シャンクトゥ『431』

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自殺志願シャン x5 3d6 #1
(3D6) > 12[3,3,6] > 12

#2
(3D6) > 7[1,1,5] > 7

#3
(3D6) > 11[4,6,1] > 11

#4
(3D6) > 10[3,6,1] > 10

#5
(3D6) > 9[1,6,2] > 9

GM 準備出来たら出航だァ〜〜〜〜〜!!!

ゼシルウェンシー 出来てますよ
出航ですァ~~~~!!!

GM  

GM  

GM  

GM 海面が盛り上がる。黒い海が激しく飛沫を挙げ、まるで主の帰還を祝う拍手を奏でるかのように騒がしく波立った。

GM 海を割って現れたのは──山だ。山がよろめきゆっくりと動き出したことで、それが山でないことがようやくわかった。

GM 無数の触覚で顔を覆い、濡れたゴムのようにぬらぬらと光る鱗に覆われた肉体が、一歩一歩と進むたびに海を震わせ、大地を絶望させる。

GM 最早人々は手を合わせ、ただ呆然と見上げることしかできない。

GM かの存在はそれだけ──存在するだけで生命を諦めさせる力があった。

GM 心の臓が中心から冷え、固まっていく感覚。呼吸 が浅く小刻みになる。

GM しかし幸いなことは、頭の芯も同じように機能が失われていくことを感じられることだ。

GM この恐怖に耐えきれてしまう精神などがあれば──それは正に、悲劇としか言いようがない。

GM 海の王は触手を広げ、大地を絶望とともに血で染 め上げるだろう。

GM 矮小な生命を悲観せよ。偉大なる神を仰ぐのだ。

GM 最早この大地に進化も発展も不要である。恒久た る絶望が満ちる星で、死のみが唯一の救済と知る がいい。

GM  

GM  

GM 汗が滲んでいた。
ゼシルウェンシーは最近、悪夢をよく見る。冷たい汗を纏わせ、鈍い頭痛と共に起床するのが日課だ。

ゼシルウェンシー 「……ひィアッ!!」

ゼシルウェンシー 背筋をバネのようにして跳ね起きる。

GM 北極より迫る青白い光に飲まれ息絶える、緑の一つ目に睨まれながら無数の触手に飲み込まれる、風に弄ばれ空で蹂躙される……数えきれないほどの恐怖が、夢を介して脳に深々と刻まれていた。

ゼシルウェンシー 「ヒャアー……ひでー! ひっでー夢見です!」
乱暴に前髪をかき分ける。
口元だけはヘラヘラとしているが、少し余裕のない目元が晒された。

ゼシルウェンシー そして夢の余韻の残る頭をぐわんぐわん。

ゼシルウェンシー 「いや連日ながら参っちまう……ギャハハハハ!!!」

GM ともあれ、夢で日常生活をおろそかにするわけにもいくまい。ゼシルウェンシーは日常生活を開始する。

ゼシルウェンシー 笑い、寝台を乱暴に叩くこと数回。

ゼシルウェンシー 「……あー」
頭の血も引くってもんです。

ゼシルウェンシー 「毎度毎度最悪な一日の始まりですが、さてさてさて!」

ゼシルウェンシー 「ま、こっから最高にすりゃーお釣りがくるってもんです」

ゼシルウェンシー 「っつーことで今日一日に勝ちに行くとしましょうか!」

ゼシルウェンシー げらげら!
やはり寝台から飛び起き。

ゼシルウェンシー 「今日は……ああ、お暇を貰ってるんでしたっけね?」

ゼシルウェンシー 普段の仕事と言えば血なまぐさいものばかりだが……と懐のナイフを感じつつやや回想。

ゼシルウェンシー 今日ばかりは少し毛色が違う。

ゼシルウェンシー 大まかにいえば暗殺者のようなこの身の上、現在の情勢について知るのも重要である。との上司からお達し。

ゼシルウェンシー 正直なところあまりお勉強というものも好きではないが、言いつけられては致し方なし……。

ゼシルウェンシー などと考え込む間に、普段は読みもしない新聞などを広げていた。

GM 新聞には特集記事があるようだ。

GM 明日、とても珍しい星の配列が見られるらしい。
何千年に一度……とか何とか。

GM それに伴い、昴ドームで天体観測が行われるそうだ。

ゼシルウェンシー 並ぶ文章に目を滑らせてから、ぽいと紙面を投げ捨てた。

ゼシルウェンシー 「いやー、やっぱメンドくせえ~!」

ゼシルウェンシー この男、三行以上の文字は読めないタイプであった。

ゼシルウェンシー とはいえ。

ゼシルウェンシー 「えー……明日、お祭り騒ぎがあるみたいで?」

ゼシルウェンシー でかでかと写真付きで掲載されたことくらいは頭に入っていた。
昴ドーム、天体観測……

ゼシルウェンシー 「さて、まあ……安穏と日常生活を営んでただけってえーのは少々面目が立ちません」

ゼシルウェンシー 「いいですね、お祭り騒ぎ。是非に是非に赴きましょうか」

ゼシルウェンシー 丁度いい!

ゼシルウェンシー 「あ、でも明日のお話でしたっけえ?」

ゼシルウェンシー 「そうそう、今起きたばっかなもんで……」

ゼシルウェンシー 「……うーん……」

ゼシルウェンシー 「……まあ、今また寝ても後からドヤされちまいますし」

ゼシルウェンシー 「テっキト~にブラついちゃいますかあ……」

ゼシルウェンシー ふらふらと考え込んだ後、そのまま自室を抜け出し、街中へ。

GM 街中は明日の天体観測に沸いていた。

GM 昴ドームの下見に何人も来ている。かなり熱狂的なイベントになりそうだ。

GM 下見には宗教団体のようなものまでいると噂されていた。

ゼシルウェンシー ぎゃーぎゃーと騒がしいもんですねぇ……。

ゼシルウェンシー 星が揃ってそんなに嬉しいものか。それがどうして喚く理由になる?

ゼシルウェンシー いや、騒ぎたいから騒いでるんでしょうけど。

ゼシルウェンシー ……こういうのも、世間を知る一環でしょうか?

ゼシルウェンシー ここで目に映るは、やや周りの一般人とは違う空気を帯びた団体。

ゼシルウェンシー 話を聞くなら、”ああいうの”の方が面白いに決まっている。

ゼシルウェンシー 揚々とした足取りで団体に向けて距離を大きく詰め。

ゼシルウェンシー 「やあやあ! どうもコンニチハ!!」
わざとらしいくらいの馴れ馴れしく、喧しく挨拶する。

宗教団体 「おや? 何か御用ですか?」

ゼシルウェンシー 「ど、どど、どうも」
よく見てみれば思ったより神聖な顔だったので思わずどもった。

宗教団体 「もしや明日のイベントの下見ですか?
それなら会場はここ昴ドームで間違いないですよ」

ゼシルウェンシー 「へえ~……」
顔のインパクトが強くて頭に入ってこないんですがね。

ゼシルウェンシー 「いや、失敬。どうにもアナタ方、周りのお方と雰囲気が違うようでしたから、イベントがもう始まってるのかと思いましてねえ」

宗教団体 「ああ、成程」

宗教団体 「イベントは明日の夜で間違いないですよ。
私達はただの下見ですから」

ゼシルウェンシー 「はあ、ただの下見とな」

ゼシルウェンシー 「では、イベントとアナタ方は無関係なわけで」

宗教団体 「イベント関係者……という訳ではないですね」

ゼシルウェンシー 「フゥン、にしてはちっと目立ちますけど。どういうお方かお聞きしても?」

宗教団体 「私達はとある宗教を嗜んでおりましてね」

宗教団体 「明日に起こる星の配列。その時に祈りを捧げると神に届くと言われているのですよ」

宗教団体 「その為の下見です」

ゼシルウェンシー 「神と来ましたか……」
お祈りが届くような神なんて、いないのにかわいそうなこって。

ゼシルウェンシー 「興味本位ですが、なんつー神様で?」

宗教団体 「これを言うと驚かれる方も多いのですが……」
と前置きして続ける。

宗教団体 「神の名前は私達も知らないのですよ」

ゼシルウェンシー 「おやおやマア!」
本当に驚きです。

宗教団体 「神の名を知る事……それ即ち神に近づく事とされています」

宗教団体 「それは私達が犯すべきではない禁忌。
故に私達はただ祈りを捧げているのです」

ゼシルウェンシー 「神聖ンン文字ってぇわけですね」

ゼシルウェンシー 「なーる……興味深い話、どうもありがとうございました」

ゼシルウェンシー 言葉と裏腹に、そっけなく。

宗教団体 「いえいえ、力になれたのなら幸い」

ゼシルウェンシー 「大変タメになりましたよ。んじゃ、機会があればまたお会いしましょうっ!」

宗教団体 「ではまた」

ゼシルウェンシー 手をひらひら……

ゼシルウェンシー その場を後にし。

ゼシルウェンシー 「……いやー、すげえ顔でした」

ゼシルウェンシー 相手の話をそこまで真剣に聞いていなかったのが丸分かりの独り言を漏らした。

ゼシルウェンシー 「にしても結構長く話しちまいましたかね?」

ゼシルウェンシー 空を見上げ。太陽はもう中天を過ぎているらしい。

ゼシルウェンシー 「ま、後軽く見回ったら帰りますかね」

ゼシルウェンシー  

ゼシルウェンシー そしてふらふらふらふら。

ゼシルウェンシー 彷徨うように街を歩いたが。

ゼシルウェンシー 「やっぱ世の中」

ゼシルウェンシー 「つまんねーの」

ゼシルウェンシー 何一つとして気を引くものはなく。

ゼシルウェンシー どこか浮つくような調子そのまま、やがて帰路へ着いた。

GM  

GM  

GM ゼシルウェンシーは夜に目が覚める。悪夢を見ない、久しぶりの目覚めだ。

ゼシルウェンシー 「……ああ?」

ゼシルウェンシー 瞼を上げる。

ゼシルウェンシー どうにも現実感が無いが。

ゼシルウェンシー 「ああ、そういや変な夢見てませんからねえ」

ゼシルウェンシー そりゃ目覚めた気もしない。

ゼシルウェンシー 頭を数度、横に振る。

ゼシルウェンシー それからのっそりと身を起こす。

ゼシルウェンシー 「二度寝って気分じゃあないな」

GM ふと窓を見ると、昴ドームがほんのり明るい。

GM ドームの灯り……という訳ではない。何故か直感でそう感じた。

ゼシルウェンシー おやおや。

ゼシルウェンシー お祭りは明日だと聞いていましたがね。

ゼシルウェンシー いや、違うか?

ゼシルウェンシー 「今夜、この瞬間」

ゼシルウェンシー 「それがお祭りってわけですかあ?」

GM だが同時に違和感もあった。

GM 昴ドームに異常があるというのにあまりにも静かだ。

GM 町並みに灯りはなく、夜更かしな人々の姿も皆無だ。虫の鳴き声すら響かない。

GM 灯りがあるのは、昴ドームだけだ。

ゼシルウェンシー へへへ。

ゼシルウェンシー 嵐の前には、静けさが欠かせない。

ゼシルウェンシー いいですね、ちょっとノってきました。

ゼシルウェンシー ああ……あんまり期待しすぎないようにしないと!

ゼシルウェンシー そして、身支度もおざなりに。

ゼシルウェンシー 上着を乱暴に着込むと、夜の街へと駆け出して行った。

GM 街のすべてが、世界のすべてが沈黙している。活動している人間がいないため、街はとっぷりと暗い。

ゼシルウェンシー 「しっずか~~~」

ゼシルウェンシー 静寂を割いて、場違いに陽気な声を一つ。

ゼシルウェンシー 「誰かいませんか~って! ギャハハハハ!!」

GM 声が響く。それに応える者も咎める者もいない。

ゼシルウェンシー 「ギャハ」

ゼシルウェンシー 「いいねえ!」

ゼシルウェンシー 明らかな異常事態。

ゼシルウェンシー 一日過ごすだけでも胸が腐るような日常とは正反対。

ゼシルウェンシー 「俄然期待、高まりますねえ?」

ゼシルウェンシー 足取りはずっと止まっていない。

ゼシルウェンシー 足の向く先は当然、大舞台。

ゼシルウェンシー 夜道をひたひた、昴ドームへ。

GM  

GM 辿り着くと、やはりほんのりとした灯り。

GM どこか神秘性すら感じられる。神など信じていなくとも、そう思わされる。

ゼシルウェンシー 神様っぽいのならもう昼間に見ちまいましてぇ。

ゼシルウェンシー 二番煎じです、間が悪かったですねえ。

GM 警備員の気配もない。

ゼシルウェンシー 「マジで誰もいねえな?」

ゼシルウェンシー 「好都合っつーべきか、張り合いが無いっつーべきか」

ゼシルウェンシー 「ンマ、お留守なら話がはえー」

ゼシルウェンシー 「盗人猛々しく行きましょうか」

ゼシルウェンシー ドームを見上げ、それから無遠慮に歩を進める。

ゼシルウェンシー 人がいなきゃこれでヨシ。いたらいたでこの状況を知ってるかもしれねえんでヨシ。

ゼシルウェンシー 俺、かしけー!

ゼシルウェンシー 静寂の中、一人で笑っていた。

ゼシルウェンシー ギャハハッ。

GM 中へ入ると、そこには。

燃彦 炎のようにたゆたう衣を着た友彦と。

冷彦 氷のように透き通った衣を着た友彦が碁を打ち、盃を交わしていた。

GM あの灯りは、この二人から放たれていることに気がつく。

ゼシルウェンシー 「と……友彦!!!」

GM 二人が声に気付く。

GM すると至極穏やかに、探索者に一連のことを説明する。

燃彦 「星の並びが変わることは人間たちも気づいているのだろう」

ゼシルウェンシー 「どの立場から話しているんでしょう……???」

ゼシルウェンシー 人間たちってなんだよ。

ゼシルウェンシー 「お前さん人間じゃーないんです?」

燃彦 「然り」

冷彦 「私達はとある理由で地上に降りてきた」

ゼシルウェンシー 「なんです? ぬるいジュースでも飲みたくなりました?」

燃彦 「星辰が揃いし時、眠っている神々の夢は終わり、破壊と絶望の限りを尽くす未来が来る」

燃彦 「地球は生命の終わりを憂いた。そして愛されたのがあなた、だ」

ゼシルウェンシー 「俺ぇ?」

燃彦 「地球は近い未来を夢に乗せてあなたに届け続けた。しかしあなたは人間だ、どうすることもできはしない」

燃彦 「夢に覚えがある筈だ。それは地球からの警告」

ゼシルウェンシー ああ、はいはい。アレね。

ゼシルウェンシー 納得しながら話を聞いておく。

冷彦 「だから私達が手を貸すことにした」

冷彦 「地球に愛された人間ならば、空に召し上げるに相応しい才覚だ。ならば単純な話、あなたを星にして星図を書き換えてしまえば良い」

冷彦 「……しかしそれは、友彦の系譜に連なることを意味する。人であることを捨て、愛した人々と違う時の流れで恒久を生きることを強いはできまい」

ゼシルウェンシー 「ええ…………」

冷彦 「これを最期の時と定め、わずかな時間を慈しみ地球とともに果てることもまた、生命に許された道である」

冷彦 「であればせめて、暴虐な神々に最期を恐怖で踏み潰されぬようこのまま穏やかに眠らせてやることもできる」

冷彦 「私達にできることは、あなたを空に召して友彦星にすること。あるいは優しい最期を迎えさせてやることだ」

ゼシルウェンシー 「えええ…………」

ゼシルウェンシー 「ちょっと彦星とかけてんじゃねーよデブ!」

ゼシルウェンシー 「オリオンのごとく英雄ならともかく、友彦として夜空でさらし者になるのはきちーですね」

ゼシルウェンシー 「でも友彦にならなかったら世界が滅ぶんでしたっけ?」

燃彦 「然り」

ゼシルウェンシー 「こんなイヤなセカイ系初めて見ましたですよ」

冷彦 「全ての生命は旧支配者に蹂躙され、恐怖に慄き、狂い死ぬ」

冷彦 「あなたの夢が現実となる……いやそれすらも断片」

燃彦 「より恐ろしい惨劇が待ち受ける」

ゼシルウェンシー 「お前たちよくその神聖なテンション保てるな」

ゼシルウェンシー 「ふぅむ……」
顎に手を当てて考える。

ゼシルウェンシー この究極の二択、酷すぎる……

ゼシルウェンシー 「質問いいです?」

燃彦 「よかろう」

ゼシルウェンシー 「ムカつく応答ですよ」
うわ!ありがとう!

ゼシルウェンシー 「友彦になれば、俺が星になれるんでしたっけ?」

燃彦 「然り」

ゼシルウェンシー 「で、お前たちは友彦だったな?」

冷彦 「それもまた然り」

ゼシルウェンシー 「そんじゃあ、お前たちは星か?」

燃彦 「然り」

ゼシルウェンシー 「ところでなんですけど」

ゼシルウェンシー 「囲碁、どっちが勝ったんです?」

燃彦 「勝負はまだついてはいない」

冷彦 「一進一退とは正にこのこと」

ゼシルウェンシー 「勝負、付きそうですか?」

冷彦 「すぐにはつかないだろう」

ゼシルウェンシー 「へえ……」

燃彦 「しかし、夜が明ける前には」

冷彦 「ああ、幕が下りるだろう」

ゼシルウェンシー 「なるほどねえ」

ゼシルウェンシー こいつら両方ナイフで攻撃していいですか?

GM いいよ

ゼシルウェンシー ccb<=90 ナイフ>燃彦 (1D100<=90) > 88 > 成功

ゼシルウェンシー ccb<=90 ナイフ>冷彦 (1D100<=90) > 55 > 成功

GM 両方の友彦にナイフで背後から一突き。

GM しかし……。

燃彦 燃彦の体は炎となりて。

冷彦 冷彦の体は氷となりて。

GM それは、何も効果がなく終わる。

ゼシルウェンシー 「ありゃ、勝てない!」

燃彦 「それもその筈、あなたは人間」

冷彦 「神に干渉することも叶わぬこと」

ゼシルウェンシー 「こ~いつは参りましたねえ……」

燃彦 「そして、仮に私達を討ち取りはしても」

冷彦 「明日に起こる惨劇は起こる」

ゼシルウェンシー バレてーら。

燃彦 「再び話そう。私達に出来るのは」

冷彦 「あなたを空に召して友彦星にすること。あるいは優しい最期を迎えさせてやることだ」

ゼシルウェンシー 「いやあ……どっち選んでも俺の負けじゃねーですか!」

ゼシルウェンシー ヒィーヒッヒ!

ゼシルウェンシー 「いやまあ、どうしたもんか!」

ゼシルウェンシー 「愛されてるだなんだ言われてこれを押しつけられるんだから参る!」

ゼシルウェンシー 「ハタ迷惑なんてもんじゃないが目を付けられるだけでこれだから終わってる!」

燃彦 「あなたの困惑は至極真っ当」

冷彦 「しかしてこれ以上の手もなし」

ゼシルウェンシー 「へへへっ……あんまり親身にされる方が困るんですがね?」

ゼシルウェンシー 「まあ……そういうことなら話は決まりましたよ」

ゼシルウェンシー 「ま、ちょっと聞いてくださいな」

冷彦 「よかろう」

ゼシルウェンシー どうも、と置いてから。
「俺は勝つのが好きでしてね」

ゼシルウェンシー 「負けんのもまあ好きです」

ゼシルウェンシー 「勝負事が好きです」

ゼシルウェンシー 「勝てば嬉しい、負けりゃあ次勝ったときもっと嬉しくなれるから楽しい」

ゼシルウェンシー 「んだもんで」

ゼシルウェンシー 「負けっぱなしってのは最悪です」

ゼシルウェンシー へらへらと語る。

ゼシルウェンシー 「……星になるのってのもすげー不本意ですがね」

ゼシルウェンシー 「だからってここで死んだら負けっぱなしでしょう?」

ゼシルウェンシー 「どんな形でも生きてればいつか勝ち直す機会があるんです」

ゼシルウェンシー 「少なくとも俺はそう信じてる!」

ゼシルウェンシー 「いいでしょう、お前たちの思惑に乗りましょう!」

ゼシルウェンシー 「星にでも何にでもなればいいんでしょう?」

ゼシルウェンシー 「そうすりゃー次がある!」

燃彦 「生きてくれるか」

ゼシルウェンシー 「生きますよ、生き永らえますとも」

燃彦 「愛した人々の笑顔が最早、寄り添うものではなく見守るものになっても」

冷彦 「愛した人々の命が終わっても尚、何ひとつ支障をきたさないまま回っていく世界を見つめることになっても」

ゼシルウェンシー 「関係ねえ~」

ゼシルウェンシー 「無くなったもんだってその内、手に戻せますよ」

ゼシルウェンシー 「アンタらの話だと俺は永遠に生きるんでしょう?」

燃彦 「然り」

ゼシルウェンシー 「じゃあ問題ナシ」

GM 友彦らは傾けていたものと同じぬるいジュースを探索者にも勧める。その中には無色透明の液体に、星のような粒が無数に輝いていた。

ゼシルウェンシー 「ぬっりぃ~~~」

ゼシルウェンシー 「まあ熱いのと冷たいのが二人いれば仕方ないですかねえ」

ゼシルウェンシー グビッ!

ゼシルウェンシー ジュースを飲み干す。

GM 探索者がぬるいジュースを傾けると、星君らも柔らかく微笑み、それに倣う。

GM ぬるいジュースを飲み込んだゼシルウェンシーの体は光を放ち、ゆっくり浮き上がる。

ゼシルウェンシー 「ふわあーっ」

ゼシルウェンシー 「いやふわあーっじゃなくて、へへへ!」

ゼシルウェンシー 「これで現世とバイバイですかねえ?」

燃彦 「然り」

冷彦 「戻ることは叶わぬだろう」

燃彦 「叶うのは、世界の在り方をただ眺めるのみ」

冷彦 「そして永久に廻る宇宙の理を」

GM そして、友彦らの言葉が終わると。

GM ゼシルウェンシーは、夜空へと昇っていった。

ゼシルウェンシー まあオカワイソウなやつらです。

ゼシルウェンシー 永久とやら!それを生きているはずなのにこんな簡単なこともわかっちゃいない!

ゼシルウェンシー ”勝てるまでやりゃ勝てる!”

ゼシルウェンシー でも今回は、今この時は。

ゼシルウェンシー ――俺の負けだ!!! それでいい!!!

ゼシルウェンシー ギャハッハハハハハ!!!!

GM  

GM  

GM 朝、何時も通り目を覚ました人々は口を揃えて「今日の夜に!」と言葉を交わす。

GM そして揃って見上げた星空が期待を裏切ったことに、肩を落とし不満に口を尖らせるかもしれない。

GM しかし。

宗教団体 「そこには悠久の時から頭上を照らしてきた美しい星々があるのだ」

宗教団体 「何を不満に思うことがあろうか」

GM 人はあっけなく、宝石箱をひっくり返したような星空の虜になることだろう。

GM 人々は指を指し、星をなぞる。綺麗だね、そう口にして、やがて笑顔を浮かべる。あなたを見つめながら。

GM END 431 光年先の君へ

GM  

GM  

GM