。
[メイン2] フィズ : 「ちっ、急所は外したか……まぁいい!!これで獲物は捕らえたぜ!!!」
[メイン2] フィズ : トライデントを引き抜き、揺れる彼女の胴体を今度こそ貫こうとする!
[メイン2] 御坂妹 : がしり。
[メイン2] 御坂妹 : ━━硬く握り締められた手は、まるで刺さっていて欲しいかのようにそれを妨げる。
[メイン2] フィズ : 「これでおしまいだぜ~~~!!!……っ!?」
[メイン2] 御坂妹 : 「……重ね重ね、感謝いたします。私の考え通り、接近してくれたこと。……そして、このトライデントを……ミサカに突き刺して、使えなくしてくれたこと」
[メイン2] フィズ : 「くそっ……動かない!!」
[メイン2] 御坂妹 : 「……ええ、それでは。この打ちつける痛みのもとに……」
[メイン2]
御坂妹 :
[メイン2]
御坂妹 :
[メイン2]
御坂妹 :
[メイン2] 御坂妹 : 「『幻想』を破壊して、差し上げましょう」
[メイン2]
御坂妹 :
[メイン2]
御坂妹 :
[メイン2]
御坂妹 :
[メイン2] 御坂妹 : 刹那、電流が自身を……そしてフィズの全身を迸る!
[メイン2] フィズ : 「これっ……はぁ……!!ぐぁぁぁぁあああ~~~~!!!!」
[メイン2]
フィズ :
彼女から発せられる青白い光に包まれ、自身が激しく揺らぐ。
脳がチカチカと危険信号を上げ、肌は黒く焦げ付き始め、視界は白黒に染まる。
[メイン2] フィズ : 今にも倒れそうになる痛みが、無限と思える程に続く。
[メイン2]
御坂妹 :
「…………………………っ…!!…はぁ……はぁ…」
やがて息を切らすように、構えた手を下ろす。
[メイン2] 御坂妹 : 「…………と、ミサカは柄にもなく少々格好つけてみます……っ」
[メイン2] フィズ : ぷす……ぷすと煙が身体から登る。
[メイン2] フィズ : だが槍は離さなかった。
[メイン2] フィズ : そのまま一歩、ニ歩と足を後ろに下げ……
[メイン2] フィズ : 「ぁ……はぁ……っぁ……!!!」
[メイン2] 御坂妹 : 「……逃がすか……ッ!!」
[メイン2] 御坂妹 : 懸命に踏み出した足で、脇腹の痛みを誤魔化しながら。
[メイン2] 御坂妹 : 全身全霊の電撃を浮かべた『右手』に捧げ━━
[メイン2] 御坂妹 : 「━━っだぁああアアアアアアアッッ!!!」
[メイン2] 御坂妹 : その心臓の在るべき場所に撃ち込むッ!
[メイン2] フィズ : その瞬間、フィズの身体は金色に光った。
[メイン2] 御坂妹 : 「…………あ……?」
[メイン2] フィズ : 左手は、彼が首元に下げた砂時計に触れている。
[メイン2] フィズ : 柔らかいはずの皮膚は黄金の硬さに包まれている。
[メイン2] 御坂妹 : 「……」
[メイン2] 御坂妹 : (……ムチャクチャです。なんなん……ですか、それ……)
[メイン2] 御坂妹 : 一瞬、ネロの無事が頭に過ぎるも……しかし。
[メイン2] 御坂妹 : そんな小さな意識さえ、どうしようもないほどの絶望に━━飲み込まれる。
[メイン2] フィズ : 数秒の後、輝きが失われて元の所々焦げ付いた身体に戻る。
[メイン2] フィズ : 「へへ……切り札は最後まで残しておくもん……だってな」
[メイン2] フィズ : 「やれ……シャー……ク」
[メイン2] フィズ : 御坂の足元に黒い影が落とされ、その口が開かれようとする瞬間……
[メイン2]
譲崎ネロ :
「─────させるかァァアアアッッ!!!」
ブースター機能を備えた機械仕掛けの靴を噴射させ。
[メイン2]
譲崎ネロ :
ゼツボウ
今にも、"波" の中に飲みこまれんとするミサカへ、手を伸ばし。
[メイン2] 御坂妹 : 「………………ネロ、さ……」
[メイン2] 譲崎ネロ : 『超電磁砲』の如く。
[メイン2] 譲崎ネロ : 豪速でミサカのもとへ向かう。歯牙の脅威から救うために。
[メイン2] フィズ : 思考の外からの介入者に、頭をハンマーで殴られたかのような衝撃が走る。
[メイン2] フィズ : (あ……?なん……だ、こい……つ)
[メイン2] フィズ : (今にもシャークが牙を剥くって時に来るなんて、明らかに戦闘慣れしてない……)
[メイン2] フィズ : (あ、そういや……ウィリアムのやつ言ってたな……)
[メイン2] フィズ : (関係ないヤツも巻き込まれてる……生贄って)
[メイン2] フィズ : 船影から垂らされる魚の瞳が脳裏に浮かぶ。
[メイン2] フィズ : 「やめ……と……け シャー……ク」
[メイン2] フィズ : 口を広げた鮫はそのまま地中に潜り、その生き物はバタリと倒れた。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「………!」
[メイン2] 譲崎ネロ : ミカサが、"海の藻屑"にならずに、済んだ。
[メイン2] 譲崎ネロ : それでも、ネロは止まらない、傷ついた彼女のもとへ。
[メイン2]
譲崎ネロ :
「ミサカ……!!!」
ボロボロになったミサカを、抱き締める。
[メイン2] 御坂妹 : 「…………ぅ」
[メイン2] 御坂妹 : 辛うじてぱちぱち、とまばたく。
[メイン2] 御坂妹 : 「……申し訳……ありません。…また、助けられて……しまいました」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……!! そんなの……こっちこそ……!!僕、僕……!!ミサカを、守るって、言ったのにッ………!!」
[メイン2] 譲崎ネロ : 己の不甲斐なさに、無力さに苛まれる。
[メイン2]
譲崎ネロ :
「……ごめん……ごめんッ……!!」
ボロボロと、涙がミサカの頬に、点々と落ちる。
[メイン2] 御坂妹 : こぼれ落ちる涙が、優しく頬をくすぐる。
[メイン2]
御坂妹 :
「……いえ」
少し表情を崩して。
[メイン2] 御坂妹 : 「……この身体は…ミサカ、一人でも……問題ないと、判断した……ミサカの、責任です。……それに」
[メイン2] 御坂妹 : 「こうして、ちゃんと……守って、いただけたでは、ないですか。」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「っ………!!……ミサ、カ………」
[メイン2] 譲崎ネロ : ………君は、本当に……どうして、ここまで、優しいんだ……。
[メイン2]
譲崎ネロ :
……ごめん、ごめんよ、本当に……次こそ、次こそは、絶対に、僕は……
君を、守り抜く……傷一つ、つけない………!!
[メイン2]
譲崎ネロ :
「……ミサカ、少し、待っててくれる、かな……?」
ミサカをお姫様抱っこで持ち上げ、そのまま近くにあったベンチへ運ぶ。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「すぐに、戻る……すぐに、治療するから……」
[メイン2] 御坂妹 : 「…………あ」
[メイン2] 御坂妹 : ……意外と、力持ちでなさったんですね。…と、ミサカはネットワークの記載を改めます。
[メイン2] 譲崎ネロ : そうして、フィズの方へ振り向く。
[メイン2] 譲崎ネロ : ミサカを傷つけたヤツ。そして……。
[メイン2] 譲崎ネロ : ……ミサカを殺すのを、止めてくれたヤツ。
[メイン2] 譲崎ネロ : その真意は、分からない……だからこそ、僕は、知らないといけない。
[メイン2] 譲崎ネロ : 『真実』を、知らないといけない。
[メイン2] 譲崎ネロ : だって、僕は─────『探偵』だから。
[メイン2] 譲崎ネロ : 怒り、そして復讐で、やり返しても……それは、『探偵』の在り方じゃない。
[メイン2]
譲崎ネロ :
言葉だ。僕は………確かに、頭は悪いかもだけど……。
それでも、知る。
[メイン2] 譲崎ネロ : そうして、フィズの方へ歩む。
[メイン2] 譲崎ネロ : 若干の、険しい表情を浮かべながら。
[メイン2]
譲崎ネロ :
「……君は一体……何者、なんだ……?……一体、何がしたかったんだ?」
フィズの瞳を、じっと見つめる。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……君"も"、『願望器』のために……?」
[メイン2] フィズ : 「願望器……?」
[メイン2] 譲崎ネロ : 頷く。
[メイン2] フィズ : げほ、げほと咳き込みながら答える。
[メイン2] フィズ : 「興味……ないね」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「…………え……?」
[メイン2] 譲崎ネロ : その答えに、僕は、アイツの姿が浮かぶ。
[メイン2] 譲崎ネロ : 最初に出会った、あの優しそうだったお姉さん。
[メイン2] 譲崎ネロ : ナハト・ナハトの姿。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「………じゃあ……君"も"……戦うことだけが理由で、ここに、いるんだね……?」
[メイン2] フィズ : 「ま……そんな、とこ……かな……」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……それじゃあ、どうして……さっき、どうして、止めてくれたの」
[メイン2] 譲崎ネロ : ミサカを襲おうとした、脅威を、この生物は止めた。
[メイン2]
譲崎ネロ :
ナハトナハト
"恐怖"とは違う。同じ理由でこの地にいると言えど、この生物は、何かが違う。
[メイン2] フィズ : 「なぁ……あんた、多分ここに何も知らず連れてこられたん……だろ?」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「………ん……そうだよ、僕は……僕とミサカは、誘拐されて、ここに来た」
[メイン2] フィズ : 「へへ、そうか……あいつもか。にしちゃああいつは強かった……な」
[メイン2] フィズ : 「おれは……自分の願望は……自分で叶えてえ。生贄を使って叶えるとかそういうのは嫌いって……だけさ」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「………」
[メイン2] 譲崎ネロ : 自分の願望は、自分で叶える。
[メイン2] 譲崎ネロ : それは奇しくも……ネロが考えていたものと、同じだった。
[メイン2] 譲崎ネロ : それなら……。
[メイン2] 譲崎ネロ : 目を、ぎゅっと閉じ……。
[メイン2] 譲崎ネロ : そして、また開く。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「─────それなら、『交渉』をしよう」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……僕の名は、譲崎ネロ。……『探偵』だよ。」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「そして──────────『願望器』を壊す、そのために……僕は……それを探している」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……へへ、僕も……ズルして叶えたい夢は、もちろんあるけどさ」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「………『願望』を叶えるために、傷つけ合うのは……僕、嫌だなって、思ってさ」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……こんなこと、戦いが好きなキミに言っても、しょうがないと言えば、しょうがない、かな……?」
[メイン2] フィズ : 「……だな。戦いを止める気は……ない、ぜ」
[メイン2] フィズ : 「お前らとはまぁ……戦いはしないかもだけどな」
[メイン2] フィズ : 「で……?交渉だな」
[メイン2] フィズ : 「俺はなに……を、すりゃいいんだ?」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……僕と、僕らと一緒に……『願望器』を、壊してほしい」
[メイン2] フィズ : 「壊す……ね」
[メイン2] 譲崎ネロ : 強く、頷く。
[メイン2] フィズ : 「まぁ……この状況で断るのは出来ねえ。いいぜ」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「………!」
[メイン2] フィズ : 「だが一緒にってのは勘弁してくれ……」
[メイン2] フィズ : 「あんたらと一緒じゃ俺の生き甲斐が奪われちゃいそうだぜ」
[メイン2] フィズ : 「傷つけ合うのは嫌……だっけな」
[メイン2]
譲崎ネロ :
「……ん……」
頷く。
[メイン2] フィズ : 「俺は俺のやり方でやらせてもらう……それでいいかい?」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「………」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……わかった……それで、いいよ」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……それなら、一つ……忠告、っていう程じゃないけど……」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「─────君と、同じ戦う理由を持って……君と、異なる価値を持つ、"恐怖"が……この島にいる」
[メイン2] 譲崎ネロ : フィズに、そう告げ、踵を返す。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「………気を付けてね……その人は……"箱"の『トイズ』を使って、襲い掛かってくる。まるで、手品みたいに……。」
[メイン2] フィズ : 「箱、ね……ありがとよ」
[メイン2] フィズ : 「そうだ」
[メイン2] フィズ : 「あんたら……良いコンビだと思うぜ。探偵と助手……ってやつ?」
[メイン2] フィズ : そう言って、彼は目を閉じ休息に入った。
[メイン2]
譲崎ネロ :
「……ん、ありがと」
背中を向けながら、そう返し。ミサカのもとへ戻り、また、お姫様抱っこをし、どこか休息できる場所へ、治療を行いに向かう。
[メイン2] 譲崎ネロ : ……探偵と助手……か。
[メイン2] 譲崎ネロ : ミサカの顔を見て。
[メイン2] 御坂妹 : 「……どうかしましたか」
[メイン2] 譲崎ネロ : ……へへ。なんだか、良いかも。
[メイン2] 譲崎ネロ : その問いかけに。
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……ううん、何でもないよ、ワトソン君 ……なんつって。」
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ : にへらと笑ったのであった。
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ : そうして、近くにあった、誰もいないファミレス内へと入り。
[メイン2] 譲崎ネロ : 応急手当を終えたところの、探偵と助手。
[メイン2]
譲崎ネロ :
「……これでよし!……だよね……?」
少し下手っぴな結び方で、ミサカに包帯を巻き終える。
[メイン2]
御坂妹 :
「……ええ、ありがとうございます」
自分が先程ネロに施したことを、自らの身で感じつつ。
[メイン2] 御坂妹 : 「よければ、温かい紅茶も添えていただけると……と、ミサカはおねだりしてみたり」
[メイン2]
譲崎ネロ :
「……!!紅茶だね!うん、分かった!待っててね!!」
いそいそと、厨房の方へ向かう。
[メイン2]
御坂妹 :
「……冗談のつもりだったのですが」
ぽつんと一人呟いて。
[メイン2] 御坂妹 : ……側から見る彼女の気持ちは、とてもまっすぐで、堅固で……それでいて、ともすれば一瞬で崩れ落ちてしまいそうなほどに……危ういバランスの上に成り立っていて。
[メイン2] 御坂妹 : そんな冗談で誤魔化さなければ、ミカサにはまっすぐな彼女は直視できなかったのでしょう……と、ミサカは回顧します。
[メイン2] 御坂妹 : ……ふと、ドアを見て。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 錆びついたモーターの音が鳴り、来店音はセンサーが壊れているのか無音に徹する
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 開いたドアを潜り、白衣の騎士が古びたファミレスにへと異物の如く現れた
[メイン2] 御坂妹 : 「………!」
[メイン2]
御坂妹 :
(……っ…)
警戒を向けるも、脇腹の傷がズキズキとそれの邪魔をする。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……貴公も、傷を負っているようだな」
[メイン2] 御坂妹 : 「……」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
整然とした立ち姿に、動揺は無い
しかし、再生こそ続いているが、神との戦闘の傷が未だに残っている
[メイン2] 御坂妹 : 「……傷を負っている者を見逃してもらえるとは、情け深いお言葉ですね…と、ミサカは解釈します」
[メイン2] 御坂妹 : 一方で、毅然とした緊張は崩さず。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……そうか、貴公が生贄の者か」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 目を閉じ、少しすると厨房へと顔を向ける
[メイン2]
御坂妹 :
「……」
無言をその返事に代え。
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「……二人か」
「貴公の方が戦い慣れているようだが、彼方にも不思議な気配を感じる」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「(……神でさえ、あの忍びでさえ、俺に答えを齎すことは無かった)」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「(やはり、所詮我が身は刀剣、なんの物語を持つ資格はないのかも知れん……)」
「(……願望器、それを持ってしてでしか、叶わぬ夢なのかも知れないな)」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……向こうの淑女は、貴公が用意した生贄なのだろうか?」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 厨房を指さすと、低い声で呟く
[メイン2] 御坂妹 : 「……」
[メイン2] 御坂妹 : 「……何故そう考えたのか、お聞かせいただいても?」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「願望器の使用には生贄が必須だ」
「ならば、情けを通じ利用できる相手を確保してもおかしくは無い」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 淡々と、ベルグシュラインは効率だけを口にする
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : なんの物語も持たない、当たり前に強いだけの男。そんな男は、二人の間にある物を、カケラも理解できていない
[メイン2] 御坂妹 : 「……成程。ならば、私からお返しできる言葉は…このようなものでしょうか」
[メイン2] 御坂妹 : 「━━あなたは、助手には向いていませんね」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「……ああ、所詮我が身は刀剣だ」
「道具に、助手は務まる筈はない」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「一刻、貴公と私に似た物を感じた気もしたが……思い違いだったな」
[メイン2] 御坂妹 : 「…つまり。あなたはあくまで上のものに利用される立場だということでしょうか…と、ミサカは投げかけます」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「“使用”とも言い換えていい、大恩ある主人に使える事に不満はない、が……」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「私は、なんのドラマも持っていない」
「人としてあるべき苦難や、障害を味わったことが無い」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「悩まない、躊躇わない、苦しまない、傷つかない」
「ただ、ただ利便性の高い存在。それが私だ」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……そうある事に、ほんの少し、違和感を覚えただけだった」
[メイン2] 御坂妹 : 「……ふむ」
[メイン2] 御坂妹 : 「ならば、それがあなたの『願望』…といったところでしょうか」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「肯定しよう、他の者に比べれば、火花に等しい程度だが……」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「私の願望は、道具から人間に成る事と言える」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……名乗り遅れたな」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「私の名はウィリアム・ベルグシュライン、名の価値を持たない刀剣だ」
[メイン2] 御坂妹 : 「ミサカの長い人生経験の中でも、人様以外とお話しするのは初めてかもしれませんね……いえ、つい数刻前に経験したんでしたっけ」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……ほう」
[メイン2]
御坂妹 :
「……まあ、取るに足らない話です。それより」
ちらり、と先程の戦闘が過ぎるも。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……ああ、すまない。一方的に話していたな。貴公の番だ」
[メイン2] 御坂妹 : 「……では、僭越ながら」
[メイン2] 御坂妹 : 「あなたのおっしゃっていた通り、あなたとミカサは似たものだったのでしょう。……すなわち、以前までのミカサならば」
[メイン2]
御坂妹 :
「あなたが人ではないというのと同じ、ミカサも━━検体番号一〇〇三二号も人に作られた存在です」
「物語に組み込まれ、決められた生と死とを辿るだけの存在でした」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……しかし、今の気候は違う」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「自らの物語を勝ち取り、見事に己を体現している」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……私から見れば、眩しすぎる程だ」
[メイン2] 御坂妹 : 「…ええ。だから、あなたは助手たりえないとミサカは申し上げたのです」
[メイン2] 御坂妹 : そう言うと、おもむろに胸ポケットに手を突っ込み。
[メイン2] 御坂妹 : 「この程度の痕跡も見逃すとは、探偵助手失格ですから」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「…!」
[メイン2] 御坂妹 : ひらひら、と潰れてぺしゃんこになった麩菓子の袋を取り出す。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……それが、貴公が人間へと成りえた鍵なのだろうか?」
[メイン2] 御坂妹 : 「ご存知ですか?」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……匂いから察するなら、甘味の類の入れ物か」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……しかし、そこに何が宿っているかは、理解できていない」
[メイン2] 御坂妹 : 「そうですね」
[メイン2] 御坂妹 : 「実験動物として生まれてきたミカサが意味を持てるのは……こんなミカサにも対等に」
[メイン2] 御坂妹 : 「苦難や障害を支え合い、悩みや傷を分かち合える」
[メイン2] 御坂妹 : 「━━そんな『友達』が、ミサカの横にいてくれるから……です。」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「────なるほど」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 対等に向き合う、その概念はベルグシュラインの内心に、確かな答えを映し始めた
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : これまでの人生を振り返れば──
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
言ってしまえば、ベルグシュラインは誰かを欲した事がなかった。
必要がないから、と向き合って来たことは無かった
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 優秀さ故、そして、使われるべき主人も決まっていたが故、対等と評価できる存在に、巡り会えなかった……いいや、否
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「他者に真っ当に向き合わぬ阿呆が、見逃していただけか……」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 孤高の騎士は寂しげに呟くと、またミサカへと目を向ける
[メイン2] 御坂妹 : 「……晴れたでしょうか、航路は」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……これから、となるだろうな」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
今までのベルグシュラインであれば、答えを得た事と、主命は別物
生贄を確保して願望器へと向かっただろうが……
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……フィズ、どうやら貴公の価値観が正しかったようだ」面白そうに小さく呟く
[メイン2] 御坂妹 : 「……そうですね。……いえ……答えに辿り着いたあなたならば、見つけられるはずです━━きっと。」
[メイン2]
御坂妹 :
ひと
「自身を変える、『運命』の相手が。」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……ああ、この鈍に見合う者がいるかはわからないが、全力を尽くそう」
[メイン2] 譲崎ネロ : そうして厨房から、紅茶を片手に一人の少女が現れ。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……うおっ……!?」
[メイン2]
譲崎ネロ :
ミサカとウィリアムが対峙してるのを見て。
でも、そこの間に亀裂のようなものは、一切感じられず。
[メイン2] 御坂妹 : 「……っと」
[メイン2]
譲崎ネロ :
「……ど、どう、も……?」
ぺこりと、ウィリアムへ頭を下げつつ。
ミサカのテーブルへ紅茶を置き、ミサカの横に立つ。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「私の名は、ベルグシュライン……貴公の敵としてここにやって来た」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「…………………」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「そして、今しがたミサカに説き伏せられた者だ」
[メイン2] 譲崎ネロ : 敵。という言葉を聞いてもなお、ネロは……。ウィリアムを、じっと見て。
[メイン2] 譲崎ネロ : そして続く言葉に、頬が緩む。
[メイン2]
譲崎ネロ :
「……へへ、やるじゃん、助手」
ミサカに、ウインク。
[メイン2]
御坂妹 :
「あなたの助手ですから、探偵さん」
ぱちぱちと無表情にまばたきを。
[メイン2] 譲崎ネロ : その答えに、ネロの表情に少し入った緊張が完全に溶け。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……それじゃあ……あなた"も"、僕らと一緒に」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「─────『願望器』の破壊……手伝ってくれるの?」
[メイン2] 譲崎ネロ : ウィリアムの瞳を、じっと見る。
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「……否だ」
申し訳なさを滲ませ、言葉を告げる
[メイン2] 譲崎ネロ : 「………ん、そ、っか」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「任務を放棄した上で、これ以上この島に留まる事は主への不義理となる」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……何よりも、貴公達の旅路に、私は必要ない」
[メイン2] 譲崎ネロ : 目の前の男から語られる言葉、一つ一つに、重みを感じる。
[メイン2] 御坂妹 : 「……」
[メイン2]
譲崎ネロ :
……そう、だよね。
この人も……『願望器』を求めに、ここへ来たんだ。
[メイン2]
譲崎ネロ :
でも、それを曲げた。
……それは……おそらくこの人の、『忠義』に反する行為であり……。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……名前、分からないけど、でも─────」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「─────ありがとうございます」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……」
[メイン2] 譲崎ネロ : そう言い、ネロは頭を下げた。
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「では、最後に一つ問おう」
「私の、最後の悔いを晴らすものだ」
[メイン2]
譲崎ネロ :
最後の問い。
その言葉に、顔を上げる。
[メイン2] 譲崎ネロ : 窓に、光が差し込まれる。
[メイン2] 譲崎ネロ : 僕らを照らし続ける太陽の光。
[メイン2] 譲崎ネロ : 『神の威光』。
[メイン2] 譲崎ネロ : その光を受け、ネロの瞳に─────ダイヤモンドの輝きを見せながら。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「いいよ」
[メイン2] 譲崎ネロ : ウィリアムを、じっと見つめる。
[メイン2] 御坂妹 : 「構いません」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「……貴公は、願望器を破壊すると述べた」
微笑みながら、清廉とした声で問いを始める
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「その是非について、問おう」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「まず、知る事にしよう」
「何故壊す?願いを叶えたくはないのか?」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……うん、僕にも、叶えたい夢は、ある。」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 他者への興味も兼ね、最後の問答の為ベルグシュラインは真実を求める
[メイン2] 譲崎ネロ : 立派な探偵になる。小さい頃からの夢。
[メイン2] 譲崎ネロ : そして、ネロという人物が生きるための誇りであり、証でもある。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「でも……その夢は……簡単に、叶っちゃいけないものだとも、僕は思ってるよ」
[メイン2] 譲崎ネロ : ─────それは、ウィリアムが出会った、フィズの考えと、全く同じで。
[メイン2]
譲崎ネロ :
「……だって、ヘヘ。ズルして夢叶えても……後が虚しいだけっしょ?」
悪戯っぽい表情を浮かべながら、頭の後ろで腕を組む。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……もっともだ、今は貴公の価値観に賛同しよう」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「だが、願いが大きくなればどうだろう?」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「例えば世界平和、理想世界、皆の涙を笑顔に変えられる新世界や……誰もが受け入れられる新天地」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「そういった、多くの糧が必要な物への犠牲を省略する為……だとしても、貴公は願望器を否定できるだろうか?」
[メイン2] 譲崎ネロ : その問いに、頷き。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「確かに……それも、その通りだよ。『願望器』で、より多くの命が救えるかもしれない。もっとみんなが幸せに暮らせるかもしれない。」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「10でも、100でも、もっと多くの人達が、笑顔で暮らせるかもしれない。」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「僕は、その結果自体は、喜ばしいものだって、思えるよ」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「─────でも」
[メイン2] 譲崎ネロ : そう言い、人差し指を立てる。
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ : 「─────そのために1が犠牲になるのは、やだ」
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ : それは、道中で出会った、黒衣の男と相反するものであり。
[メイン2] 譲崎ネロ : 『探偵』として……目の前で傷つく人達を、見捨てられないという、ネロなりの『覚悟』でもある。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……非合理だ、故にこそ。貴公達は人間なのかもしれないな」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「人生があるが故に、譲れない物を持つ」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……納得できた」
[メイン2]
譲崎ネロ :
「……へへ、ただの、僕の我儘だったりもするんだけどね」
また、悪戯っぽく笑いながら。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「それでも……ありがとう、納得してくれて」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「礼を述べるのはこちらの方だ……」
[メイン2]
ウィリアム・ベルグシュライン :
「……貴公達は、これから他の参加者達を解決の為傷つける事になるだろう」
「それでも、折れずに歩めるだろうか?」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 願いを叶えたい、そう思う者達の期待を粉砕する。如何なる願いであろうと、願いは願いだ
[メイン2] 譲崎ネロ : その問いに、強く頷く。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「傷つけ、傷つけられて、痛い思いしながら進まないと、いけないだろうね。」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「ぶっちゃけ僕は、痛いの、すっごくやだ。でも……。」
[メイン2] 譲崎ネロ : そう言い、隣にいるミサカへ、ニコりと笑い。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……一緒に、歩んでくれる、とっても優秀な助手がいるからね!」
[メイン2] 御坂妹 : それを知っていたかのように、頷きを返す。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……そうか」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : とても、眩しい物を見るように目を細め、男はつぶやいた
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「──安心した」
[メイン2] 御坂妹 : そんな表情に、こちらにも温かみが伝わってくるようで。
[メイン2] 御坂妹 : 「………では、お帰りの前に」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……?」
[メイン2] 御坂妹 : そう言うと無造作にスカートをたくし上げ、ウィリアムの手元に向かって片手サイズのそれを投擲する。
[メイン2]
譲崎ネロ :
「っ……!!?」
ま、またスカートを……!!
[メイン2] 御坂妹 : 「互いに語り、考えを共にしたのなら…『友好の証』を授けない理由はないのではないでしょうか、とミサカは結論付けます」
[メイン2] 御坂妹 : 手頃な拳銃にナイフで『ミカサ』と刻まれた跡が。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : パシリ、と音を立て無表情で受け止め確かに確認すると……
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「なるほど、それでは返礼を欠かすわけにはいかないな」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 長い刀を鞘ごと外すと、テーブルに立てかける
[メイン2] 御坂妹 : 「……いいのですか?」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……!!そ、そうだよ!!丸腰になっちゃうよ!」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「構わない、寧ろ……もらった物に対しては、まだ足りぬと言えるだろう」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……獲物なら、あるさ」
[メイン2] 譲崎ネロ : むむむ……!という表情を浮かべながら。ネロもポッケを探り。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……はい!これ!」
[メイン2] 譲崎ネロ : そう言い、ネロもウィリアムに渡す。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……これは」
[メイン2] 譲崎ネロ : ミサカの渡した物に比べたら、全く大したものではないが。
[メイン2] 御坂妹 : 「!」
[メイン2] 譲崎ネロ : んまい棒。ネロなりの、『友好の証』。
[メイン2] 譲崎ネロ : ミサカにも、てへぺろ。としながら。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「……なるほど、ありがたく頂戴する」
[メイン2]
御坂妹 :
「……」
少し表情を緩ませ、それに頷きながら。
[メイン2] 譲崎ネロ : そうして、改めてウィリアムを見て。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……譲崎ネロ。それが僕の名前で」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「─────この事件を解決する、『探偵』の名前だよ!」
[メイン2] 譲崎ネロ : 無邪気に、笑みを見せる。
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「私の名は、ウィリアム・ベルグシュライン」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 「────君達に助けられた、鈍い男の名前だ」
[メイン2] ウィリアム・ベルグシュライン : 苦笑いに似た笑顔を浮かべる
[メイン2] 御坂妹 : 「ミサカはミサカだ、と自己紹介を始めます」
[メイン2] 御坂妹 : 「───おっちょこちょいだけど頼りになる、そんな探偵の一介の助手です」
[メイン2] 御坂妹 : 無表情の中に、笑みを隠して。
[メイン2]
譲崎ネロ :
おっちょこちょい、というワードに、ムッ!となりながらも。
表情が解れ、笑みが零れる。
[メイン2] 譲崎ネロ : 「……それじゃあ、行こうか、助手くん」
[メイン2] 譲崎ネロ : 「ここからは、事件解決まで─────」
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ : 「─────『一方通行』だよ!」
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] 譲崎ネロ :
[メイン2] うちはサスケ :
[メイン2] うちはサスケ : 男は、駆ける
[メイン2] うちはサスケ : 廃墟と成った都市を
[メイン2] うちはサスケ : 男は、駆ける
[メイン2] うちはサスケ : 誰も使わないファミリーレストランの、前を
[メイン2] うちはサスケ :
[メイン2] うちはサスケ :
[メイン2] うちはサスケ : 願望器の居場所など、知ったこっちゃない
[メイン2] うちはサスケ : オレがやることは、ただひとつだ
[メイン2] うちはサスケ :
[メイン2] うちはサスケ :
[メイン2] うちはサスケ : ────都市を、抜けた
[メイン2] うちはサスケ :
[メイン2] うちはサスケ :
[メイン2] うちはサスケ : 終幕は、近い
[メイン2] うちはサスケ : 旧時代の遺物によって成されたくだらない物語に
[メイン2] うちはサスケ : 決着を
[メイン2] うちはサスケ :
[メイン2] うちはサスケ : 駆け抜け、森や山を幾つも超え
[メイン2] うちはサスケ : 激しい戦闘音を、聞き付け
[メイン2] うちはサスケ : ふと、横を見る
[メイン2] うちはサスケ : 黒炎だ
[メイン2]
うちはサスケ :
[メイン2] うちはサスケ : 『加具土命』
[メイン2] うちはサスケ :
[メイン2] うちはサスケ : 島に、これ以上燃え広がらない様に鎮火し
[メイン2] うちはサスケ : 前を向き直して
[メイン2] うちはサスケ : 迅雷の如く駆け抜ける
[メイン2] うちはサスケ : ───そして
[メイン2] うちはサスケ : 少女達を視認し
[メイン2] うちはサスケ :
[メイン2] うちはサスケ :
[メイン2] うちはサスケ :