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ヘラジカ

「むっ！来たか！3人とも！」

ヘラジカ

そこに先に立っていたのは、雄々しい角を持つ、長身の女性であり
やってきた3人を歓迎するように、頷きながら。

ヘラジカ

「……？？？？　おいちょっと待て……大丈夫なのか？」

ヘラジカ

「まずい変な音がしている！！」

ヘラジカ

「？？？？？？？？？？？」

ヘラジカ

「エンジニア部門！！ヘルーーーープ！！！」
廊下の方に大きな声で叫ぶ。

ヘラジカ

まともそうな反応をしているエミール、そしてヤミを見て
なんとかしようと色々ヘラジカなりに考え。

ヘラジカ

「コ、コホン！アレだ！……なんだ！ああ、そういうことだ！」

ヘラジカ

「…………こ、これから話を聞けば、ああ、いいんだ、ああ　……ああ」

ヘラジカ

いつもであれば、威風堂々としているヘラジカであったが
今回ばかりは、初手から気押されながら。

ヘラジカ

冷や汗を浮かべながら、エミールと目を合わせ、こくりと頷いて。

ヘラジカ

逸らされた……！？

ヘラジカ

「隊を任されて初日目、私はもう既に、色々不安だ」

ヘラジカ

「……………。」
しばらく考え込むも。

ヘラジカ

「まぁ、なんとかなるだろう！ハッハッハッハ！」

ヘラジカ

もう考えないことにした。

ヘラジカ

「まぁ言葉で語らい合うというのは、完全ではないからな！
　こうしてファーストコン……コン、コン……ﾌﾆｬﾗﾗ……では
　互いにぎこちなくなってしまうのも、当然と言えば当然だ」

ヘラジカ

「それに今回の任務も、簡単なものだ
　初回にして、死線を潜り抜け、などというような任務は受けんからな！」

ヘラジカ

エミールの小声に、獣耳がぴくりと動いて。

ヘラジカ

「…………………ありがとう」（超小声）

ヘラジカ

「大丈夫だ大丈夫大丈夫！！！！」（超大声）

ヘラジカ

「まずい任務説明に中々以降ができないぞ！」

ヘラジカ

「ああ、ヤミと言ったな？まさしくその通りで……どわああああ？！？」

ヘラジカ

思いっきり体を逸らし上げ、超音量に参ってしまいながらも。

ヘラジカ

「まずいこの隊、まとまりがない」

ヘラジカ

「何この………何？？？？」

ヘラジカ

「なんで私にこの隊が預けられたんだ？？？？？」

ヘラジカ

「あ、うん」

ヘラジカ

ヘラジカは二度目にして、考えることを諦めた。

ヘラジカ

「ああそうだ、だが今回は少し違う任務となる
　いきなり紛争の中に我々が飛び込んだところで
　……せいぜい、人の盾になるのが精一杯なところだろう」

ヘラジカ

「え、ちょ、あの、やめて……」

ヘラジカ

「なんで？どうしたらいいんだ？ん？？？
　説明できるタイミングが見つからないぞ？？？？」

ヘラジカ

「まずい常識人が一人もいない」

ヘラジカ

「まぁ落ち着け、どうどうどう」

ヘラジカ

ヤミとアンジェラの間に割って入りながら。

ヘラジカ

そして、エミールに頷く。

ヘラジカ

「まぁお前らにはそれなりの能力を認められ
　このロドスのオペレーターとして席を持っているわけだ」

ヘラジカ

「なんで、まぁ、つまりだ、お前らは優れている
　そしてそれを纏めきれていないのは、私のせいでいい
　だから、その矛先は私に向けるべきだ」

ヘラジカ

ヤミにそう諭した後。
改めて、コホン、と咳払いをし。

ヘラジカ

……まぁ、今回の任務は、隊長に任される上での、なんだ……
器とか、なんかそういうのを……伸ばすための、アレを……してるんだろう。

ヘラジカ

うん…………。

ヘラジカ

「天災、研究、調査、洞窟、以上」
単語だけ並べた。考えることを半ば投げ捨ててる。

ヘラジカ

「うん」

ヘラジカ

もう嫌な予感しかしないけど、うんと答えてしまった。

ヘラジカ

「うわ理解が早いな少年！？」

ヘラジカ

自分で超不適切な説明をしておきながら、少年の状況把握能力に脱帽する。

ヘラジカ

エミールの肩に、ポン、と手を乗せ、にこりと笑い。

ヘラジカ

「案ずることはないさ、今回はただの調査
　敵勢力の確認は、今のところはない
　それに、ああ、原生生物に関しても未だ報告は無い」

ヘラジカ

「しかし驚いたな、入社したばかりだというのに
　そこまで知っているとは………
　……君の方が隊長、向いているのではないか？」

ヘラジカ

「今回は、我々が隊として行動できるかどうかの
　軽いテストのようなものだ、だから肩の力は落とすといいさ
　ハッハッハッハ！」

ヘラジカ

続けるヤミの言葉に、こくりと頷く。

ヘラジカ

「……そうだな、"異常事態"がもしも我々の目に映るならば
　相応の対処はせねばならないだろう」

ヘラジカ

「だが今回の任務は、比較的簡易なもののはずだ……
　……いや、簡易であるからこそ、油断はせんように、ということか
　うむ、良い心構えだ、オペレーター・ヤミ」

ヘラジカ

……ふむ。
なるほど、面構えが変わったな？

ヘラジカ

それぞれの顔を、順々に見渡しながら、にやりと笑い。

ヘラジカ

「……前線オペレーターとして志願する者達ならば、そうではなくてはな」
踵を返し、雄々しい背を向けながら。

ヘラジカ

「え？あ、え？あ、ああ　ん？　ああ、そうだな　　ん？ああ」

ヘラジカ

「………まぁ、これだ」

ヘラジカ

腕を捲り上げると─────。

ヘラジカ

そこには、歪な形をした黒の鉱石が、まるで腕から生えているように。

ヘラジカ

「構わないさ、少年　説明、ありがとう」
にこりと微笑み。

ヘラジカ

「私は、言葉を使った説明は不得意だからな！ハッハッハ！」
豪快に笑いながら。

ヘラジカ

「まぁ、いずれなんとかなるさ、そのために我々は」

ヘラジカ

「戦っている」

ヘラジカ

ヘラジカは少なくとも、そう信じている。

ヘラジカ

そして歪なソレを隠すように、裾を戻しながら。

ヘラジカ

「では地質調査へと向かう、準備はいいか？」

ヘラジカ

─────こつ、こつ、こつ、こつ。
足音が、後方から響く。
その音は、洞窟内に反響して。

ヘラジカ

両剣を肩に乗せながら、一同を目やって。

ヘラジカ

「エミール、それは正しい」

ヘラジカ

「3人とも、情報収集お見事だ、想像以上の成果だ」

ヘラジカ

「この時点で、この隊としての成果は十分だろう」

ヘラジカ

「─────帰還だ」

ヘラジカ

「ああ」

ヘラジカ

「……この先は、この隊で成せる行動域を遥かに超えている
　既に連絡は取った、このまま帰還してくれて構わない」

ヘラジカ

「今回の任務は………簡易なものでは、無かったようでな」
困ったように笑いながら。

ヘラジカ

ヤミの言葉に、フッ、と柔らかな笑みを浮かべて。

ヘラジカ

「……違うさ、逆さ」

ヘラジカ

「エミール、ヤミ、アンジェラ
　お前達3人は、"ファーストコンタクト"で私が抱いた評価よりも
　遥かに優れた結果を今この場に残し、そしてそれだけじゃない
　"隊"として、チームとしての行動も、即席ながら出来ている」

ヘラジカ

「私は、大きく評価をしている」

ヘラジカ

「だからこそ……だ　……今回は、予測がつかない
　こんな任務で失われていい命ではない」

ヘラジカ

「……お前達には、もっと輝くべき場所があるだろう？」
くすり、と笑いながら。

ヘラジカ

「こんな、辛気臭い場所で命を使い果たす必要は……無いさ」
3人の顔を、順々に見やって。

ヘラジカ

「というわけで、この先の仕事は、私一人で引き受けるよ」

ヘラジカ

両剣を担いで、ニッ、と笑う。

ヘラジカ

「………ん、まぁな……」

ヘラジカ

「少なくとも引継ぎが来るまでは、"深層"まで向かわないとな」

ヘラジカ

そして、両剣の先で、小動物も通れないような穴を突き。

ヘラジカ

「"感染者"の使いどころとしては、適しているだろう？」
ハハハッ、と笑う。

ヘラジカ

─────熟練オペレーター。
それは、他の誰でも無い。

ヘラジカ

ここにいる。

ヘラジカ

「おっと、どこへ行くんだ？」

ヘラジカ

行先に─────雄々しく立つ女が、いた。

ヘラジカ

柔らかな声、緩んだ頬、されど─────。

ヘラジカ

目は、笑ってはいなかった。

ヘラジカ

「同情なんかじゃない」

ヘラジカ

アンジェラの肩に手を置いて。

ヘラジカ

「……憤る気持ちは、分かるさ、自分自身がそこにいない
　いるのに、いない、存在が不確かになること
　そういった状況はな　………不安になる、誰しもがな」

ヘラジカ

エミールの方へ目を向けつつ。アンジェラの言葉の続きを待つ。

ヘラジカ

はぁ……と、息を漏らし。

ヘラジカ

「………だったらよ」

ヘラジカ

「─────自分の身を大事にしとけって」
ニッ、と笑い、そしてアンジェラの体を突き飛ばした。

ヘラジカ

「答えがお前を待ってんだろ？」

ヘラジカ

「スーパーコンピューターなんだろ？じゃあ、猶更じゃねぇの」

ヘラジカ

「ま、少なくとも私は、お前さんの優秀さは知ってっからよ」
にやりと笑い、そしてアンジェラがしっかり調査した情報を端末で示し。

ヘラジカ

「卑下することは、な～んにもねぇ　いつかお前自身が見つかる時が来る」

ヘラジカ

「可能性に随分と満ちてるじゃねぇの、羨ましい限りだ、ハッハッハ！」

ヘラジカ

「ま、だが私は、感染者なもんでな、まぁ、最初にさ
　私は、"ああ"言ったがよ」

ヘラジカ

踵を返して。

ヘラジカ

ヘラジカ

「─────治療法なんて、見つかりっこ、ねぇしな」

ヘラジカ

ヘラジカ

そう告げ。

ヘラジカ

「……いつくたばるか分からねぇような命を使い切る場所ってのは
　まぁ、限られてるんだわな　……自分自身が納得するような死
　そいつを私は、探し続けてるってのは、あるかもだしな」

ヘラジカ

「………………」

ヘラジカ

ちらりと目を向けるも、痛ましく、目を背け。

ヘラジカ

「…………うぉっ……！？」

ヘラジカ

痛ましい表情を浮かべる少年を見て。

ヘラジカ

「…………逃げることは、恥ずかしいことじゃないぞ」

ヘラジカ

にこりと、笑ってみせる。

ヘラジカ

「いいんだ、笑われたっていいじゃないか
　エミール、お前には守りたい何かがあるんだろう？」

ヘラジカ

「なら、ここじゃないさ、死に場所は」

ヘラジカ

「……隊長命令だ、アンジェラ、エミールを連れて撤退だ」

ヘラジカ

「……ヤミ」

ヘラジカ

「着いて来い」

ヘラジカ

「………アンジェラッ！！」

ヘラジカ

目線を合わせ、頷き。

ヘラジカ

「……ま、危なくなったら、ヤミも撤退だからな？」

ヘラジカ

そして、両剣を構え。

ヘラジカ

「─────"穴"を作るッ！！瓦礫をアーツで全部切断しろ！！
　できる限り崩落しないように力加減はするが……完全とは、いかん！！」

ヘラジカ

ズゴォオオオオオオオッッッ！！！！
激しい一閃が放たれる。硬く、頑丈な岩盤へと。
それは、アーツによるものではなく、ヘラジカの地の力。

ヘラジカ

……もちろん、感染者となり、原石の力が
身に宿り、ある程度のブーストは掛かっているだろう。
しかしそれをヘラジカは嫌う。

ヘラジカ

─────己の武のみで戦い続ける。それを、誇りとする。

ヘラジカ

「─────続け！ヤミッ！！」

ヘラジカ

怒号が、洞窟内で響き。

ヘラジカ

否が応でも、体は原石に反応する。
黒の瞳が、朱に帯びていく。
暗闇の中、赤の光を放ちながら。

ヘラジカ

ヘラジカ

ヘラジカ

ヘラジカ

─────そして、視点は変わり。

ヘラジカ

にやりと笑う口角。

ヘラジカ

ヘラジカの顔が映し出され、そして冷や汗が浮かぶ。

ヘラジカ

「………なるほどな、この異常現象の原因はよぉ、ヤミ」

ヘラジカ

・・・・
「─────コイツらかッ！」

ヘラジカ

既にヘラジカは、臨戦態勢であった。
暗闇の中、朱を帯びる瞳は、周囲へ注意を払う。

ヘラジカ

それだけでは無かった。爆発的に集まったオリジムシの群は
原石の影響を受け、高いエネルギーを保有していた。

ヘラジカ

活性化していた。つまりそれは、獰猛さも増やしていることを現し。

ヘラジカ

「一気に片づけるッッ！！！フンッッ！！！！」

ヘラジカ

一閃。

ヘラジカ

禍々しい刃をした両剣により、オリジムシの群は一気に消し飛ばされる。
……が、当然のように、次から次へと湧き出る。

ヘラジカ

「………チィッ！！！そっちはどうだッ！！！」

ヘラジカ

ヤミに背を預けながら、叫び。

ヘラジカ

「御意ッ！！そっちの援護に行くッッ………ぐッ！！！」

ヘラジカ

オリジムシの群の一撃を受け、鮮血を撒きながらも
腕で払い、なんとか体勢を戻すも。

ヘラジカ

「クソッタレェ………！！！間に合わ………！！！」

ヘラジカ

「！？」

ヘラジカ

「な、なんだぁああッ……！？！？って、お、お前らッ……！？！」

ヘラジカ

「─────ッッ………！！！？」

ヘラジカ

少年の叫びに、ヘラジカの瞳は大きく開いて。

ヘラジカ

ま、まさか、エミールに……ここまでの力が、だとッ……！？

ヘラジカ

「…………フッ」

ヘラジカ

戦場の中、笑い。

ヘラジカ

そして─────ブオォオオンッッッ！！！！

ヘラジカ

エミールのすぐ隣へと瞬間的に猛進し
そして─────周囲のオリジムシの群を薙ぎ払い。

ヘラジカ

その残骸が宙に浮きながら。

ヘラジカ

「…………言うじゃないか」

ヘラジカ

「……全く、君は、君達は、どこまでも私を驚かせるよ」

ヘラジカ

「─────ハッハッハッハッハッ！全く！これは敵わないな！」
豪快にヘラジカは大笑いをし。

ヘラジカ

ガァンッ！！と、地上に大きな刃を立てながら。

ヘラジカ

「……そうなれば、私もなんとしても、必ず
　"全員生還"を果たさねば……だなッ」

ヘラジカ

「─────隊員ッ！揃えッ！！！」

ヘラジカ

「地下に潜み、原石を増幅させ、天災を発生させ得る
　オリジムシどもを一匹残らず、一掃するッ！！！！」

ヘラジカ

「─────かかれッッッ！！！」