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エルラーデ

教える

エルラーデ

出航だ……

エルラーデ

「……どうでもいい。俺たち以外の興味のある輩にでも声を掛ければ良いだろう」

エルラーデ

すげなく手で払う。
まさしく文字通り、“よりにもよって”以上の感想は無いからだ。

エルラーデ

「どちらの味方だ……いいや、誰の味方でも無かったな、貴様は……」

エルラーデ

ため息を数度。
自由を語り、騙るこの女はどうにも語るに相いれない。

エルラーデ

抵抗も無意味だろう。
せめてものポーズとして、眉間の皺だけは崩さず。

エルラーデ

「……そんな得体の知れんものに堂々と巻き込むな」
しかし、悲しきかなすべて遅し。口だけの抵抗。

エルラーデ

ふっと軽く鼻で嗤う。

エルラーデ

「死なば諸共、貴様も囚われてもらうぞ」

エルラーデ

流れるように招待コードを表示する。
こういう時の囲いは早い男である。

エルラーデ

「となると、極めて私的な事を書くのは避けた方がよさそうだな」
そも、ソーシャルなゲームである以上それはそうなのだが。

エルラーデ

少しばかり唇を曲げて。
……そう言われると逆に書くものも出てこない。

エルラーデ

「……では」
少しだけ鼻から息を吐き。

エルラーデ

『本日の日記
今日からこのゲームを始めました。
友達の勧めで、日記の内容でキャラクターの成長が変わるとの事でとっても楽しみです。』

エルラーデ

まったくもって、当たり障りのないそれを書き上げた。

エルラーデ

「煩い……不特定多数が見る可能性があるんだぞ」

エルラーデ

「……」

エルラーデ

噂が飛躍しすぎている。
ミステリー愛好者の同好会でしかなく、そのようなものは──。

エルラーデ

──首でも取ってやろうか、あのボス。
そんな事を思いながらも、邪険には出来ず椅子を引く。

エルラーデ

「……………」
今の今、まさにこれを勧めた張本人を睨みつけて。

エルラーデ

「だ、そうだが。ヘヴィユーザーたるお前としてはどうなんだ？」

エルラーデ

ふぅむ、と息を吐き。
……かと言って。目の前の悩める学徒の様子は気のせい程度、と言われたら疑問を浮かべる。

エルラーデ

「君、詳しく話を聞かせてくれ」

エルラーデ

頷き、声色を柔らかく努める。

エルラーデ

「それはさぞ不安だった事だろう。
　ましてや、忘れた事が曖昧であれば猶更だ」

エルラーデ

「……別に。実家は確かにそうだが、関係ない」
少しばかり不服を示すように。

エルラーデ

「………それはそれとして。君以外に似たような事を言っている人はいたか？」

エルラーデ

「……」
少しばかり沈黙を挟んだ後

エルラーデ

「その孤独、さぞ恐ろしかったものだろう。相談が出来ない事ほど、寂しく恐ろしいものはない」

エルラーデ

「よく勇気をもって相談を行ってくれた」

エルラーデ

「……解決できるかは保障はできないが、力を貸そう」

エルラーデ

流れるように、意志とは反し言葉が紡がれた。

エルラーデ

「……貴様としても、厄介事は元より好むものだろう？」
ちらりと自由を謳う女にも視線を向け。

エルラーデ

「ミス研だ！」

エルラーデ

それは確かに、と少し唸る。

エルラーデ

「……これで俺たちが依頼の事を忘れたら洒落にならんが」

エルラーデ

珍しく冗談めかし。

エルラーデ

「では、それは貴様の役目だな」
何せこちらは既に書いてしまったから。

エルラーデ

「それは……成程、確かに驚く事だろう」

エルラーデ

「それは無いだろう……もしそうなら、親御さんから学校へと連絡がいくはずだ」

エルラーデ

「……」
ため息を小さく吐いて。

エルラーデ

「では、せめて今日は下校に付き合おう。誰かと一緒に帰れば、帰宅していない不安は少しは和らぐだろうよ」

エルラーデ

「……泊まりは流石に、準備もいるだろう」

エルラーデ

「……む」

エルラーデ

返答を紡ぐ間も無く、去っていった背を見ながら。

エルラーデ

「……せわしない事だ」
そう呟きながら、伝誦で受け取った記事を見る。

エルラーデ

「っ！？」

エルラーデ

「な……ッ」
思わずスマートフォンを手から離そうと。

エルラーデ

滑り落ち、音が立てば我に返る。

エルラーデ

「……なん、だ……今のは……」

エルラーデ

「…………なんでも、ない。急に画面が乱れて、驚いてしまった」

エルラーデ

平静を装うようにスマホを拾い、受け取ったはずの記事を再度みようと。

エルラーデ

「おや……？」

エルラーデ

「不具合か？　日記が受け取られていない」

エルラーデ

「……明日顔を合わせたら聞いてみるか。俺たちも帰ろう」

エルラーデ

「あまり、遅くなりすぎんように……」
寄り道をするな、と言っても聞かないのは承知の為。

エルラーデ

帰り支度を進めつつ、しかし、あれは何だったのだろうと。
……疑問を抱かぬように、頭を振り払う。
きっと、そう、疲れていたのだろうから。

エルラーデ

1DM<=5 〈∞共鳴〉 (1DM<=5) ＞ [3] ＞ 1 ＞ 成功数1 成功!

エルラーデ

1d3 (1D3) ＞ 3

エルラーデ

「……………」

エルラーデ

記憶の断絶。
一切の欠落。
成程、まさに裁断と言うが正しいか。

エルラーデ

しかし僥倖。
何故ならそれを“覚えている”。
不自然な欠落がある、と認識が出来る。
そうであるなら、異変は輪郭を持たせられる。

エルラーデ

「尾は掴んだ。──後は」

エルラーデ

それが枯れ尾花でない事を祈るくらいか。

エルラーデ

独り嗤い、“共犯者”へとコンタクトを取った。
──表なら情報に、裏なら確信に。

さて、どう転ぶ？

エルラーデ

小さく息を吐き。

エルラーデ

「よく出来たものだ」

エルラーデ

その感想に孕む意は数多だ。
しかし、形にすればそれはひとつ。

エルラーデ

「……待て、待て待て」

エルラーデ

「“俺はそれを綴っていない”……！」

エルラーデ

……厄介だ、非常に。
“通じている”……！

エルラーデ

眉間の皺を数度叩き。
息を吐き、んん、と声を漏らし。

エルラーデ

「……ああ、んん……キミは、味方。助手、そこは把握した、しよう」

エルラーデ

したくはないが。

エルラーデ

「しかし、ワンサイドゲーム？　……まるで、“敵”がいるかのような言い草だな」

エルラーデ

「……ほう」

エルラーデ

「で、あるならば。それは仮称『ジャバウォック』とでもしようか。
……切り取れた夕刻に潜んだ、怪物」

エルラーデ

「それはあくまで、『CS』を隠れ蓑にしているだけで、『CS』自体はそういった異常性はない……キミの言を信じるなら、そういう事だな？」

エルラーデ

「了解した……考える事が減るのは楽でいい」
その分増した疑問符全てに蓋をしつつ。

エルラーデ

「利害が一致している以上、キミの言う事を疑う理由もない。……明日より頼むよ、麗しの“魔女”（アリス）」

エルラーデ

良い具合にまとまった。よし。

エルラーデ

寝るか。

エルラーデ

織畑と竹取のクラスは？

エルラーデ

わかった　行間で済ませたかと思ったが仕方ない

エルラーデ

……一方その頃。

エルラーデ

廊下へと出て、教師を探す。
……授業と授業の合間だ。居てもおかしくはないと思うのだが。

エルラーデ

1DM<=6 〈＊幸運〉 (1DM<=6) ＞ [7] ＞ 0 ＞ 成功数0 失敗!

エルラーデ

ぐえっ

エルラーデ

……見当たらない。
だとすれば致し方ない、時間は掛かるが確実性はある方を選ぶか。

エルラーデ

職員室へと足を運ぶ。

エルラーデ

「失礼します」
丁寧にお辞儀をひとつ。

エルラーデ

「すみません、他のクラスの生徒についてお伺いをしたいのですが……」

エルラーデ

ひとまず担任に声を掛ける。
ひとまず。しかし声は他にも聞こえるように遠しながら。

エルラーデ

「それが名前はわかるんですが、学年もクラスも聞きそびれていて……。自分の部に興味がある、との事だったので、その確認をしたくて」

エルラーデ

いかにも学生らしい口調に努めつつ。

エルラーデ

いかにも学生らしい理由をつらつらと挙げる。

エルラーデ

「織畑鶴乃、という子なんですが」

エルラーデ

「ああ、同学年だったんですね」
ありがとうございます、と一礼。

エルラーデ

……今、職員室に1Bの教師はいるだろうか？

エルラーデ

1DM<=6 〈＊幸運〉 (1DM<=6) ＞ [4] ＞ 1 ＞ 成功数1 成功!

エルラーデ

！

エルラーデ

自分の担任へと会釈をし、1Bの教師の元へと歩み寄っていく。

エルラーデ

「1Aのエルラーデです。……先生のクラスの織畑さんという生徒についてお伺いしたい事がありまして」

エルラーデ

胸に手を当て、努めて笑顔で。
“聖職者”の真似事なら、忌々しくも慣れたものだ。

エルラーデ

頷き続ける。

エルラーデ

「……昨日自分の所属するミステリー研究会に興味がある、との事で部室に来てくれたんですが、どうにも少し様子がおかしくて」

エルラーデ

「……………えっ？」

エルラーデ

「すみません、差支えなければ織畑さんの事をもう少し詳しくお伺いしてもいいですか？」

エルラーデ

「……昨日、確かに彼女に会って、その時の彼女は本当に深刻そうな様子だったので」

エルラーデ

交渉かァ…

エルラーデ

社交術でいい？

エルラーデ

うわ！ありがとう！

エルラーデ

2DM<=6 〈社交術〉 (2DM<=6) ＞ [10, 7] ＞ -1 ＞ 成功数-1 ファンブル!

エルラーデ

🌈

エルラーデ

おわァアアア～～～っ！！

エルラーデ

「…………すみません、出過ぎた事を聞いてしまって」

エルラーデ

はい、と頷き頭を下げる。

エルラーデ

「お時間をいただきありがとうございました。……それでは、失礼します」

エルラーデ

会釈をし、職員室から去りつつ。
人気の無い廊下で『CS』を開く。

エルラーデ

「……だ、そうだ。厄介な事になってきたな」

エルラーデ

眉間の皺がいっそう深まり。

エルラーデ

「……あの時あった彼女は誰なのか、何なのか。そしてあの時“あった”事は……解かねばならない事は幾つもある、が」

エルラーデ

ロック画面で一瞬見えた時刻を思い浮かべ。

エルラーデ

「……致し方ない、そろそろ教室に戻るぞ」

エルラーデ

「まったくだ」

エルラーデ

肩を竦め、教室の方へと向かっていった……。

エルラーデ

ひとまず行く

エルラーデ

とりあえずラリアットしていい？

エルラーデ

1DM<=2 〈＊運動〉 (1DM<=2) ＞ [9] ＞ 0 ＞ 成功数0 失敗!

エルラーデ

エルラーデ怒りのラリアット！

エルラーデ

ｽｶｯ

エルラーデ

「おまッ、貴様！　お前！！！！！１！！！！！１１」

エルラーデ

「お前のせいで！！！お前のせいで！！１！！！１１！！！八雲この野郎！！１１！」

エルラーデ

ｹｵｯ ｹｵｯ

エルラーデ

「八雲！１！！１１！！！１１！！１１！！！！」

エルラーデ

めっちゃ唸りながら。

エルラーデ

「むッ………んん……」
ぐうの音も出ない。

エルラーデ

深呼吸を一度して。

エルラーデ

「……しかし八雲、お前は『CS』とやらはやっているのか？」

エルラーデ

「……使っていて記憶がなくなった、というような事は？」

エルラーデ

「普通に使う分には問題は無い……か」
となれば、やはり“あの時”に原因があるのか？

エルラーデ

「そういえばお前の魔女はどのような感じなんだ？　……そういえば、貴様も。流石に形程度は決まっただろう」
八雲、そしてバルバロスを見ながら。

エルラーデ

「……普通はこのようなものなのか？」
あれ……？という顔をしながら魔女を見せる。

エルラーデ

「……」

エルラーデ

「……貴様もか。こう被るとレアケースかややも疑いたくなるが」

エルラーデ

「このゲームの概念からしてSSRなどのものがあるのだろうか……」
リセマラなども出来ないシステムだろうし……。

エルラーデ

「ともあれ、一度ゲーム部には顔を出すか。『CS』に対する有益な情報があるかもしれん」

エルラーデ

「……竹取にでも呼ばれたのか」

エルラーデ

「暗号、だとしたら何かしらの法則に基づいたものだろうが……」

エルラーデ

「あまりに手がかりが無さ過ぎるな」

エルラーデ

やれやれ、と肩を竦めながら立ち上がる。
時は金なり。時間は有益に使うべきだ。

エルラーデ

……縛られる不愉快と、しかし繋がれる安寧に僅かに歯を食いしばりつつ。

エルラーデ

「……ああ、八雲。ひとつ頼みがある」

エルラーデ

「織畑鶴乃と名乗る生徒が来たら、教えてくれ」

エルラーデ

「……相分かった」

エルラーデ

「……」

エルラーデ

「頼んだ手間が省けた」

エルラーデ

「………………織畑さん」

エルラーデ

「“気が付いたら”……というのは、今の今かい？」

エルラーデ

だろうな、と小さく呟き。

エルラーデ

「そうさせない為にも、俺たちが何とかしよう」

エルラーデ

そんな中バルバロスへとこそり近づき、小さく呟く。

エルラーデ

「（……彼女、昨日から“欠席扱い”のようだ。出席すらままなっていない）」

エルラーデ

「（様子を見るに、サボれるタイプでもないだろう。……意思に反するレベルの異常だ。腰を据えて調査するぞ）」

エルラーデ

「ん、ぐッ……忙しない奴だ」
しかし、その口は普段よりも柔らかく。

エルラーデ

「……それはさておき。本日から本格的に調査をさせてもらおう」

エルラーデ

「ありがとう。……では、まず幾つか」

エルラーデ

「織畑さん。君は誰から『CS』の招待を受けた？」

エルラーデ

「……？」

エルラーデ

「顔を合わせるのが不安なら、俺がひとりで聞きに行こうか？」

エルラーデ

「構わない。……そういったものを自らの目で確かめるのは、誰しも恐ろしいものさ」

エルラーデ

「あとは……君は『CS』で普段どんなことを書いているんだ？」

エルラーデ

「……成程な。デンショウ……交換日記の機能で何か届いたりはしたか？」

エルラーデ

「…………もし、プライベートな内容でなければ見せてもらってもいいか？」

エルラーデ

「ありがとう……勇気を出して、か」

エルラーデ

「……そういえば、織畑さんの魔女はどんな感じなんだ？」

エルラーデ

最初に起動して以降、日記も何も……という事なら、そもそもいない可能性もあるが……。

エルラーデ

「……ああ。日記を書いていく事で成長するらしい」

エルラーデ

「これは……俺もそうだったが、初期段階だな。日記も何も書いていないから、だろうか？」

エルラーデ

ふぅむ、と唇に指を当てる。

エルラーデ

「……『CS』に関して、いくつか疑問点が出来た。一緒にゲーム部へと行ってみないか？」

エルラーデ

あー……という顔。

エルラーデ

「……わかった、気まずいという事ならここで待っていてくれ。ウチのボスは暇を潰すのに丁度良いだろう」

エルラーデ

「……感謝する。それでは」

エルラーデ

そう言って、ゲーム部へと向かっていった……。

エルラーデ

（舞台袖から出てくる）

エルラーデ

「……ここが噂の」
部室の前、確認するように周囲を見る。

エルラーデ

「……失礼。ここがゲーム部で間違いないか？」

エルラーデ

「少々訪ねたい事があってな……主に『CS』の件で。入っても？」

エルラーデ

ありがとう、と会釈をし部室の中へ。
そのまま御伽と呼ばれた男の元へと歩いていく。

エルラーデ

「君が御伽……で合っているか？」

エルラーデ

「ああ。少々それで“問題”があってな……」

エルラーデ

ありがとう、と呟いた後に続ける。

エルラーデ

「CSプレイヤーの生徒の一人が奇妙な現象に巻き込まれてな。どうにも記憶が一部曖昧になっているようで、違和感を感じ始めたのが丁度CSをプレイし始めた直後……と」

エルラーデ

「……オカルト染みた話だがな」
そう、苦く笑う。

エルラーデ

「……そうか」

エルラーデ

「………そういえば、このゲームは一体誰が作ったものなんだ？　β版だかで招待性で登録する、というのは知っているが」

エルラーデ

なんてモンが出回っているんだ。
眉間に皺が寄る。

エルラーデ

「……成程」

エルラーデ

自身のCSを開き、書庫を開こうと。
そうすれば、当然自身の“魔女”も画面に大写しになる。

エルラーデ

「？　そ、そうだが……」

エルラーデ

アリスを見せる。

エルラーデ

「しゅ？」

エルラーデ

「………」
気圧された。色々。

エルラーデ

「いや、あの、俺も知らん……」

エルラーデ

「……………んんっ、CSに詳しい君でさえ知らん形態なのか。彼女は」

エルラーデ

「は？」

エルラーデ

「は？？？」

エルラーデ

「見ていないが多分ダメだな」
汚物を見るような目。

エルラーデ

「やかましい、次元の壁に阻まれてろ！」

エルラーデ

ダメだこいつ……早くなんとかしないと……。

エルラーデ

「……ん゛ん゛ッ！」

エルラーデ

強めの咳払い。

エルラーデ

「そんな事より！　……そういえば、ここに雁鳥という部員が居ると聞いたんだが」

エルラーデ

ありがとうと言って早歩き。
ウチの魔女から一刻も早く引き剥がす為にも。

エルラーデ

「また後でな！！！」
その後がいつになるかは明言しない。

エルラーデ

「……！？」