Ccfolia Log

マウンテン

「─────失礼します、支部長、私をお呼びで……」
扉を開け、視界に入る異形の二名に、目を細める。

マウンテン

「随分と戦場慣れした匂いがしますね」

マウンテン

支部長に頭を一礼すると、言われるがままに、空いているソファーへと座る。

マウンテン

─────異形は、この男も同様。
身長2m以上にも及ぶ、大男。その見た目は、白虎。
その腕は、近くにあるデスクがチョコ板に見えてしまうほどだ。

マウンテン

「支部長、『誰と』は重要ではございません、その言葉の意味もお判りでしょう」
指をクロスさせ、獣の瞳で、支部長をじっと見る。

マウンテン

「一目で分かりました、この二人は"只者"ではないと」

マウンテン

「─────これだけの戦力を揃えて、一体『何』を？」

マウンテン

「初耳でございます、何せ」
そう言い、マウンテンは太い指を己の首元へ指す。

マウンテン

─────そこには『首輪』が繋がれていた。

マウンテン

エージェント・マウンテン。
かつて囚人であり、司法取引により、エージェントとなった男。

マウンテン

「詳細をお願いいたします」
支部長へ頭を下げる。

マウンテン

ほう……と、目を細める。

マウンテン

「元のセルの規模は？」

マウンテン

理解したように、肩を竦める。

マウンテン

「……もう少し静かな街であってほしいものです」

マウンテン

「或いは、ムー大陸」

マウンテン

「……さて、人の所業とは思えない大事件、これだけの面々が揃ったのも納得です」

マウンテン

─────獣の瞳は、豚の頭を持つ主へと向けられる。

マウンテン

「"高い"ですね」

マウンテン

何がとは言わない。

マウンテン

暫し、白虎の大男は黙し。

マウンテン

─────衝動に身を任せていないことを、その目で確かめ。

マウンテン

「………我々は、慢性的な人員不足ですからね」

マウンテン

「この者の力を借りなければならないこと、その苦渋の決断を下したこと、心中察しいたします、支部長」

マウンテン

「暴力は破滅の始まりですから、ご配慮、痛み入ります」と告げ、頭を下げた後、忠告に耳を動かし。

マウンテン

「……ええ、件の」
頷く。

マウンテン

「………………………」
目を細めて。

マウンテン

とん、とん、とん、とん、と手の甲に軽く指を叩く。

マウンテン

─────目を、ゆっくりと閉じた。

マウンテン

そして、頷いた。深く。

マウンテン

「……ええ、支部長」

マウンテン

・・・・
「そのために、私はいますから」

マウンテン

「ご安心を」

マウンテン

乾にこくりと頷く。

マウンテン

「マウンテン、そう呼んでください」

マウンテン

「……………ぶ、ぶり？」

マウンテン

「……その方が、私も呼びやすいです、そうさせていただきましょう、久世」

マウンテン

─────しかし、今しがた耳にした、テレーズという言葉。

マウンテン

確か、中枢議員の一人であるだとか。

……その繋がりを持つとは、やはり只者ではない、か。

マウンテン

「……では、乾、久世、一つ」

マウンテン

「"現場"の指揮権は私にあります、それでよろしいでしょうか」

マウンテン

今回の騒動は、直接R案件であると確定した事件ではない。
そのため、大事に動くと、UGNの理念に反する結果となり得る。

この仕事はどちらかというと、警察仕事というよりも、公安の仕事に近い。

マウンテン

「……ええ、構いませんよ」
沈黙の後、両者にそう答える。

マウンテン

立ち上がり、そして頷く。

マウンテン

「支部長」
そして、支部長の下へと、ゆっくりと歩み。

マウンテン

「─────鍵を」

己の首を指し。

マウンテン

感謝を述べ、そして、ガチャリ、と、大きな音を立てて、太い機器の首輪を外す。

マウンテン

─────虎は、この時を以って。

マウンテン

解き放たれた。

マウンテン

眼光。

マウンテン

「─────ええ、お任せください」

マウンテン

踵を返し、そして乾、久世に視線だけで、着いてくるように指示をした。

白虎は、執務室を出て行った。

マウンテン

1d10 (1D10) ＞ 9

マウンテン

1d10 さっきの分 (1D10) ＞ 9

マウンテン

「さて、久世、乾、私の我儘に付き合わせてしまい、とても申し訳ないのですが」

マウンテン

「一つ、聞きたいことがあります」
少し振り向き、二人の顔を見やる。

マウンテン

「─────お二人は、その、なんでしょう」

マウンテン

言葉を選んでいる様子で。

マウンテン

「……子どもとの会話は、慣れておりますか？」

マウンテン

「……………」
白虎の顔のまま静止。

マウンテン

「………これも、仕事の内です」

マウンテン

「"ターゲット"を調べることも」

マウンテン

「………ええ、それでしたら、安心いたしました」

マウンテン

「その、我々は、なんと申しますか」

マウンテン

「……見た目が、はい」

マウンテン

「……大男がこぞって押し寄せては、怯えさせてしまうので」

マウンテン

「丁重に、よろしくお願いいたします」

マウンテン

「………」
久世の言葉には、正論だった、マウンテンは何も反論できない様子で、白虎の顔のままでいた。

マウンテン

「………では」
そう言い、扉に向かい合い、インターホンを押す。

マウンテン

「間桐、私です　………アンソニーです」
本名を名乗る。

マウンテン

マウンテンは、指名手配犯だ。
ゆえに、名前を名乗ることは滅多に無い。

マウンテン

「お忙しいところ、急に押し寄せて申し訳ありません、間桐」
頭を下げ、第一に謝罪を告げ、知っているかのように、そのまま入っていく。

マウンテン

「─────おっと！」

マウンテン

立ち止まり、静止。そして、みいなを見下ろす形となり。

マウンテン

黙した後、ゆっくりと、膝を曲げ、視線の高さを合わせ。

マウンテン

「………とてもお利巧ですね」

マウンテン

白虎の顔が、どこか、微笑んでいるように見えた。

マウンテン

そして、間桐の言葉に、こくりと頷いた。

マウンテン

「………ええ、"仕事"の関係です」

マウンテン

─────詳細は言わず。
支部長より、本件は極秘の下で行われていると、暗に示されたものであり
マウンテンはそれをただ忠実に遂行する。

マウンテン

……しかし、私情が混ざり、このような場になってしまったわけだが。

マウンテン

「間桐、お身体が」

マウンテン

『友』として、間桐の元へすぐに駆け寄り、肩を支える。

マウンテン

「………そうであったら、どれほど良かったことでしょうね」
肩を竦めながら、微笑。

マウンテン

みいなに気づき「おっと」と、少女にとっての安らぎの場を譲る形で、徐々に間桐から離れる。間桐の身体は、不安定ながらも、大丈夫そうだと安心したため。

マウンテン

「……さすがは間桐、子どもの扱いが巧いようです」

マウンテン

「すっかり、懐いていますね」

マウンテン

ははは、と間桐との世間話に花を咲かせ、笑いを含めながら。

マウンテン

「間桐、お土産です」
そう言い、袋を差し出す。いきなり押しかけるのもなんだということで、5人分のシュークリームが入った箱を出す。

マウンテン

そして、みいなの方を見て、微笑を向け。

マウンテン

「人とは、不思議なものなのですよ」
大きな手で、その頭を優しく、撫でるように。

マウンテン

……フッ、と笑う。

執務室で見せていた、白虎の顔とは、全く異なる。

マウンテン

「手伝いますよ、間桐」

マウンテン

マウンテンが手伝うまでもなく、一生懸命にとてとてと歩く少女を目で追って、また微笑む。

マウンテン

「ええ、では……失礼いたします」

そう言い、みいなを高い高いするように、持ち上げる。

マウンテン

「よくできました」
褒め称えると、ゆっくりとみいなを降ろす。

マウンテン

大きな手で、拍手を送る。

マウンテン

「……ええ、乾、これは『命令』です」

マウンテン

「煙草は、外で」

マウンテン

「……失礼ながら、乾」

マウンテン

「……あなたが煙草を吸うと、火薬に引火など……」

失礼に当たる質問であったかもしれない、しかし、気になることを確かめないのは、それはそれでしこりが残るというもの。

マウンテン

背中を叩かれ、おっと！と、姿勢こそ崩れない体躯ながらも、驚いた顔で。

マウンテン

「左様でしたか……いえ、失礼しました、乾」
詫びをせぬのは問題外であるため、しっかり告げ。

マウンテン

そして、獣の鼻が反応する。

マウンテン

「……ほう……　……フフ、頑張って淹れたものですね」

マウンテン

どすりと、胡坐をかき、「いただきます」とみいなに告げ、ティーを口にする。

マウンテン

1d100 おいしさ (1D100) ＞ 22

マウンテン

「……………………………………………………………………………………………………」

白虎の顔になる。

マウンテン

「とても美味しいです、ありがとうございます」
微笑。

マウンテン

「ほう………　……いいですね、喫茶店のマスターですか」

…………………………………………………。

マウンテン

表情の見えにくいマウンテンの胸中に、曇りが見える。

それは、決して、味の問題というわけではない。

マウンテン

─────支部長の言葉を反芻する。

この少女は、近辺FHセル壊滅にも関わっている可能性がある。

マウンテン

眉を顰める。

マウンテン

「………将来　……ええ」

マウンテン

「将来、きっといい女になれるでしょう」

マウンテン

それでもマウンテンは、そう言ったのだった。

マウンテン

─────たとえ、『将来』というものが、確約されていないかもしれない存在だとしても。

マウンテン

それが、人を断絶する理由には

希望を与えない理由には

ならない。

マウンテン

「おっと……間桐……！」

マウンテン

マウンテンが手伝おうとするも……？

マウンテン

「………フフ」
その様子に、微笑んだ。

………まだ何があるか分からない先のことなど考えて、一体なんだというのだ。
この少女は、今もこうして、成長していく。間桐との日常を育んている。謳歌している。

今はただ、この尊い日々を慈しんでも、バチは当たらないというものだろう。

マウンテン

マウンテンは、薄い味のティーを口にするのだった。

ニヤけた顔で、間桐を見やりながら。

マウンテン

なんです！？(^^)なんです！？(^^)

マウンテン

「いえいえ、十分楽しいですよ　……おっと、失礼」

マウンテン

端末を手にし、間桐らへ頭を下げると、台所の方へと向かい、端末を立ち上げる。

マウンテン

「こちらマウンテン」

マウンテン

「支部長でしたか　……一体どのような用件で」

マウンテン

ちらりと、背後を見やる。

楽しそうに過ごしている面々を見ながら。

マウンテン

「………調査対象のいる家です」
小さな声で。

マウンテン

「…………申し訳ございません」

マウンテン

マウンテンの私情が動いた。
支部長の配慮で、なるべく間桐を今回の任務に関わらせないようにとしていたのだが、それを無碍にしているも同然の状態となっている。

マウンテン

「………！」

マウンテン

「─────いえ」

マウンテン

「すぐに向かいます」

マウンテン

通話の切れた端末を、鋭い眼光が見やる。
……エージェントは、任務下にいる。
そして、手掛かりとなる情報を手にした。

マウンテン

さすれば、やることは一つ。

ゆっくりと、間桐へと振り返る。

マウンテン

少し薄暗い台所で、マウンテンの瞳が、ただ光っていた。

マウンテン

「…………ええ」

マウンテン

「…………………」

内容は、決して言えない。それが、掟というものだ。

マウンテン

破られる掟などがあれば、それは組織の崩壊を誘発する。

マウンテン

「………なっ……」
口が開く。

マウンテン

「…………間桐……しか、し……」

マウンテン

後ろにいる、みいなの姿を見て、口を閉ざす。

マウンテン

「─────」
その言葉に、白虎は目をゆっくりと閉じて。

マウンテン

「………………間桐、これは、私からの節介です」

マウンテン

「……関わらない方がいい、知らない方がいい」

マウンテン

「そういった『真実』も、この世にあるのです」

マウンテン

「………間桐、あなたには」

マウンテン

「我々を恨む、ただそれだけでいいのです」

マウンテン

「…………………」
痛ましそうに、失った腕を見て、目を細める。

マウンテン

「……………………」
眉を顰めて。

マウンテン

「…………」
長考して。

マウンテン

規律、ルール、掟と、『友』の言葉を、覚悟を、天秤に計り。

マウンテン

「─────いけません、なりません」

男の判断は、圧だった。

全てを喰らう白虎の眼差しが、間桐へ。

マウンテン

「助けたい者がいるのなら、命も惜しまない？」

マウンテン

「………それは、お言葉ですが、欺瞞ですよ、間桐ッ」

マウンテン

「自分の命を疎かにする者が」

マウンテン

「他者の命を、慈しむことなど、できましょうか」

マウンテン

ポン、と大きな手が、間桐の肩へ乗っかる。

マウンテン

「─────恨んでください、私を」

マウンテン

そう言い、横を過ぎ去っていった。

マウンテン

そして、乾、久世へ、目線で指示を送る。

マウンテン

白虎は、間桐家を出て行こうとして。

マウンテン

立ち止まる。

マウンテン

「……………壊滅したFHセルの研究員が見つかった」

マウンテン

「おっと、間桐がいる前だったか」

マウンテン

「言葉を滑らせてしまったようです」

マウンテン

「聞かなかったことにしてくださいね」

マウンテン

そう言い、白虎は去って行った。

マウンテン

1d10 (1D10) ＞ 7

マウンテン

「─────お疲れ様です」
白虎は、報をただ待つ。

マウンテン

返す言葉も無く、ただ目を閉じ、黙する。

マウンテン

「…………………」

マウンテン

─────こういう前置きを置く時の支部長は。

マウンテン

「………ええ」
頷く。

マウンテン

キッショ

マウンテン

「なんと………　………このように恐ろしく、そして悍ましく、精神を貪られる男がいたものなのですね」

マウンテン

首を傾げる。

マウンテン

「………なるべく、血は流したくありませんからね」

マウンテン

そう言い、トゲブサの横に雄々しく立つ。

マウンテン

「………もう少し詳しくお聞かせ願います」

マウンテン

……つまり、それほど多くの犠牲が。

マウンテン

拳が硬く握られる。

マウンテン

「要領を得ませんが、ティアマトは一体何を成すもので？そしてその317号というのも、どこに？」

マウンテン

─────鋭い刃のような怒りの籠った眼光で。

マウンテン

「………………！」

マウンテン

「……………聞きましょう」

マウンテン

「その個体の、非オーヴァードへの影響は看過できるものではないと分かりました」

マウンテン

「─────では、周囲のオーヴァードには？」

マウンテン

………なるほど、これは、我々が想定していた規模を遥かに超える代物……。
この街だけではない、日本……いえ、世界すらも、その侵攻を広げていきかねない、『世界の終わりを告げるラッパ』。

マウンテン

覚醒機？とんでも無い、これは。

マウンテン

─────文明破壊機だ。

マウンテン

「……………………」
その様子に目を細めた後、ゆっくりと支部長の方へと向き。

マウンテン

「………支部長」
眉を、顰めた。

マウンテン

レネゲイドの出力にストッパーを掛けることを辞さないFHですら、制御不能なウイルスが、この世に生み出された。
FHで不可能ならば、逆説的に、UGNでも─────。

マウンテン

眉を顰める。

マウンテン

「………！？……一体それは、どういう……？」

マウンテン

欲望を、変える？

人の心に根付く、欲望、もっと言えば、衝動。
それらは、その生命がこの世に生まれ、手足を動かし、活動し、営む原動力たるもの。

マウンテン

久世に頷く。

マウンテン

「─────人の、"最も"純粋なものです」

マウンテン

「精神汚染………」

マウンテン

レネゲイドによる、理性の剥離とは、訳が違った。

マウンテン

「………………………」

……ああ……間桐、知らなくていい真実は、やはり、存在した。

マウンテン

あの少女の顔が、マウンテンの脳裏に浮かんだ。

笑顔で、懸命に間桐のお手伝いをする姿を。

マウンテン

………とても、いい気分とは言えませんね。

マウンテン

「………支部長、裏取りはもう既に動いていますか？」

静かに、そう尋ねた。

男の顔は……表情は、ただ、怒りに。

マウンテン

……間違いであってほしい。

マウンテン

そう願っても、願うくらいなら、いいはずだ。

マウンテン

……虎は、大きく、項垂れた。

マウンテン

乾、久世に背を向け、支部長の横に立つ。

マウンテン

「─────了解」

重々しく、低い声。

マウンテン

獣の瞳が、支部長の横顔を捉えて。

マウンテン

ただ、じっと見て。

マウンテン

「………暴力装置の、真の役目」

マウンテン

「─────『使われないこと』」

マウンテン

「果たせず、無念です」

マウンテン

黙して、目を閉じ、首を横に振る。

マウンテン

「─────乾、久世」
支部を出る前に、立ち止まり。

マウンテン

「もう私の指揮権は無くなりました」

マウンテン

「………しかし、これだけは、言っておきます」

マウンテン

ゆっくりと、振り向き。

マウンテン

「─────私は、『友』の下へ向かいます」

マウンテン

「作戦実行まで、残り30分」

マウンテン

「私は、非勤務として、向かいます」

マウンテン

「共に"日常"を過ごしてきた者として、向かいます」

マウンテン

「─────あの子とも」

マウンテン

「…………それでは」

マウンテン

そう言い、白虎は、去って行った。

マウンテン

66+1d10　登場/リザレクト (66+1D10) ＞ 66+9[9] ＞ 75