シャンクトゥ『431』

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noname x5 3d6 #1
(3D6) > 6[1,3,2] > 6

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(3D6) > 8[3,1,4] > 8

#4
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#5
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GM  

GM  

GM  

GM 山城は月の灯りのみが照らす海にいた。

山城 「孤独ね……」

GM 海面が盛り上がる。黒い海が激しく飛沫を挙げ、まるで主の帰還を祝う拍手を奏でるかのように騒がしく波立った。

GM 海を割って現れたのは──山だ。山がよろめきゆっくりと動き出したことで、それが山でないことがようやくわかった。

山城 「何?…あれは…」

山城 「今までこんなの見たことない…不幸だわ…」

GM 無数の触覚で顔を覆い、濡れたゴムのようにぬらぬらと光る鱗に覆われた肉体が、一歩一歩と進むたびに海を震わせ、大地を絶望させる。

GM 最早人々は手を合わせ、ただ呆然と見上げることしかできない。

GM かの存在はそれだけ──存在するだけで生命を諦めさせる力があった。

山城 「て、敵襲!?で、でもあんなのって…」

GM 心の臓が中心から冷え、固まっていく感覚。呼吸が浅く小刻みになる。

山城 擬装ががたがたと震えているのを感じる。

山城 アンバランスな艦体は今にも崩れ落ちてしまいそうだ。

GM しかし幸いなことは、頭の芯も同じように機能が失われていくことを感じられることだ。

GM この恐怖に耐えきれてしまう精神などがあれば──それは正に、悲劇としか言いようがない。

山城 「はは…あははは…」

山城 「お姉さま…山城は今…」

山城 「今までの不幸が……霞むくらい…」

山城 「あはは…お姉さま…みんな…」

山城 「私なんかを顧みず…お願い…」

山城 「逃げて…」

GM 海の王は触手を広げ、大地を絶望とともに血で染 め上げるだろう。

GM 矮小な生命を悲観せよ。偉大なる神を仰ぐのだ。

GM 最早この大地に進化も発展も不要である。恒久たる絶望が満ちる星で、死のみが唯一の救済と知るがいい。

山城 最早一発の弾も撃つことすらかなわず。

山城 艦橋は崩れ落ちていく。

山城 その絶望をただただこの身体で感じた時。

山城 きっと、この心の中に思い描くものが。

山城 死、なのだろう。

GM  

GM  

GM 汗が滲んでいた。

GM 山城は最近、悪夢をよく見る。冷たい汗を纏わせ、鈍い頭痛と共に起床するのが日課だ。

GM 北極より迫る青白い光に飲まれ息絶える、緑の一つ目に睨まれながら無数の触手に飲み込まれる、風に弄ばれ空で蹂躙される……数えきれないほどの恐怖が、夢を介して脳に深々と刻まれていた。

山城 「ぐう…いたた…またあの夢…?」

山城 「こんなことが続くなんて…不幸だわ…」

山城 「それにしても…あの化け物は何?」

山城 「なんでこんな目に合わなくちゃいけないのかしら…」

GM ともあれ、夢で日常生活をおろそかにするわけにもいくまい。山城は日常生活を開始する。

山城 身支度を整え鎮守府へと足を進める。

山城 大丈夫だ。あんなことは夢の中の出来事。

山城 日常は…少しづつ不幸なこともあるけれど、お姉さまやみんながいる限り乗り越えることが出来るはずだ。

山城 きっと。

山城  

山城 ということで情報でも頂きましょう

山城 ニュースなり新聞なりを確認するわ

GM 新聞には特集記事がある。

GM 明日の夜、何千年に一度というとても珍しい星の配列が観れるとの事。

GM それに伴い、昴ドームで天体観測が行われるそうだ。
入場無料。

GM 場所は丁度近くにある。自室の窓から見えるぐらいに。

山城 「ああ…あのドームね」

山城 「珍しい星の配列に興味がないわけではないけれどそういう日ってよくないことが起こりそうで心配」

山城 「ほら…言うじゃない?月食や日食の日は不幸が起こるのだとか…」

山城 「…なんか嫌だわ」

山城  

山城 そもそも、欠陥戦艦である山城に出撃の機会などはない。

山城 内側において練習を繰り返す。

山城 練習を繰り返す。

山城 ただそれだけ。

山城 まあ、そんなものならたまには星を眺めていくのも悪くないだろう。

山城 誰かも一緒に誘おうかとふとそんな考えが頭をよぎる。

山城 それを実行しようとして…

山城 ふと、よく見る悪夢がわたしの目の前に姿を現してこう告げるのだ。

山城 「不幸のおすそ分けか?」

山城 はあ…

山城 一応、上官には最近睡眠不足であることを報告しておきましょう

山城 どうせ、嫌みだとか悪いことなんて言われないわ。

山城 まだ私は、必要とされていないんだから。

山城 そんなことを考えて、一日を終えた。

山城  

GM 探索者は夜に目が覚める。悪夢を見ない、久しぶりの目覚めだ。

山城 「久しぶりに気持ちが良い目覚め…って、夜じゃない」

山城 「はあ…こんな時間に起きてしまうなんて…」

山城 「もう一回寝るのもなんかそんな感じじゃないし…」

山城 とりあえず昼間のことを思い出して、窓の外でも眺めてみる。

GM 夜とはいえ街がひどく静まり返っていることに気がつく。町並みに灯りはなく、夜更かしな人々の姿も皆無だ。虫の鳴き声すら響かない。

GM しかし、昴ドームはほんのりと明るい。

GM 何故だかはわからないが、施設の灯りではないだろうと直感した。

山城 「……まさか」

山城 「火事の可能性があるわね…」

山城 「でもその割には騒ぎになってない…?」

山城 「いったいどういうことかしら…」

山城 「上に報告…しても民間施設のことだから関与してくれない可能性が高いわね…」

山城 少し逡巡して。

山城 「今この事態に気づいてるのがわたしだけなら、確認しに行ってみるのも一興かしら」

山城 「…どうせ、することなんてないもの」

山城 「はあ…せっかく気持ちよく眠れると思ったのに…不幸だわ…」

山城 ということで向かってみます

GM  

GM 街のすべてが、世界のすべてが沈黙している。活動している人間がいないため、街はとっぷりと暗い。

GM 昴ドームにも警備員の類はいない。

山城 「いや…ちょっと異常過ぎない?」

山城 「いくら深夜とはいえイベントも控えているのに誰も見回りがいないとかどうなってるのかしら」

山城 警戒しながら、中に入ってみましょう

GM 中に入ると、そこでは。

燃彦 炎のようにたゆたう衣を着た友彦と。

冷彦 氷のように透き通った衣を着た友彦が碁を打ち、ぬるいジュースを交わしていた。

GM あの灯りは、この二人から放たれていることに気がつく。

山城 「な…なにあれ…」

GM 山城に気がつくと、二人は至極穏やかに、探索者に一連のことを説明する。

燃彦 「星の並びが変わることは人間たちも気づいているのだろう」

燃彦 「星辰が揃いし時、眠っている神々の夢は終わり、破壊と絶望の限りを尽くす未来が来る」

山城 「いきなり変なことを話しかけてきた…不幸だわ…」

燃彦 「地球は生命の終わりを憂いた。そして愛されたのがあなた、だ」

山城 「あ…愛され…?」

燃彦 「地球は近い未来を夢に乗せてあなたに届け続けた。しかしあなたは艦娘だ、どうすることもできはしない」

山城 ふと自分の人生に「愛され」などという言葉が少なかったことを思い出したり。

山城 「だから何の話なのよ…」

燃彦 「度々見る夢に覚えがあるだろう。それこそが地球からの警告」

山城 「地球からの警告って…あんなのが…?なんで私なんかに…」

冷彦 「だが案ずる事はない。私達が手を貸すことにした」

冷彦 「地球に愛された人間ならば、空に召し上げるに相応しい才覚だ。ならば単純な話、あなたを星にして星図を書き換えてしまえば良い」

冷彦 「……しかしそれは、友彦の系譜に連なることを意味する。艦娘であることを捨て、愛した人々と違う時の流れで恒久を生きることを強いはできまい」

冷彦 「これを最期の時と定め、わずかな時間を慈しみ地球とともに果てることもまた、生命に許された道である」

冷彦 「であればせめて、暴虐な神々に最期を恐怖で踏み潰されぬようこのまま穏やかに眠らせてやることもできる」

冷彦 「私達にできることは、あなたを空に召して友彦星にすること。あるいは優しい最期を迎えさせてやることだ」

山城 あまりにも異常な人達の異常な話に脳内が追いつかない。

山城 「なに…?このままじゃ地球が滅ぶって言いたいの?いきなり現れて好き勝手なこと言わないでよ」

燃彦 「あなたの困惑は至極当然」

冷彦 「しかしこの二つの他に策はなし」

山城 「一体何の話なのよ!?どっちにしてもこのまま死ねってことじゃない!」

燃彦 「慰めにはならないだろう。しかし言わせていただきたい」

冷彦 「友彦星になることは、死ではない」

燃彦 「ただ恒久に世界を眺める存在へ召しあがる」

冷彦 「しかし、世に干渉することはどちらにせよ叶わぬ」

山城 「…結局他の人は助からないってこと?」

燃彦 「否」

冷彦 「あなた以外の生命は全て眠らせている」

燃彦 「しかし、あなたが友彦星になるならば、何事もなく目覚めるだろう」

冷彦 「もし生命を終える選択をするならば、せめて安らかに逝けるように」

燃彦 「そのまま眠りについてもらう」

山城 「そんなこといきなり言われても決められるわけないじゃない!」

燃彦 「あなたの非難は正しい。好きで愛されたわけではないだろう」

燃彦 「総ては宇宙の理。定められし運命」

冷彦 「しかし、運命は絶対的で残酷」

冷彦 「道は二つしか残されていない」

冷彦 「それでも、もし、やり残したことがあるというのなら」

燃彦 「最後の言葉を、愛する人に遺すことはできる」

燃彦 「眠りを解き、あなたが話すことで」

山城 「愛する…人…」

山城 「…いつまでに、決めればいいの」

燃彦 「明日の朝まで」

冷彦 「決断をしないのならば、私達は総てに眠らせ、ここを去る」

山城 私が…今まで誰のお役にも立てなかった私が…

山城 地球の…ために?

山城 頭がぐるぐるして、考えがまとまらない。

GM 二人の友彦は、碁を打ち思案する。

燃彦 「明日の朝には決するだろう」

冷彦 「それまでに、悔いのないよう」

山城 呆然として、2人が話す言葉をうわの空で聞いていた。

GM 碁を打つ音だけが静寂に響く。

山城 パチリ、パチリという音が頭の中にだけ染み込んでいく。

GM その音が染みる度、刻限が迫ることを意識せざるを得ないだろう。

山城 「じゃあ…」

山城 「起こしてほしい人が、いるのだけれど」

燃彦 「よかろう」

冷彦 「誰を起こすか」

山城 「…お姉さまに、お話を」

燃彦 「聞き届けた」

燃彦 「こちらに呼ぶか、あなたが行くか」

冷彦 「友彦星になることは告げたくないのなら、私達の存在を明かしたくないのなら、あなたが行く方がいいだろう」

山城 「あなたたちの存在なんか知らせたくないから、わたしから行くわ」

燃彦 「よかろう」

燃彦 「既に眠りからは覚めている」

冷彦 「行くといい。そして決断をするならば、またここへ」

山城 「ええ…じゃあまたね」

燃彦 「では、悔いのないよう」

山城  

山城  

山城 …海に着いた。

山城 誰一人、どんな海洋生物すらも今は眠っている、この海。

山城 いつも同じ日常を繰り返していた、懐かしくも冷たい海。

山城 そんな海辺のほとりに、わたしの愛する人は立っていた。

山城 「…扶桑姉さま」

扶桑 「山城?」

扶桑 「あなたも目が冴えちゃった?」

山城 「…なんだか眠れなくて…」

扶桑 「私もよ。二度寝する気にもならなくて」

扶桑 「つい海にきてしまったの」

山城 「何故か見に行きたくなる…この海…」

山城 「いろいろな思い出がよみがえってきませんか、姉さま?」

扶桑 「……ええ」

扶桑 「あなたのことや、鎮守府の思い出が……」

扶桑 「少し干渉に浸ってた。潮風が心地よくて」

山城 「姉さま…」

山城 何か言葉をかけなければならない。

山城 しかし、頭のもやもやは晴れず。

山城 言葉にならない声が、息となって口から出てくることしか出来ない。

扶桑 「ああ、そうだ!」

扶桑 「山城、明日の夜に珍しい星の配列が……ってこと、知ってる?」

山城 「はっ!?え、ええと…」

山城 「新聞で読みましたわ、天体観測も開かれるそうですね」
動揺を何とかして抑えながら

扶桑 「明日、二人で行かない?」

扶桑 「提督にも言って私達は休みにしてもらったから」

山城 「ふ、2人きりでですか!?」

扶桑 「大きなイベントだから他にも人がいるかもしれないけれど、行くのは二人よ」

扶桑 「昴ドームも丁度近くにあるし、綺麗な星を見たらきっと山城も安らぐかなって」

扶桑 「最近少し調子が悪そうだったでしょ? 朝に会うときとか、いつも顔色があまりよくなかったから……」

山城 一瞬だけ、誰にも見せたことのない笑顔を示しながら。

山城 すぐにその顔は浮かない顔へと戻って。

山城 ぎゅっと、唇を噛みしめる。

山城 「姉さま…わたし…」

山城 叶うことのない約束などしてはならない。

山城 それは、自分も相手も不幸にしてしまう、

山城 呪いの約束だ。

山城 だからダメだ。

山城 行かないと言わなければ。

山城 行かない…行かない…行かない…

山城 ………

山城 ……も

山城 …それでも

山城 目から熱いものが流れ落ちていく。

扶桑 「!? どうしたの山城!?」

扶桑 「もしかして体調が悪い? なら早く寝た方が……」

山城 「…い…」

山城 それでも。

山城 「…行きたい…行きたいです…!姉さまぁ…!」

山城 泣きながら訴える。

扶桑 「私も一緒に行きたいけど……どうして……」
号泣する山城に困惑を隠せない。

扶桑 「大丈夫? 私がいるから……」

山城 「姉さまぁ…!わたし…行きたい…行きたい…姉さまと」

山城 「星を見に行きたい…!」

扶桑 「うん、うん」
私もそうだよと頷く。

山城 嗚咽が言葉を遮っていく。

山城 人目がないことは少しだけ助けにはなっていただろうか。

扶桑 「私も山城と行けたら素敵だなと思う。けれどもし体調が悪いとか予定があるなら無理しなくていいのよ」

扶桑 「もし明日行けなくても、いつかまた二人で過ごす時間はあるから」

山城 泣き目で霞んだ視界の中で、姉さまを眺める。

山城 嗚咽が漂う聴覚から、姉さまの声を聴く。

山城 まだ、足りない。

山城 そのまま姉さまの胸に飛び込んで、さめざめと泣く。

扶桑 「山城……」
受け止めて、優しく抱く。

山城 月明りだけがわたしたちを優しく見守ってくれる。

山城 そのまま嗚咽が止まるまで、このまま。

扶桑 優しく頭を撫でる。

扶桑 「辛いことがあって、それは私にも言えないことなのかもしれない」

扶桑 「でも、一緒にいることはできるから。だから無理しないで」

扶桑 嗚咽が止まるまで、優しい言葉をかけ続ける。

山城 わたしの気が晴れるまで、月はそれを眺めていた。

山城  

山城 顔を赤く腫らしながらも、泣き止んだわたしは少しだけ姉さまからそっぽを向きながら。

山城 「すみません姉さま…お見苦しいところを見せてしまって」

扶桑 「いいのよ」

扶桑 「山城が一人で無理するより、ずっといいから」

山城 「ありがとうございます…本当に」

山城 「そ、それでですね」
1つ、咳ばらいをして。

山城 「ごめんなさい姉さま…所用でやはり明日は一緒に行くことが出来ません」

扶桑 「そうなの……」

山城 「ですから、」

山城 「今宵」

山城 「…一緒に星を見ませんか」

山城 「わたしからの、お誘いです」

扶桑 「うん、いいわよ」

扶桑 「今は二人きりだし、落ち着いて見れるものね」

山城 「はい…他に邪魔するものもありません」

山城 「……」

山城 「手、繋いでもらえますか」

扶桑 にこっと笑って、手を差し出す。

山城 その手を受け取って。

山城 夜風に晒されていた手の冷たさに、申し訳なさをつのらす。

山城 だが、それは誰が何と言おうと、温かい気持ちで包まれていた。

山城 だから、「温かい」。

山城 「温かいです…姉さま」

扶桑 「うん……山城の手も温かいよ」

山城 そのまま星を眺める。

山城 呼吸1つすら染みわたるこの空では、呆れるほど綺麗な星空が浮かんでいた。

扶桑 「綺麗……」

扶桑 「明日行けないのは残念だったけど、この星空を二人で見れてよかった」

山城 「ええ…二人っきりで」

山城 「独占、です」

山城 「…あ」

山城 「流れ星…」

扶桑 「本当だ。初めて見た……」

山城 「ええと…何か願い事をするといいんでしたっけ」

扶桑 「ええ、確か流れ星が消える前に三回願いが言えたら叶うらしいわ」

山城 「3回…頑張ってみます」

扶桑 「私もやってみるね」

扶桑 ずっと二人でいられますように。

扶桑 そう流れ星に告げる。

山城 「姉さまと一緒にいられますように姉さまと一緒にいられますように姉さまと一緒にいられますように…」

山城 心の中の願いは少し違って。

山城 わたしがどこにいったとしても、姉さまが幸せでいられますように。

山城 そう、誰にも告げずに胸の中で呟いた。

山城 「姉さま…」

山城 「今わたし、不幸じゃないです」

扶桑 「ええ、私も」

扶桑 「今、とっても幸せ」

山城 「…ええ」

山城 「わたしたち、幸せです」

扶桑 「そうね……本当に幸せ」

山城 月と、星と、流れ星だけが見守るこの世界で。

山城 初めてのこんなにも幸福な気持ちを享受する。

山城 ああ、そうだ。

山城 誰かが、何かが終わりを迎えるとき、

山城 人は、艦はこんなにも美しくなれるのだ。

山城 「綺麗です…姉さま」

扶桑 「本当に綺麗。流れ星まで見れるなんて思わなかった」

山城 そう、わたしの言葉は届かなくていい。

山城 ただ、この幸せを感じられたのなら。

山城 それでよかったのだ。

山城  

山城 ふと、手に重みを感じて。

山城 姉さまが崩れ落ちていく。

山城 わたしはそれを何とか支えようとして。

扶桑 いつの間にか眠っていた。

扶桑 眠っているようにしか見えない安らかな顔は、呼吸をすることはない。しかし触ると体温は感じられる。

扶桑 これは全世界で起きている事情なのだろう。安らかに逝けるよう、友彦らが施した眠りだ。

山城 「姉さま…!姉さま…!」
小声で語り掛けるが、反応はない。

山城 目頭を熱くしながらも、そっと寝かせていく。

山城 その眠る姿は、まるで童話に出てくるお姫様を思い出して。

山城 誰にも渡したくない。

山城 でも…

山城 ああ、そうか

山城 姉さまにとっても、わたしがそういう存在だったら。

山城 悪いことをしてしまったな。

山城 「…ごめんなさい、姉さま」

山城 「山城は、自分勝手で、わがままな妹でした」

山城 「そしてそのまま、何も言えずに姉さまの元を去ります」

山城 「本当に、ごめんなさい」

山城 「でも、それでも、」

山城 「この声が届かなくても、言わせてください」

山城 「扶桑型戦艦2番艦を名乗れて、わたしは誇りでした」

山城 「姉さまといれて、とっても幸せでした」

山城 「…だから…」

山城 「ありがとう、姉さま」

山城 「扶桑姉さま」

山城 そう言い残して、歩き去った。

山城  

山城 ドームについて、2人と再び相まみえる。

燃彦 「悔いのないよう、話せただろうか」

冷彦 「このような選択を強いることを詫びよう。しかし見過ごすことは見殺しにすることと同義故に」

山城 「不幸なことに、どんなに話しても悔いは残るわ」

山城 「それでもけじめをつけるためには必要なことだった」

山城 「…わたしを星にしてちょうだい」

燃彦 「生きてくれるか」

燃彦 「愛した人々の笑顔が最早、寄り添うものではなく見守るものになっても」

山城 「ただし、1つだけわがままを言わせてもらうわ」

燃彦 「よかろう、聞き届ける」

山城 「わたしは、どんなことがあっても空から降りない、夜空で一番輝く星になりたい」

山城 「そうすれば姉さまが、みんなが見つけやすいから」

山城 「生憎艦橋のスタイルが悪くてね、目立つことには慣れてるのよ」

冷彦 「聞き届けた」

冷彦 「愛した人々の命が終わっても尚、何ひとつ支障をきたさないまま回っていく世界を見つめることになろう」

山城 「海底の底でいつまでも独りぼっちよりはよっぽど楽ね」

冷彦 「しかし、だからこそ、輝く星になることだろう」

山城 「ええ…その星を見た人に幸運を、そして不幸を、どちらも与えられて印象に残らせるような、そういう星になりましょう」

GM 友彦らは傾けていたものと同じぬるいジュースを山城にも勧める。その中には無色透明の液体に、星のような粒が無数に輝いていた。

山城 「…きれいね」

山城 一息に飲み干す。

GM 山城がぬるいジュースを傾けると、友彦らも柔らかく微笑み、それに倣う。

GM ぬるいジュースを飲み込んだ山城の体は光を放ち、ゆっくり浮き上がる。

GM そして、夜空へと昇っていく。

山城 …祝砲でもあげましょうか

山城 CCB<=90 一斉射 (1D100<=90) > 63 > 成功

山城 誰にも聞き届けられない砲撃が夜空に響き渡る。

山城 これが戦艦山城の、最期。

山城 愛する人とあちらの世界に行くことはかなわなかったが。

山城 みんなを、いつまでも見守れる星となろう。

GM  

GM  

GM 朝、何時も通り目を覚ました人々は口を揃えて「今日の夜に!」と言葉を交わす。

GM そして揃って見上げた星空が期待を裏切ったことに、肩を落とし不満に口を尖らせるかもしれない。

GM しかし。

扶桑 「綺麗……ってそれしか言えないけれど」

GM そこには悠久の時から頭上を照らしてきた美しい星々があるのだ。人はあっけなく、宝石箱をひっくり返したような星空の虜になることだろう。

GM 人々は指を指し、星をなぞる。綺麗だね、そう口にして、やがて笑顔を浮かべる。あなたを見つめながら。

扶桑 今日は山城と一緒に来れなかったのに、不思議と一緒にいる気がした。

扶桑 ずっと見守ってくれているような、離れていても繋がっているような。

扶桑 もしかしたら、流れ星が願いを叶えてくれたのかもしれない。

GM END 431光年先の君へ

GM  

GM  

GM  

山城 宴よ~~~!!!