Ccfolia Log

ぱん

ぱん

獣の体毛は、熱を遮断するために存在する。
そのために、太陽の光が当たっても、しばらくは動けるようになっているのだが。

ぱん

……それはそれとして、非常に暑かった。
体毛で遮断できないほどに、動物達は疲弊していた。

ぱん

そうして、とある動物は森へと入っていった。
真っ白な犬が、てくてくと。

ぱん

耳をぴょこりと、そして鼻をすんすん。

ぱん

森の独特な匂いだ。
土、虫、そして、他の動物の匂い。

ぱん

木陰の涼しさが、思考を冴えさせていく。

ぱん

そうして歩いていると……。

ぱん

「…………！」
とある動物と出会った。

ぱん

一匹の猫と、そして犬が目を合わせ。

ぱん

そこらでよく見るような光景であるが─────。

ぱん

この物語は、"そうではない"。

ぱん

「こんにちは、今日も暑いですね」

ぱん

─────一匹の白い犬は、猫に愛想良く話しかける。
ぱたぱたと、尻尾を振りながら。

ぱん

人語を話す犬。人語を話す猫。
─────ふしぎな世界が、広がる。

ぱん

「あはは、全くですよ、ボクも逃げるようにここに来たものですから」

ぱん

「それにしても森は、とっても涼しいですね
　家の中とは違った涼しさで、心地が良いです」
ちゃりちゃりと、首輪に付けられた「ぱん」という札が揺れながら。

ぱん

白い犬は、緑一面の木々を見渡しては、尻尾を振るのを止めなかった。

ぱん

そうですね、と。へっ、へっ、へっ、とベロを出しながら頷く。

ぱん

「いやぁ、本当に幸運でしたよ
　普段のボクはもう、本当に不幸続きで……ふぎゃんっ！！」

ぱん

木の根っこにこけてしまう。

ぱん

「いったぁぁ～～～～……！？くぅぅ……やっぱ不幸だぁ……
　……いやぁ、違うかぁ、今のはボクの不注意かなぁ……」

ぱん

なんとも言えぬ悲しげな表情を見せながら、野良猫の方を見やり。

ぱん

「あ、す、すみません……！ほんの少し転んだだけで……
　……えへへ、優しい猫さんですね」

ぱん

「あなたのお名前は？」
小首を傾げながら。

ぱん

「結衣さん！とてもいいお名前ですね！」
ぱたぱたと尻尾を振りながら。

ぱん

「ここで会ったのも何かの幸運でしょう！きっとそうに違いないです！
　……そうであってほしいなぁ～……」
何故か段々とテンションが下がっていきながらも。

ぱん

「一緒に、少し歩いていきませんか？
　……あ！駆けっことかどうです？ボク、好きなんですよ～」

ぱん

はい！と頷く。

ぱん

「……あはは、と言ってもボク、さっきみたいにちょっと
　よく色々不幸なことが起こりまくってて……」

ぱん

「やった！じゃあやりましょうやりましょう！」

ぱん

そうしてぱんは森を走っていく。
……途中、枝に引っかかりながら。

ぱん

「あ、あははは……」
へんにゃりと、哀愁漂う顔。

ぱん

そんなこんなで進んでいると─────。

ぱん

ぴょこっ、と白い尻尾を止め。

ぱん

「おやっ……！休憩中でしたか！
　お騒がせして申し訳ありません……」

ぱん

一匹の狐と目が合い、申し訳なさそうに頭を下げる。

ぱん

へんげ判定で知ってたりします？

ぱん

1d0+2>=　【へんげ】判定

ぱん

🌈

ぱん

1d0+2>=5　【へんげ】判定 (1D0+2>=5) ＞ 0[0]+2 ＞ 2 ＞ 失敗

ぱん

知りませんでした

ぱん

ぽかーんとした馬鹿顔で見つめる。

ぱん

「すみません……いつも遊ぶことに夢中なものでして……
　あなたについて教えてもらっても良いでしょうか……！
　是非とも、お友達になれたら、きっと楽しいですし！」

ぱん

ぴょこぴょこと尻尾を振りながら。
ボクは、ぱんって言います！と自己紹介をし。

ぱん

わぁ、とっても偉い変化さんだった……！

ぱん

はい！と返事をし。

ぱん

「でもボク達はこれで、リオウさんのことを知れました
　というわけで……」

ぱん

「遊びましょう！」
ぱたぱたと尻尾を振りながら、馬鹿顔に。

ぱん

とっても偉い方を知らなかったという不幸はあったけど。
でも知っちゃえばそれはもう、幸せ、だよね！

ぱん

「あぁぁぁぁ……不幸だぁぁ……」

ぱん

がっかりとした表情になる。
白い尻尾も垂れ下がる。
結衣にこくりと頷きながら。

ぱん

くぅ～ん……と鳴き声が漏れる。

ぱん

そうですね、結衣さんと一緒に遊ぶしかないですねー……。
と言いながら。

ぱん

「……？頼み、ですか？」
小首を傾げ。

ぱん

「！！！！！」
ぴこん！と耳を立てる。

ぱん

「幸せに！！？！？！？」

ぱん

「無いです！すっごく気になります！是非とも聞かせてください！」

ぱん

ぶんぶんぶん！と尻尾を勢いよく振る。

ぱん

「はい……この不幸体質、どうにかしたいものですから……！」
こくりと頷き。

ぱん

「ええ……！？とても偉い変化のリオウさんですら見つけられなかった！？」

ぱん

そして、リオウの表情を見て、同じようにじゅるりと。

ぱん

「な、なんだかボクも、気になってきちゃいました……！
　結衣さん結衣さん！一緒に探しましょうよ！」

ぱん

これでもかというくらいに尻尾を振りながら。

ぱん

はい！と元気よく返事。

ぱん

「リオウさん！その幸せのケーキ！必ずボク達が見つけてきます！」

ぱん

くぅ～ん、と鳴き声を漏らしながら。

ぱん

「！！！　わ～～～～～～い！！」

ぱん

その場でぐるぐると回りながら……。

ぱん

ぐえー。とまたコケるのであった。

ぱん

ぱん

場面『恋が叶う？恋って……なーに？』　場所：街　時間：午前

ぱん

そうしてぱんと結衣は、再び太陽の日差しの下に向かうことに。

ぱん

とっても、暑い。

ぱん

ああ、不幸だ……もう少し、涼しければいいのに……。
……でも、頑張らなくちゃだね！

ぱん

それに、一緒に遊んでくれる結衣さんだっているんだから
だから、楽しんでいこう～！

ぱん

そう思いながら、ぱんは─────。

ぱん

ふしぎ4消費

ぱん

「─────よっとっ！これで大丈夫そうかな？結衣さん」

ぱん

真っ白な長髪の、困り眉な少年へと変わる。

ぱん

首にはちゃんと、首輪もある。

ぱん

えへへへ～、と困り眉で笑う少年。

ぱん

「うん！だから結衣さんも、ほら！」

ぱん

「おぉぉ～～～……！」
自分よりも少し背丈の高い少女になった結衣を見て。

ぱん

「あれぇ！？結衣さんって、女の子だったんですね！？」

ぱん

「えっ！？あ、あーーーーーーー！いえいえいえいえ！
　なんでもありません！その、すっごく可愛いですよ！
　お目目とか……毛先とか、あと、服とか！」

ぱん

両手をぱたぱたと振りながら、困り眉で。

ぱん

「それに、うん、やっぱり！
　ちゃんと女の子してます！可愛いです！」
結衣のほっぺを勝手に、むにむにする。

ぱん

柔らかいです！と元気よく主張。

ぱん

「あっっ！？す、すみません……！」
ぺこぺことしながら。

ぱん

「！　……えへへへ～！」
人懐っこい、無邪気な笑顔を見せ。

ぱん

「それじゃあ……気を取り直して！
　調査、開始しちゃいましょー！おー！」

ぱん

拳を上げながら、元気よく歩き出す。
ずしん。電柱とぶつかる。

ぱん

犬も歩けば、棒に当たる。

ぱん

……そ、そんなわけで！二人の大冒険が始まりましたとさ！

ぱん

ぱん

恋愛成就、という話が、リオウさんからありました。

ぱん

……うーん、ボクはまだ、そういうのしたことないけど。

ぱん

でも、ボクのご主人様は、家族と一緒にいて、すっごく幸せそうにしてる。

ぱん

……一体、どんな気持ちなんだろうなぁ。

ぱん

そんなことを思いながら、リオウさんがやっていたように
ぱんも聞き込み調査を開始した。

ぱん

ぱん

カップルに成り立ての人達に聞き込み調査します！
聞くことはずばり……幸せのケーキについて！
何判定でしょうか！

ぱん

1d0+0>=5　【おとな】判定 (1D0+0>=5) ＞ 0[0]+0 ＞ 0 ＞ 失敗

ぱん

弱点：ぶきようもあるので……想い6消費で、成功です！

ぱん

「こんにちは！」
ぺこりと、困り眉ながらも元気よく頭を下げ。

ぱん

「実は……」
二人に、幸せのケーキについての噂話を聞いてみる。

ぱん

そうですかぁ……とテンションが下がっていると。

ぱん

「……！」
目をパチパチとさせ。

ぱん

「ふむふむふむっ！ケーキ屋さん！」

ぱん

「確かに……ケーキのことなら、ケーキ屋さんに聞くのが一番！」

ぱん

「ちなみに、なんというケーキ屋さんでしょうか？」

ぱん

「わ！ありがとうございます！ここですね！
　では早速行ってみたいと思います！
　お時間、ありがとうございましたー！」

ぱん

「見てください結衣さんこれ、よくわかんないですけど
　急に美味しくなったということで……これは……！
　何か、"ふしぎ"な匂いを感じませんか……！？」

ぱん

ぱんは飼い犬ということもあり、電子機器についての情報は
ある程度なら知っていた。

ぱん

きょとん、とした様子の結衣を見て。あっ！と思い。

ぱん

「そうですよ結衣さん、ここです！ここに行けばオッケーです！」

ぱん

「じゃあ早速！行きましょー！」

ぱん

こうして色んなところに行ったり来たりするのは、楽しい！

ぱん

そんな表情の結衣を見て、きょとん、と小首を傾げる。

ぱん

「……あ、なるほど！」

ぱん

結衣の手を掴み、目的地に歩いていく。

ぱん

「？　ああいえ！だって結衣さん、さっきのお二人を熱心に見てましたので
　あのお二人のように、手を繋いでみたいのかなー？……と！」

ぱん

「うぇえっ！？ち、違いましたか！？」

ぱん

「！　えへへへぇ～」

ぱん

「そうですね！見えてきました！多分あの店が、ケーキ屋さんですね！」

ぱん

くんくん、と鼻を動かす。
じゅるり、甘い香りが漂ってきた。

ぱん

「わぁぁ……！すっごく美味しそう……！
　結衣さん！早く行きましょう！早く！」

ぱん

結衣の手を引っ張り、ケーキ屋さんまで走って行く。

ぱん

「わぁぁ……！大人気……！」

ぱん

「あ、結衣さん結衣さん！目的を忘れちゃいけませんよ！」
よだれを垂らしながら。

ぱん

わくわく！とした表情。

ぱん

ばしっ！と手を上げる。

ぱん

・・・・・
「どうやって、幸せにできるケーキを作れるようになりましたか！」

ぱん

これまた単刀直入に切り込む。

ぱん

評判が微妙だった時と、そして今。
この間で一体何があったのか？という質問だ。

ぱん

「やったー！ありがとうございますー！」
同じく頭を下げ、感謝を伝える。

ぱん

こくりと頷き。

ぱん

「でも……タジマさんっていう人なんて
　この街にいっぱいいますよ結衣さん……？」
困り眉で見上げて。

ぱん

「店員さん！」
ばっ！と手を上げ。

ぱん

「ボク達……幸せのケーキというものが一体どういうものなのか
　すぅ～～～っごく、知りたいんです！
　その、タジマさんという方がいたお店、教えてくれましたら……」

ぱん

「ボク達からも、店員さんに幸せのお裾分け
　どんな形であっても、やります！」

ぱん

「むむむ……それなら、どういう時に見つけたのか……
　小さなものでも良いので、是非……！どうか……！」

ぱん

ぺこり！と頭を下げ。

ぱん

「……女の子？」

ぱん

結衣と声が被る。

ぱん

えへへ～……と、ぱんも小さく笑い。

ぱん

「ふむふむふむ……」
もしかして、変化……なのかな……？

ぱん

「鍵……鍵……！？」

ぱん

「むむむ……！？娘さんですか……！
　……ちなみに店員さんの娘さんのお名前は？」

ぱん

「うぅぅぅ～～～……！そこをどうかっ！
　ボク達、悪い人じゃないですから～……！！
　えっと、えっとえっと……ボク達は……」

ぱん

うぅぅ、変化、だということは、人間さんに話しちゃいけないですし……。

ぱん

「と、とにかくっ！どんな小さな情報でも良いので！
　そのお店に纏わることが、知りたくて……
　……みんなを幸せにさせられるなら、ボクも……そう、してみたくて」

ぱん

「………！！」
ぱぁぁ、と顔を上げ。

ぱん

「ありがとうございます……！」
深く頭を下げる。

ぱん

結衣の言葉に、嬉しそうにはにかみつつも、首を横に振り。

ぱん

「……結衣さんの、真面目さ、誠実さ、頑張り屋さんなところ
　そんな部分もあったからこそ、ボクも、やるぞー！って
　そう思えたんです」

ぱん

「ボクは、不幸でも、それでも……誰かと一緒にいる時間は
　楽しいって思えます、だから……ボクと一緒に
　こうして頑張ってくれる結衣さんには、感謝しかありません」

ぱん

困り眉で笑いながら。

ぱん

結衣に、にっこりと笑う。

ぱん

そして、ケーキ屋を後にする前に。

ぱん

店員さんの方を少し振り向き。

ぱん

─────ぴょこっ、と犬耳を見せ。
また、困り眉で笑いながら、結衣の手を引っ張り、どこかへと去っていくのであった。

ぱん

教えたくないことを教えてくれたのだから。

ぱん

─────こっちも、秘密を教えなくちゃ、ねっ！

ぱん

ぱん

場面『ふしぎな鍵の在処』　場所：桜麗高校　時間：午後

ぱん

ぱん

よーし！探すぞー！
元気よく、ぱんは高校の敷地内へと入り……。

ぱん

………？
待ち合わせ場所って、どこだろう！？

ぱん

「ゆ、結衣さん！？どうしよ～！？
　ボク達、そういえば……店員さんの娘さんのお友達のこと
　……なーんにも、知らない～～～！？」

ぱん

が～～～～～ん！と困り眉で、頭に手を当て、愕然とする。
そんな、ぱんの情けない声が校舎内に響く。

ぱん

「わふぅっ！？」

ぱん

しゅばっ！と身を翻し、現れた人影の方へ。

ぱん

「！？！？　ど、どうして笑うんですかー……！？
　……で、でも、楽しそうなので、それはそれでいいかも？」

ぱん

困り眉で、表情のまま困惑しながらも。
まぁいいかシンキング。

ぱん

「というと……あなたがもしかして……？」

ぱん

少女をじっと見上げ。

ぱん

「わふぅ！？」

ぱん

ぱんの白いくせっ毛が、ぴょいん、と跳ねる。

ぱん

「！！　は、はい！！
　ずばり……幸せのケーキに纏わる、お店について！です！」

ぱん

ばっ！と手を上げながら。

ぱん

はい！それです！と頷きながら。

ぱん

「はひっ！ボク達、悪い人じゃありませんっ！」
思わず直立しながらも。

ぱん

……怪しい、人間さんにとっての変化は……。
…………はいっ。

ぱん

それを見て、ハッ！と思い、ぱんも深々と頭を下げる。

ぱん

「！　やったーー！　……ボクの不幸体質が悪さしなくて良かったです」
ホッ、と安堵に胸を撫で下ろし。

ぱん

「むむ！お忙しいようなのですね！
　あまり邪魔はしてはいけないかもなので……
　お話は、すぐに終わらせるようにしましょう！」

ぱん

はーい！と着いていく。

ぱん

思わずその音量に、びくぅ！？と犬耳が生えそうになり。
慌ててそれを手で隠し、元に戻す。

ぱん

「初めまして！ボクは、ぱんと言います！」
ぺこりと御辞儀をする。背の小さな少年。

ぱん

困り眉ながら、えへへ、と人懐っこく笑う。

ぱん

「そのー、実は……雪路さんが、幸せのケーキを売っているお店の
　鍵を持っているとお聞きしまして……色々、お話を聞きたく！」

ぱん

「！　本当ですか！？ということは……お店の場所も、ご存知で……！？」

ぱん

「むむ……まだ、ですか」

ぱん

「─────ではでは！お店探し、ボク達にもお手伝いをさせてください！」

ぱん

ばっ！と手を上げ、立候補する。

ぱん

「！？　は、はいっ、それが無いと、お店には入れないと聞きましたので…」

ぱん

「えっ！？い、いいんですか……！？
　だって、雪路さんも探していたのでは……」
おろおろとしながら。

ぱん

うんうんうん！と結衣に同意するように頷く。

ぱん

「……………」
眉をハの字にし。

ぱん

「………そんなことは、決してありませんよ」

ぱん

「だって─────ボク達が、こうして来たんですから」

ぱん

「見つからないという"不幸"は、確かにあると思います……ですが」

ぱん

「その"不幸"をどうか、ボクにお裾分けできませんか？
　……必ず、雪路さんを、幸せにしてみせるので！」

ぱん

つまりは─────お店を見つけることができたら。
二人にも、その場所を教える、という意だ。

ぱん

わふぅ～……と心地よさそうな顔になりながら。

ぱん

……結衣さん……。

ぱん

困り眉で、照れて恥ずかしくなりながら。

ぱん

その提案に、ぱんもにこりと笑う。

ぱん

そしてその同意を求めるように、雪路とかなかの方へ見やる。

ぱん

「！　はいっ！わかりました！」

ぱん

「はい！お気をつけてください！」

ぱん

かなかを見送るように、手をぱたぱたと振る。

ぱん

「！？！？！？　お、お邪魔しまーす……？」
な、なんだろう……？すっごく、猛々しいような……？

ぱん

─────ぎゅっ。
結衣と手を繋ぐ。

ぱん

そして、困り眉で、にこっ、と笑う。

ぱん

《だいじょうぶ》

ぱん

「結衣さんの"不幸"も、ボクが吸い取っちゃいますから」

ぱん

……結衣さん、すごく面倒見が良くて、頼れる方で。
それでも、怖いものがあるのだから。
やっぱり、女の子な部分もあるんだな、って。

ぱん

可愛いな、と思うのでありました。

ぱん

そうして雪路に案内され。

ぱん

「……あっ！え、えっと、すっごく、大きいおうちですね……！」

ぱん

屋敷内をきょろきょろと見渡しながら。
……ご主人様のおうちよりも、うん、すっごく大き……。

ぱん

「わふぅっ！？」
た、食べ！？

ぱん

「む、むむむ……そう言われると、ボクもなんだか自信が……」

ぱん

「……あ！えっとえっとそれで確か……そうです！鍵です、鍵！」

ぱん

屋敷のインパクトにすっかり忘れかけたが、メインはそれだ。

ぱん

びくんっ！？

ぱん

鹿威しの音にビビるぱん。
犬耳がまたしても生えそうになるも、なんとかぐっと抑える。

ぱん

「……な、なんだか、ドキドキしますね、結衣さん……」
冷や汗を垂らしつつ。

ぱん

「！？」

ぱん

「も、もし本当にそうなりましたら……！
　ボクが……！《みがわり》になりますから！」

ぱん

目をぎゅっと閉じ、結衣の手を強く握る。

ぱん

「……えへへ、結衣さんも、怖い時はいつでも
　怖いって言っても、いいんですよ」
にこりと、優しく微笑みながら。

ぱん

「……はいっ！ボクに、お任せください！」

ぱん

結衣さんの不幸を、ほんの少しでも幸せにできたら。
それはボクも、すっごく嬉しいことですから。

ぱん

"不幸"の辛さは、ボクもよく分かってますし……。

ぱん

「……えへへ、結衣さんって、やっぱり意外と……甘えん坊？」

ぱん

「あっ、き、気を悪くしてしまわれたのであれば
　ご、ごめんなさいっ」

ぱん

「わふんっ、そ、そうですね………！」

ぱん

「なのでボクも……甘えちゃいます！」

ぱん

同じように、頭を結衣の肩に乗せるようにして、リラックスモードに。

ぱん

《なつく》

ぱん

「♪～」
困り眉ながら、楽しそうに、鼻歌を唄いながら。

ぱん

「……わっ！」

ぱん

「………えへへ」
心が、ぽかぽかと。

ぱん

あんなにも驚いていた鹿威しの音が
段々と、心地の良い音に聞こえてきて。

ぱん

「！？！？」

ぱん

思わず体が飛び跳ねながらも、姿勢を正し。

ぱん

「い、いえいえいえ！そんなことはありませんよ！」

ぱん

ぶんぶん！と首を激しく横に振り
そして視線は、鍵の方へと。

ぱん

「！　それが……ケーキ屋さんの、鍵！」

ぱん

「わふっ！は、初めまして！ぱんです！」
正座で、困り眉ながらも会釈。

ぱん

「キャインっ……！？」
ガタガタガタと震えるも。

ぱん

「……！ゆ、結衣さん！？あ、あわわわ！」

ぱん

「そ、そうです！結衣さんだって、悪い方ではありません！」
結衣の前に出て、大の字のポーズ。

ぱん

男が去っていったのを見て、緊張がようやく解ける。

ぱん

「ふ、ふぅぅ……と、ととと、とても、怖い人でした……
　……あのー、今の方は一体……？」
困り眉で、ちらりと夢路の方を見て。

ぱん

「こうせい……？……あ、なるほど！ご家族の方でしたか！
　それではお兄さんですかね……？そうであれば、失礼な態度を
　取ってしまいました……申し訳ありません～……」

ぱん

しょぼーんとした顔になる。

ぱん

わふぅ～……と撫でられながら。

ぱん

「……わっとっと！えっとえっとそれで……
　鍵！は無事に見つかりましたので、あとは……」

ぱん

「……お店探し、ですか……」

ぱん

「……なるほど、分かりました」

ぱん

「では……責任持って、必ず！ボク達がお店を見つけてきます！
　……どうか、良いお知らせを、お待ちしててください！雪路さん！」

ぱん

強く頷き、そして鍵を手に取る。

ぱん

……ここで、なんだか引っかかるものがあった。

ぱん

雪路さん達は、長い長い時間を掛けても見つけられなくて
……リオウさんも同じく、長く探しているのに、見つからない。

ぱん

人であって、ボク達もののけであっても、見つからない。
それなのに、店員さんは見つけることができた。

ぱん

─────その違いって、なんだろう……？

ぱん

……………………。

ぱん

……………。

ぱん

「………あ」
雪路から鍵を受け取った時に、声が漏れる。

ぱん

「………ううん」
首を横に振る。

ぱん

「……あのね、結衣さん、多分……まだ、"足りない"んだと思う」

ぱん

じっと、困り眉で結衣を見つめながら。
そして─────雪路にも、視線をやり。

ぱん

「………うん、だって……リオウさんならこの鍵、見つけたはずで
　それでも、お店が見つかっていない、そうだとしたら……」

ぱん

自分達よりも上位の存在であるリオウさえも、掴めない何かが、あって。

ぱん

「でも、店員さんは、簡単に見つけちゃったみたいで
　……その違いって、結衣さん………ボク、思うことが、あって」

ぱん

そして改めて、雪路をじっと見て。

ぱん

「……雪路さんは、こんなボク達に、鍵をお譲りしてくださった
　とっても、良い人です、だから─────一つ秘密を、雪路さんに明かします」

ぱん

ぴょこんっ。

ぱん

犬耳が生える。

ぱん

「……秘密にしてて、ごめんなさいっ！
　そうです……ボクは、犬です！」

ぱん

雪路に頭を下げ、申し訳なさそうな顔を。

ぱん

「……信じられないかもですけど、実は……」
─────そうして、雪路にしっかりと伝える。

ぱん

"変化"の存在を。

ぱん

そして、困り眉ながらも、雪路の瞳を見て。

ぱん

「……店員さんが、幸せのケーキ屋さんを見つけることができたのは
　きっと……ボク達のような存在がいたから
　……でも、ボク達"だけ"では、見つけることができないんです」

ぱん

ぴょこぴょこ、と動かす。

ぱん

結衣の表情におろおろとしながらも。

ぱん

雪路に、困り眉でにっこりと笑う。

ぱん

「……それで、ボク達と、そして……人間さんが一緒じゃないと
　もしかしたらそのお店は行くことができない……
　……そう、思うんです」

ぱん

はい…と、頷き。

ぱん

「─────雪路さんは、そのケーキ屋さんを、何ヵ月も探してました」

ぱん

「きっと……何か、叶えたいものがあったはずです
　……もし、雪路さんが抱える、"不幸"があるのでしたら
　それは……ボクは、ううん、ボク達は、放っておくことは、できません」

ぱん

「ボク達変化と、そして人間さん
　一緒に、そのお店を見つけるパートナーとして
　……雪路さん、ボクは、あなたじゃないと駄目だって、思うんです！」

ぱん

「……………」

ぱん

力強く、頷く。

ぱん

「もちろんです！」

ぱん

「一緒に─────"幸せ"！掴んじゃいましょう！」
にっこりと、笑う。

ぱん

「わん！」

ぱん

─────幸せになりたいと願うことは、罪なんかじゃ、きっと無い。

ぱん

ボク達変化は……困っている人の背中を、ほんの少しだけ押す存在。

ぱん

……そんな存在に、なれたかな？

ぱん

ぱん

ぱん